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純粋なお姫様

 ──ギムウェルム三日目の夜。


 リアラも寝静まった頃、俺は宿を出て城門近くの路地裏で素性を隠す為、絶賛着替え中だ。

 まぁ、着替えと言っても白のローブを着るだけだがな。

 

 白のローブを服の上から着用し、深々とフードを被る。

 これで俺の素性は完璧にカモフラージュ出来る筈だ。

 

 本当は黒ローブが欲しかったんだけどね。

 普通に考えたら、黒ローブを着た奴がいきなり薬を渡しても、俺なら間違いなく飲まないだろう。


 兎も角、後はお姫様がいる部屋の場所だが……

 流石にこれは分からないので一部屋ずつ調べて行くしかない。

 

 その調べ方としては、城の中へと忍び込まず、ばれないよう外から慎重に確認するつもりだ。


 風魔法を一気にレベルを上げたお陰で空を飛ぶまでは行かないが、ゆっくりだがある程度の高さまで浮く事には可能になっていたのだ。


 計画としては、外から風魔法で浮かび、一部屋ずつお姫様が居そうな上階の窓の中を覗き込んでいくって感じだな。


 端から見れば、ただのストーカーだよなこれ……

 まぁ、考えても仕方ない。

 門番や兵士達にばれないように、そろそろ行動するか。


 俺は風を身体に纏い、ぷかぷかと浮いて行く。

 城の上階の高さまで浮いた俺は、城へと近付き一部屋ずつ窓をゆっくり覗き込み確認して行く事にした。



「ここは、書斎かな? 外れだな。次は──ここも外れか」


 一部屋ずつ慎重に調べて行くと、早速当たりと思われる部屋を見つけた。


 部屋の中には、苦しそうに魘されている女性がいたので俺は鑑定を発動し確認してみる事にした。

 


 名前:ティアナ・レムリウス 性別:女 15歳

 職業:魔導師Lv10

 HP:32/268

 MP:408/408


 物攻:78

 物防:75

 魔攻:198

 魔防:165

 敏捷:82


 ※衰弱状態※


 <スキル>

 魔力操作4 魔力解放3 詠唱短縮3 剣術2 体術2


 <パッシブ>

 魔力増加(中)

 MP増加(中)

 MP消費減少(中)


 <魔法>

 火魔法4 氷結魔法6 土魔法3 風魔法3


 <称号>

 王族 国民に愛されし姫君


 

 ………このお姫様強くないか?

 しかも、剣術や体術は自力で取得したんだろうな。

 加護も無いのにかなりの努力家みたいだ。


 それより、HPも減っているしヤバくないか?

 早く薬を飲ませないと。

 

 窓をゆっくり開け、俺は部屋の中へと入った。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 お姫様は汗を大量に掻いていたので、近くに置いてあった水の桶でタオルを濡らし、俺はお姫様の顔を拭いていく。

 呼吸も荒れていたので、お姫様の手を握り、回復魔法を掛け癒していく。


 少し経つと、呼吸も落ち着き、容体も少しは緩和されたようにも見える。


「すぅ……すぅ……」


 さて。ここからどうしよう。

 とりあえず薬を飲ませないといけないんだけど。

 うーん。

 ひとまずお姫様が起きるまで、回復魔法を掛け続けていく事にするか。




 ☆





「ぅ……ん……」


 あれから二時間程が経ち、お姫様は目を覚ました。


「おはよう、お姫様。体調はどうですか?」


「え……あ、はい……いつもより身体の調子が良いですけど……あの……あなたはお父様が呼ばれたお医者様でしょうか?」


 よし。

 この流れなら、薬を渡しても恐く飲んでくれるだろう。


「ええ、そうですよ。それにしても、回復魔法が思いの外効いて良かったです。はい、これ。お薬飲んで下さいね」


 俺は生魂の雫を手渡すと、お姫様はすっかり俺を国王が呼んだ医者だと信じており薬を飲んでくれた。

 このお姫様が純粋で助かったよ。


「ぅぅ……苦いですね、これは……」


「ははっ。これでもう病気は治りましたよ。でも、二、三日は安静にしているんですよ」


 再度鑑定してみたが、衰弱状態は消えていたので、これでもう安心だな。


「ぇ……? 今のお薬で治ったのですか?」


 お姫様がそう告げると、直ぐ様「コンコン」と部屋をノックする音が聞こえた。


「ティアナ、俺だ。今大丈夫か?」


「はい。大丈夫ですよ、お父様」


 ノックの相手はティアナの父、ギムレット国王である。


「ティアナ、身体の具合はどうだ?」


「はい。お父様が呼んで頂いたお医者様がくれたこのお薬で治ったみたいなのですが……原因不明と言われている病が、本当にこのお薬で治ったのでしょうか?」


「ん? なんの事だ? 俺は医者など呼んでおらんぞ。それに、何処にその医者がいるのだ?」


「ぇ……あれ? さっきまでそこの椅子に座ってらしたのですが……」





 ☆




 

 ──ふぅ。危なかった。

 こんな事もあろうかと、窓を開けておいたままにして助かったな。

 ひとまず薬を飲ませる事に成功したし、眠いから早く帰って寝る事にしますか。



「う〜ん……アラン、こんなところで………すぅ……すぅ……えへへっ」


 ローブを脱ぎ宿へと戻った俺を出迎えたのは、リアラの可笑しな寝言だった。

 一体どんな夢見てんだよ。

 

 俺はベッドへと潜り、可笑しな寝言を言いつつも幸せそうな表情で眠るリアラの頬にキスをし、今日の疲れを癒すように眠りについた。

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