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アズール村〜旅立ち

 翌朝、俺は目を覚ました。

 隣を見るとリアラはまだ眠っており、その寝顔を見ると俺の頬が自然と緩むくらい、可愛かった。


「ほら、リアラ。もう、朝だぞ」


「………すぅ……すぅ」


 起きないな。

 仕方ない、ちょっと遊ぶか。

 俺のちょっとした悪戯心が芽生え、まずは頬を突ついてみる。


「……ん……すぅ……すぅ」


 まだ、起きないか。

 そして次は、耳元で囁いみる事に。


「グヘヘへ。早く起きないと、食べちゃうぞ」


 自分でも、何言ってんだろう。と思ったが……

 だが、それがいい。


「………っん……アランの……ヘタレ……すぅ……すぅ」


 なんで俺!?

 しかもどんな夢見てんだよ!

 寝言でも、なんか傷付くんだけど。

 それにしてもまだ、起きないか。

 仕方ない。

 起きない悪い子には、最終手段のこちょこちょの刑だ!



「こちょこちょこちょこちょ……」


「………んっ、ちょ、や、やめ! っあ、い、ぃやあ」


 なんか、反応がエロかった……

 こう、あはははは!とかそう言う反応かと思ったんだけど、リアラは体をピクピクしながら、顔も火照り、はぁはぁっと吐息を漏らしていた。

 

「リアラ、おはようっ!」


 俺は、なんと声を掛けたらいいのか悩んだが、ここは敢えて普通に朝の挨拶をする事にした。


「何するのよ! アランの馬鹿っ!」


 リアラはその言葉と共に強烈なビンタを放ち、そしてそのまま「もう知らないっ」と言い部屋から出て行く。

 確かに、悪戯が過ぎたけど……痛い……

 後でちゃんと謝ろう……



 ☆



 それから俺は、彼女に謝りに行くが機嫌は直らずそのままリアラは朝食を作り始め、食卓へと並べていた。


「………あの、リアラ?」


「……なによ」


「俺の朝食なんだけど……これだけ?」


「文句があるなら、食べなかったらいいじゃない」


「いえ………頂きます……」


 俺の前に並べられた食事は、木製の皿の上に乗ったミニトマト一個だった……。

 酷い……

 まぁ、俺が怒らせたから何も言えないんだけどな……

 後で、おっちゃんの料理でもこっそり食べるか。

 

 そして、朝食? を食べ終えた俺達は、リアラは旅支度を始めたので、俺は魔力の木の実(M)を六個創造し、ドーピングをする。今回はMPが38程増えた。

 木の実は七個創造出来るけど、少しはMP残しておかないと、いざという時困るしね。

 

 まだ時間もあるので、こっそり異空間倉庫(ストレージ)から食事を取り出し食べる。

 食事を食べ終えた俺は、魔力操作をしながらリアラを待つ事にした。


 ──それから30分程が経ち、リアラの旅支度が整った。

 リアラは大きな鞄一杯に物を詰め込んでおり、その大きな鞄を必死に背負おうとしているのだが、あまりにも重い為背負えずにいた。


「リアラ……こんなに、必要なのか?」


「あたりまえでしょ! これでも結構減らしたんだけど……」


 俺は、はぁっとため息を吐きリアラの荷物を異空間倉庫(ストレージ)へと入れる。

 すると、リアラは荷物がいきなり消えたのでかなり驚いたので、俺の魔法で持ち運んでいると言っておいた。


「そういえば、前も森の中で食事を出してたけど、あれもこの魔法なの?」


「ん? ああ、そうだよ。この魔法の中は時間が止まってるから、出来立ての料理を入れて置けば、いつでも出来立ての料理を食べれるからな。便利だろ?」


「便利なんてものじゃないと思うけど……アランってまさか、賢者なの?」


 やっぱ賢者って職業もあるんだ。


「いや、俺は調薬師だよ」


「えぇえええ!? じゃあ、なんでこんな凄い魔法が使えるの!?」


「別に、職業が調薬師だからって使えないって訳じゃないだろ? 実際、俺は色んな職業のスキルとか覚えているし、その人の努力次第だと思うよ」


 まぁ偉そうに言ってるけど、これも全て神様の加護のお陰なんだけどな。

 

「そっか……私も努力すれば、アランみたいに強くなれるかな?」


「そりゃ、もちろんなれるさ! さてと。そろそろ村長さんや皆に、挨拶しに行こうか」


「うんっ!」


 そしてリアラは15年分の父と母の想い出が詰まった家の中を感慨深く見つめていた。


「お父さん。お母さん。行ってきます!」


 リアラのその言葉と共に、俺達は家を出た。




 ☆



 その後リアラは、村長や住人達と別れの挨拶をしていた。相変わらずおばちゃん達は、リアラに抱きしめながら泣いていた。

 

「リアラちゃん。いつでも、帰って来るんだよ」


「ぅぅ……あのリアラが………こんなに立派になって」


「リアラ。身体には気を付けるんだよ」



 住人達は、そうリアラに別れの言葉を告げていた。



「皆、本当にありがとう。またいつか、絶対に帰って来るから!それじゃ、行ってきます!」


 リアラがそう告げると、村の人達も『行ってらっしゃい』とリアラの門出を見送っていた。


 この時、リアラの目には一筋の涙が流れていたが、俺はそのまま何も言わず、リアラと共に村を後にした。

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