プロローグ
男なら誰しも一度、憧れる事があるであろう。
それは『魔法』や『異世界』など。
ネット小説やアニメでも、そんな題材の物語は俺も良く観ていたし、憧れてもいたのは事実だ。
だが俺は、今まさにその出来事に直面していると言ってもいいだろう。
「あの……ここ、何処ですか?」
見渡す限り、白一色の何も無い空間。
そこに何故か、爺さんが座布団の上で茶を啜っていた。
「やっと意識が戻ったか……。まずは、初めましてじゃな。儂はお主のいた世界で言えば、神様と呼ばれとる存在じゃ。よろしくのぅ」
「え……あ、はい。よろしくお願いします…」
神様って……マジか。
「ここは、儂が作り出した世界、所謂『神界』と呼ばれる場所じゃ」
「理解……出来なくもないですけど──それで、何故俺はここにいるんでしょうか?」
「んっ、なんじゃ? お主覚えておらぬのか?」
俺はふと、自分の事について考える。
俺の名前は 柊 翼
都内の私立高校に通う、ピカピカの高校一年生だ。
いつも通り、朝起きて、顔洗って、歯を磨いて、それから朝食を食べて、学校へと行こうと……
あっ、そういえば……学校へ行く途中、子供がトラックに轢かれそうになってて……
──ああ、なるほど。
子供を助けた俺が、代わりに轢かれて死んだって事か。
「まあ、そうゆう事じゃ。吞み込みが早くて助かるわい。暇潰しに、たまたま儂が下界を覗いてての──その事故現場を儂は見てたのじゃ。そして、お主のその優しさと勇気に評して、転生させてやろうと魂を引っ張って来たって訳じゃな」
「マジですか……」
「マジじゃの」
「ん?転生て事はまさか……」
「まあ、そのまさかじゃな。【バームウェルム】と呼ばれる異世界で、お主の世界の言葉で表せば、剣と魔法の異世界と言ったとこじゃ」
「マジですか……」
「大マジじゃ」
ビックリしすぎて、マジですかしか言えねぇ……
「それはさて置き、そろそろお主が転生する際の情報を魂に刻み込まなきゃならん。とりあえず、ステータスと念じてみてくれんかの」
言われた通り、ステータスと念じる。
ピッと、機械音の様な音が聴こえ、目の前に画面が浮かび上がっていた。
名前:未入力 性別:未入力 未入力歳
職業:未入力 【サブ職業:未入力】
HP:0
MP:0
物攻:0
物防:0
魔攻:0
魔防:0
敏捷:0
<固有スキル>
<スキル>
<加護>
最高神の加護
なんか、キャラクターメイキングみたいだな。
「そして、お主には転生ボーナスとし、三つの力を与える」
おおっ!噂のチートってやつか?!
「まず一つ目は、サブ職業システム。バームウェルムの住人達はサブ職業などないんじゃ。なるべく口外はしないようにの」
うん……。
チート程ではないが、凄いんだろうな。他の人にはサブ職業はないみたいだし。
「はい。後二つはなんですか?」
「二つ目は儂からの加護じゃな。儂の加護には、職業とスキル経験値獲得量(大)と、異世界へ言っても言葉が通じるようになる異世界共通言語を習得し、更には上位鑑定に上位隠蔽と異空間倉庫の効果もセットで付いとるのじゃ。異空間倉庫は、時が止まっとるから、鮮度や品質が落ちる事もないのじゃぞ」
──凄いお得な加護だな……テンプレがギッシリ詰まってやがる。
でも、どれも助かるのは確かだ。
「そして三つ目は、お主専用のスキル、所謂固有スキルを授ける」
固有スキル!? そうゆうの待ってました!