訳
僕は情けないことにその場で腹の虫をならしてしまった。
彼女はそんな僕を笑いながら家で何か食べるかという魅力的な提案を出してきたので甘んじることにしよう。
彼女が住んでいるアパートは何の変哲もない地味なアパートの一室でどうやら一人暮らしをしているらしい。しかし彼女も人が良すぎる。一人暮らしの女がホイホイ家に男を連れ込んで、もし襲われでもしたらどうするつもりなんだろうか。
そんな事を聞くと「あなたは襲わないでしょう」と諭すようなバカにするような良く分からない感じで言われた。いっそ襲ってやろうかと思った・・・思っただけ。
出されたのは市販の冷凍炒飯を解凍したものだった。彼女は「その程度しか用意できなくてごめん」と言ったが僕は久しぶりに温もりのあるものを感じずにはいられなかった。
家にいたときは確かに作ってくれていた料理だけどこの冷凍炒飯より温もりはなかった。市販の冷凍炒飯を作っている人の温もりか最近の電子レンジは人の温もりもくれるのかそれとも・・・
僕は炒飯を食べきるとただ「おいしかった」とだけ伝えた。それ以外に言う事はあるのだろうけど、僕は彼女に視線を移すのを躊躇った。
彼女は皿を片付けると改めるかのように咳払いをして僕にある紙を渡してきた。
その紙はボロボロで土汚れも酷かったが僕には見覚えのあるものである。そう僕が行く予定だった施設の案内だ。これがどうしたのだろう思うのと同時に先程まで口に含んだ温もりが抜けていくのを感じる。
彼女はそんな僕に対してただ「ごめんなさい」と言った。
僕は彼女の要件を聞きだす為に彼女に視線を移した、躊躇いはない。
彼女は申し訳なさそうな顔しながら理由を説明しだした。
色々付け加えて言っていたが端的に言ってしまうと彼女の弟がその施設にいて連絡とれてないから様子を見てくれということらしい。
僕は「構わない」とだけ言った。
弟の詳細と写真とついでにここら辺の地図を貰うと僕は荷物をまとめて部屋を去った。後ろで彼女が何か言っていたみたいだが聞き取らないことにした。