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白い牙  作者: 犬井猫朗
第一章
9/14

今回は自信がないです。

もし批評でしたら書き直す事も辞さないかもです。







「探検か…………何処行くんだ?」


「そうね、先ず昇霊湖(しょうれいこ)へ行きましょうか」


「昇霊湖?」



 玲衣に探検へ誘われたので、目的地を聞いたところ知らない名称がが出てきた。

 湖って事は、たぶん湖だよな。

 俺が知ってる湖は、彼処しかないが…………。



「ええ、貴方も知ってるわよ。だってこの森に湖は一つしかないもの」


「それって……もしかしなくても、彼処だよな。終焉の樹の処だろ」


「そうよ。この子達が神樹を見たがってるの」



 案の定であった。

 何であんなもの見たがるんだ?



「大丈夫なのか?」


「平気よ、領域に入らなければ良いだけだもの」


「それは、そうだが………」



 よく『君子危うきに近寄らず』って、言うじゃないか。

 子狼三兄弟を視る――何やら三匹で話してるようだが、恐がってる様子はみられない。

 どうやら俺だけが、躊躇っているようだ。



「…………はぁ、鬱だ」



 溜め息がもれる。

 玲衣達に、聞こえない程度に呟く。

 すると、三兄弟の赤い子――椿が、俺達の様子に気が付いたのか、てくてくと寄ってきた。



「どうしたんだ兄ちゃん、元気ないのか?」


「ん、大丈夫だ椿……心配してくれてありがとな」


「そっか、ならいいんだ…へへ!」



 凄い楽しみにしてるんだろうな。

 胸の高鳴りが、此方まで聞こえそうだ。



「―――ねぇねぇ、兄ちゃんは見たことあるのか?」


「ああ、一応見たな……」


「ほんとか、やっぱり大っきいのか?」


「そうだな、その樹の十倍位あるぞ」



 近くにあった五メートル程の木を比較対象にする。



「おぉぉ~~~やっぱスッゴいんだな!早くみたいな、なぁなぁみんな早く行こうぜ!」


「……………いこぉ~」


「そうですね、玲衣さん早く行きましょう」



 椿が皆を急かすように跳ね回る。

 やはり子供だな、落ち着きがない。

 そして柊と楸も、同意しながら寄ってきた。



「そうね、ふふ。じゃあ行きましょうか」


「レッツゴー!」


「………ごぉぉ!」


「はい」


「…………」



 ああ、今更断れる空気じゃないな。

 出来れば行きたくないが、仕方ない。

 此処で俺だけが渋っていたら恥ずかしい。

 それに誰かが言っていた『恐怖心は今日を生き抜くために必要だが、過剰な警戒心は明日への重荷としかならない!』と。


 確かにそうだな。


 死はいつだって身近にあったじゃないか。

 俺だって生きるために命を奪う。いつか、俺も奪われる側になるかもしれない。それが弱肉強食、自然の摂理だ。

 終焉の樹だって同じだ。己に与えられた使命を果たし、生きているだけだ。

 領域に入らなければ良いだけなんて、可愛いものじゃないか。



「兄ちゃんも早く行こうぜ!!」


「ああ今行く――――」

 


 何だか心が軽くなった気がする。

 気のせいで脚も軽くなったようだ。

 俺は軽い脚取りで昇霊湖に向かった。





 ――――――――――――。


 




 昇霊湖。

 森の中央に位置する円状の湖、別名で“最期の秘境”ともよばれている。その名称の由来は、終焉の樹に生命力を奪われた者(死者)の魂が、天に昇っていくかの様に空に融けていく光景が偶にみられる事から付けられたそうだ。


 道中、玲衣に教えてもらった。



「―――――でっけぇっ~~!」



 椿が大声で感想をあげる。

 キラキラとした笑顔で、椿は満足そうだ。



「…………おおぉぉぉ~~~」



 仰向けでお腹を見せながら、柊はのんびりと感嘆の声をのばす。

 あれは服従のポーズなのか?わからん。

 まあこの子もこの子なりに、何かを感じているのだろう。



「これが終焉の樹ですか……………」



 楸が小声で呟く。

 あれ、あまり感動しなかったのだろうか?

 疑問に思ってると、



「楸は喜ぶと耳が動くのよ……ふふ」



 玲衣がこそっと教えてくれた。

 楸の耳を見れば、確かにピクピクと動いている。

 なんだ、ちゃんと感動してるんじゃないか。



「なるほどね」



 玲衣と一緒に三兄弟を見守る。

 高揚が最高潮に達したのだろう、椿と柊が樹に向け遠吠えを始めた。



「「オォォォォォッ~~~ッン!」」



 まだ若い声だが、見事なもんだ。

 性格は違えど、こういう所は似ているんだな。

 素直になれない子狼をみる。



「……………」


「お前はやらないのか?」


「僕はいいです、もうそこまで子供じゃありませんから」



 黙っていた楸に話し掛けてみたが、思春期特有の「僕はもう大人です」発言をされてしまった。

 まだ子供だろうが……。

 絡みづらいな、やはり子供は苦手だな。

 玲衣は優しげな眼差しで、何も言わずただ見守っている。



「それと、零さん。僕はお前ではありません。ちゃんと楸と呼んでください!」


「ああ、すまん楸。これでいいか?」


「はい。我が儘言ってすみません零さん」


「いや、気にすんな俺が悪かったんだ……………はぁ」



 思わず溜め息が出ちゃうのは仕方ないよな。

 終焉の樹をみる。

 気を抜いてしまえば、引き込まれてしまいそうだ。

 意識していても魅了されそうになる。

 やはり樹には、視る者を惑わす相当な魅力があるのだろうな。


 樹から視線をはずす。

 このまま視ていたら、何だか引き込まれそうだ。






「………で、次は何処に行くんだ?」



 昇霊湖から次の場所へ、移動中である。

 歩きながら、玲衣に話し掛けた。



瘴泉洞(しょうせんどう)って知ってるかしら?」


「瘴泉洞?」


「ええ、私達がよく使う狩場なの――――そうね、この辺りよ」



 足場の悪い獣道を歩くこと数分、漸く視界がひらけた。

 其処にあったのは、断崖絶壁に空いた洞窟。

 これが瘴泉洞か――。



「それっぽいな…」



 俺が想像したのは、数々の罠や湧出してくるモンスター等を攻略しながら奥に進んでいく、ゲームやアニメ等でよくある地下迷宮(ダンジョン)だ。



「それっぽい?」


「いや、なんでもない……そうだ、狩場ってことは広いのか?」


「………ええ。凄い広いわね」


「へぇ、それは楽しみだ」



 狩場ってことは何か出てくるんだろう。

 子狼三兄弟もいるんだ、そこまで危険な奴は出てこない、もしくは奥までいかないだろうと予測する。

 一体何が出てくるんだろうな、楽しみだ。



「ふふ、じゃあ早速行きましょう」


「「おぉ!」」


「はい」


「ああ、行こうか……」







感想評価指摘アドバイス何かありましたら宜しくお願いします。

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