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白い牙  作者: 犬井猫朗
第一章
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自信がない、駄文な気がする。








 僕の名前は、ルイス。

 百人近くからなる盗賊“黒い霧”の一員だ。

 ケルウス王国南辺境に広がる、ドルゴの森を拠点に天幕で暮らしている。

 ドルゴの森は、世界五大死地の一つ。

 原因は、終焉の樹である。

 一度、樹の領域に踏みいれば、死から逃れる事は出来ない。

 そう云われており、また事実でもある。

 知らぬものは、数える程だと思う。

 誰が好き好んで近付くか……いるとすれば、よっぽどの馬鹿か、自殺志願者だな。


 後は、ウチの客だが……まあ、彼等も好き好んではいないからカウントはしない。


 だからこそ、盗賊の拠点としては申し分ない。

 死地に盗賊の拠点があるなんて、誰が想像するか……。

 知ってるのは、ウチの客か同業者位だろう。

 皆、ウチが捕まれば、自らも危うくなるのだから、口は重いだろう。 



「―――ルイス隊長、頭が呼んでましたよ」


「わかった、今行くよ……」



 秀頭の男――ドッポさんが報せを持ってきた。

 二十歳の僕の 倍以上の年齢なのに、僕に対して敬語を使うのは、やっぱり慣れないな。

 ドッポさんが、そうするのも理解している。


 ――――第三部隊隊長。


 僕の肩書である。

 僕には大層な肩書だと思う。

 黒い霧に、隊長は五人しかいない。

 位的には、頭の次に偉いと言えば解るだろうか…。


 ………荷が重すぎる。


 僕の下には、十人いる。

 言えば十人の命を預かっているのだ。

 隊長になったのは一年位前、前隊長バンルさんが引退時に、冗談半分で僕を指名したせいだ。


 ………一生恨みますよ、バンルさん!


 皆も僕みたいな若造に命を預けるなんて嫌だろうに、何故か反意は出てこなかった。

 不平不満を飲み込んで、新隊長の僕を支えてくれている。

 皆の優しさが目にしみるよ……。

 そんな優しい部下の一人が、ドッポさんである。

 黒い霧の古株で、第三部隊の副隊長を担ってくれているのだ。

 任務の計画や助言等、色々助けられている。

 隊長は威厳が大事だと、部下に敬語を使うな!と、教えてくれたのもドッポさんだ。


 …………本当に、ドッポさんには頭が上がらない。


 だからといって、今の生活に不満があるわけじゃない。

 頭には拾って育てて貰った恩があるし、仲間もうまの合う奴ばかりだ。

 魔獣を狩ったり、盗みを働いたり、傭兵の様なこともしている。

 盗みに関しては、腐りきっている貴族の奴等がターゲットの大半だ。

 だから、別に心が痛んだりはしていない。

 僕は今の暮らしに、ある種の満足感さえ得ているのだから。






「…………う~ん」



 仲間たちが住む幾多の天幕群の中を歩く。

 此処に住む人間全員が、盗賊員って訳ではない。

 引退した人や、盗賊員の家族等もいる。

 此処に住む人間全員を数えれば、二百人位居るんじゃないかと思う。

 だから天幕の数も、ゆうに百はある。

 百の天幕が点在する光景は、実に壮観で圧倒的だ。


 その天幕群の中を、思案顔で唸りながら僕は歩いていた。

 僕は何故頭に呼ばれたのだろうか。

 依頼だろうか?

 それとも叱責か?

 この間の訓練で、お嬢に怪我をさせちゃった件が頭に浮かぶ。

 訓練に怪我は付き物、仕方がないことなのだが……頭はお嬢を溺愛し、甘いからな。

 普段の厳格な頭からは、想像できないギャップだ。


 …………その件は、大丈夫な筈。


 お嬢も気にししないでと言ってたし、頭も理解してくれている……と信じたい。

 今回呼ばれたのは、依頼の筈だ。

 謎の寒気と嫌な予感がしたが、気のせいだよな?!


  


 頭の天幕は天幕群の中央にある。

 一際大きく、周りの天幕の五つ分程ある天幕が三つ。

 家族と住む天幕と、仕事用、宝物庫。

 三つ葉の様に隣接している。

 そして、頭の天幕の周りは軽い広場の様になっていた。

 僕は今、その広場についた―――。

 此処に来たときに必ず飛び込んでくる者の姿を探す。

 ―――いた。

 広場の芝生で双子の兄と遊んでいる、茶髪のショートが似合う美少女。

 少女は、何かを察知したらしい。

 バッ!と、顔を上げた。

 瑠璃色の綺麗な瞳が、僕の姿をとらえる。

 笑みを浮かべ、僕は手を振った。

 少女は満面の笑顔を咲かせ、僕のもとに駆け寄ってくる。



「――――ルイスさん、おかえり!」


「っと! セリナちゃん、ただいま」



 駆け寄ってきた勢いのまま飛び付いた少女を、受けとめ抱える。

 勢いついていたとはいえまだ五歳、たたらを踏むこともなく楽に受け止める事が出来た。

 少女の名前はセリナ、頭の愛娘である。

 会うのは一週間ぶりだ。

 僕は一週間、野暮用で街にでていたからな。



「リト君もただいま」


「ルイス、おみやげは?」 



 セリナちゃんを優しく地面におろし、ゆっくり歩みよってきた少年にも声をかける。

 セリナの双子の兄、リト。

 クールで無表情な、短髪の美少年君だ。

 髪の色は、セリナと同じ茶髪である。

 第一声でお土産をせがまれたが、人見知りな性格で、(ちかし)い者以外口もきかないことから、これでも懐かれてるのだろうと感じる。

 恐らくこれも照れ隠しだな。



「ちょっと待ってね………はい」


「うむ」


「セリナちゃんもはい」


「ありがとぉ~、ルイスさん!」


「ハハ、どういたしまして」



 懐をまさぐり、大小二つの包袋をだす。

 大きい方をリト君に、小さい方をセリナちゃんにそれぞれ渡した。

 頷きながら両手で大事そうに袋を抱える兄。

 袋を両手で掲げて、瞳をキラキラさせながらくるくると回る妹。

 実に対照的だが、喜んでくれているのだろう。


 リト君には本を、セリナちゃんには髪飾りを買ってきた。

 リト君は読書好きだし、セリナちゃんにはこの髪飾りが似合うと思ったからな。


 …………後であけるのかな?


 二人は未だに袋を大事そうにしている。

 どうやら、今あける気はないらしい。

 二人の感想を聞けないのは残念だか仕方ない。

 いつあけるかは二人の自由だ。

 それに僕も頭に呼ばれていて、もう行かないといけないしな。



「くんれんしに来たの?」


「くんれん!ルイスさん、くんれんしてくれるの?!」


「ごめん今日は違うんだ。ちょっと二人のパパに呼ばれてるんだ」


「そっかぁ……」


「ふーん……」


「でも、後で時間があれば訓練しよっか!」


「……っ!うん!ぜったいだよ約束ね!また、あとでね!」


「しょうがないからおれもやる…………あとでな」



 二人とも元気よく走り去っていった。

 恐らく家で、袋を開けにいったのだろうな。

 二人とも本当可愛いな。

 何で頭からあんな可愛い生物が産まれるのだろうか、生命の不思議だ。


 おっと!そろそろ本当に頭の元に行かないとまずい。


 昇ったばかりの太陽を背に、頭のいる天幕の前で足を止める。

 気合いを入れ、天幕の中に入った。






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