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遅れました。
すみません、精神的に大分回復したので、スローペースですが再開していきます。
どうか、宜しくお願いします。
◆
寝ている俺の頬を、誰かが触れた。
起こさぬよう、優しく撫でる。
……………これは夢だ。
起きたときには忘れている、儚い幻。
現実感が全くないのだ。
俺は直感的にそう結論した。
『―――愛してる』
顔は見えない。
声だけが聴こえる。
透き通る綺麗な、少女の声。
だが、何処か悲しい音色をしいる。
………誰だろう?
全く思い出せない。
泣いてるのだろうか、声が微かに震えている。
俺はこの少女を知っている筈なのに。
『―――思い出して』
誰か全く分からないのに……。
この少女が泣いてるのは、心苦しい。
…………大丈夫?
言葉にして伝えたいのに、躰が全く動かせない。
今すぐ抱き締め、安心させたいのに。
…………何で動かない?!
夢が終わるのか、彼女の気配も薄くなっていく。
…………待って!
『―――――待ってる』
彼女のその言葉で、俺は夢から覚めた。
――――――――――――。
………ジャアーァッ!!
叫ぶような鳥の鳴き声で、 目が覚めた。
朝の冷たい空気が、スーっと躯を撫でていく。
思わず躯を震わせる。
「………鬱だ」
何故か、微妙に心がざわついている。
何か夢を見た気がするが、何も覚えてない。
まあ、どうせ夢だ。
余り気にしても仕方がない。
………起きるとするか。
「――――っんぅ~~~!」
射し込む陽光に目を細め、躯を伸ばす。
伸ばし終わり、躯を振るわせる。
………………すっきりした。
ついでに耳の後ろが痒かったので、後ろ脚で掻く。
そこで、はたと気付く…………。
………意外にこの躯を使い馴れてるな。
普通、いきなり躯が変わったら、戸惑うはずだ。
それも二足歩行の人間から、四足歩行の狼に変わったのだから尚更。
………どういう事だ?
やっぱり、リュウキの感覚と混ざってるのか?
だとしたら、俺の中にリュウキがいるって事だよな。
俺は頭悪いし、難しい事はわからない。
でも、俺はそう信じたい。
リュウキは生きてる…………確かに俺の中にいるんだって。
――――新生活初日だ。
期待に胸を膨らまし、洞穴からでる。
すると、みずみずしい朝の匂いが、鼻を仄めかす。
…………いい朝だな。
空を見上げれば、雲一つない晴天。
まだ、登りきってない太陽が、燦々と耀いている。
季節は春って感じか……まぁ、この世界に四季があるかはわからないが。
この世界に馴れていない身としては有難い。
さて、朝御飯にしよう。
「あの兎、旨そうだったな」
思い出すは、昨日見た一つ目の赤兎。
果たして俺に狩れるだろうか……。
いや、弱気じゃ駄目だ。
狩れないと此処では生きてけないだろう。
…………やってやる!
自らを鼓舞し、初狩に気合いをいれる。
問題は獲物が、何処にいるかだが。
取り合えず昨日いた場所に向かってみようとおも う。
「――――――いないな」
昨日、遭遇した場所に着いた。
だが赤兎は居ないようだ。
まあ、そんな単純じゃないか。
………仕方がない。
他をあたっ――――んっ?
何かの気配を感じた。
左側の少し離れた繁み、数は一体。
そこまで脅威は感じない……むしろ弱い感じだ。
…………小動物か何かか?
風の位置が悪く、臭いは来ない。
だが気配は、徐々に近付いてきてる。
暫く見詰めていると、そいつは現れた。
「……………ギャッ?!」
緑の肌、人形の三頭身の体。
身長は一メートル位だろうか……。
茶色のボロ布を着て、棍棒を肩に担いでいる。
…………ゴブリン?!
興奮しているのか、鼻息が荒い。
棍棒を振り上げながら、俺に向かってくる。
俺を餌だとでも思ったのか?
…………苛つくな!
俺の目の前で、棍棒を振り下ろす。
狙いは頭のようだ。
ゴブリンの口がにやつく。
…………もう勝ったつもりか。
後ろ脚に力をいれる。
「―――――遅ぇよっ!」
「ギャァッッ!!」
ゴブリンに跳び付き、左前脚で棍棒を振るう腕を弾き、勢いのまま頚に噛み付く。
牙が何の抵抗もなく、ズブリと肉に食い込む。
そして、顎に力をいれ、喰い千切った。
ゴブリンの断末魔が、森に響き渡る。
………集中するまでもなかったな。
人間の頃であれば、集中しない限り、ゴブリンの動きは見えなかったであろう。
やはり、動体視力がチート級だな。
「――――旨っ?!」
千切ったゴブリン肉を、咀嚼した瞬間。
濃厚な旨味が俺の口の中に広がったのだ。
脂身が多く、何もつけていないのに塩気がある。
例えると、塩焼豚カルビに近い味だ。
生なのにこの旨さ………いつか焼いて食ってみたいな。
見た目は酷いけどな……。
取り合えず、朝食はこいつでいいだろう。
「いただきます!」
――――――――――。
朝食後、昨日の川に来ていた。
ゴブリンの血で濡れた躯を、洗い流している。
透き通る水の中、俺の躯から赤いモノが流されていく。
……………さっぱりしたな。
川から上がり、躯を振るわせる。
周りに水飛沫が舞い、地面を濡らした。
「ふぅ………」
息をつく。
赤く染まっていた躰は、元の白い姿に戻った。
俺に傷はないが………。
俺は顔を顰める。
…………初めて生物を殺した。
幾ばか胸にくるものがある。
先程まで昂っていたからか、平気だったんだがな。
落ち着いた途端に、混み上がってきた。
だが、この程度であれば大丈夫だ。
顔を上げる。
空は、相変わらず雲がない快晴。
太陽は、大分昇ったみたいだ。
………十時くらいだろうか。
陽気が暖かく、とても心地好い。
「良い昼寝日和だな……」
腹もふくれたし、休憩がてら寝てもいいよな。
周りに気配は無い。
それに、誰かが来れば分かるだろ。
俺は岩の上で横たわり、瞼を閉じる。
数分後、俺は意識を沈めていった。
感想、評価、指摘など、何でもいいので宜しくお願いします。