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追憶のかけら
ぎゅうっとされた痛みで、目を覚ます
いつものことだから、わかっているけど
そこをにぎられるのは、すこし痛いんだよ
君のお腹のうえは、とてもあったかい
それなのに、最後までいっしょにお昼寝ができたことはない
さっきまで読んでいたお気に入りの絵本は、風でぱらぱらとめくれている
この絵本に出てくる精霊が大好きで
ぼくの名前も、おんなじにしてくれた
かわいそうなお姫さまを助ける、旅人の話
でも本当は、旅人が一番好きなんだ
ぼくだけは知っている
大丈夫
君が旅人に会えるまで
ぼくがちゃんと守ってあげるから
ゆっくりお休み
ちいさな、ちいさなお姫さま




