兄妹との小噺
古びた道場だった。
看板にはおどろおどろしく、『シキ道場』とあった。
「おーい。ハル、ナツ!」
「あっ! ナギちゃんだ!」
「・・・久々だな、クソガキ。」
「ハル兄! クソガキはナギちゃんがかわいそうって言ったでしょ!」
「・・・いやそのナギちゃんの方をやめてほしいんだが。」
「2か月ぶりだねー。今度はどこいってたの?」
「そこは無視なのか。」
「・・・で、どこに行ってたんだ、クソガキ。」
「あー。とおいところの知り合い。というか、変人。」
「・・・そうか。」
「変人って、ナギちゃんそれはひどいよ。」
「いや都合のいいとこだけ無視するナツよりはマシだろ。」
ハル。
ナツという11歳ぐらいの少女の兄である。
年齢は16~18ぐらいだろうか。
ハルとナツの髪と瞳の色は、ド派手である。
ハルは青い髪に青い瞳。
ナツは緑の髪に緑の瞳。
2人はこの『シキ道場』を守っている。
とはいえ、もう門下生はいないのだが。
彼らは、トアナ族という一族である。
悲しい種族であった。
戦争によって遺伝子が変化し、人間離れした子どもが生まれるようになってしまった者、またその子どもを、トアナ族と言う。
トアナ族はずっと迫害されていた。
ハルとナツはこの道場を守りながら、同じ種族が現れるのを待っている。
「んで? トアナ族は見つかったか?」
「・・・様子をみてわからんか。」
「見つかってない・・・。」
「そうか。」
「・・・クソガキはなにか掴んだか?」
「ああ。」
「「!!」」
「東のほうに、ユキと名乗る、占い師がトアナ族だという情報を手に入れた。」
「ほんとっ!?」
「まあ情報というか噂だけどな。よく当たるらしいぜ。」
「・・・ユキ、か。」
「おう。」
「・・・行ってみる価値はありそうか?」
「ある、とは言い切れねえが損はねえと思うぜ。」
「なんでー?」
「占い師だからなっ! ユキがトアナ族じゃなくても楽しめるだろ。」
「・・・単純だな。」
「ナギちゃんだもん・・・」
「・・・お前ら・・・ケンカ売ってんのか?」
「・・・ナツ。支度をしろ。すぐに出るぞ。」
「はあーい!」
「もう行くのか?」
「・・・ああ。」
「おれもついてっていいか?」
「・・・勝手にしろ。」
「ハル兄! 準備できたよ!!」
「はえーなナツ。」
「・・・どうせナツは玩具しか持っていかないからな。」
「玩具もってってなにするつもりなんだ、ナツは・・・。」