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愛してる

作者: 羽倉了
掲載日:2026/03/31

呪われた公爵様と、孤児であり平民でもあるリーシャリは結婚した。

何故ならば、孤児であり平民でもあるリーシャリしか相手が見つからなかったからである。平民にまで断られ、孤児にまで手を伸ばしたのだ。

そして逃げなかったのが、リーシャリただ一人だけだったのだ。

実際に動いたのは国王様だったが、そこまでリーシャリは知らない。ただお金で苦労しない条件で結婚したのだ。

式はなく、教会で署名だけ。この日のためにリーシャリは文字の練習をしてきた。すでに公爵様は記入してあった。

神父による祝福を受けて、リーシャリは、リーシャリ・ロブリンダーとなった。

呪われた公爵様は、クロード・ロブリンダー。ロブリンダー国王の、歳の離れた王弟であった。

孤児だったリーシャリに求められるのは、跡継ぎを生むこと。ただそれだけだった。

立派な馬車に乗り、公爵家に辿り着く。

降りると、執事長が出迎えようとしていた。

そこでリーシャリは思い出す。開くまで待っていることを。それなのに自分で降りてしまったのだ。

「ようこそ奥様。さあ、旦那様がお待ちです」

鞄を持つ執事長にリーシャリは慌てた。

「あ、はい。えーっと」

見様見真似で貴族令嬢がするカーテシーをする。

「あなたに求められているのは、旦那様との跡継ぎを生むことです。さあ、きなさい」

優しそうに見えて何処か冷たい執事長の後をリーシャリは慌て追いかけるのだった。


応接室に招き入れられたリーシャリは、すでにいた男性を見た。

顔が鱗で覆われ、瞼はなく、目は透明な鱗で覆われいる。

やっぱり何度見ても蛇みたい、とリーシャリ

は言葉を飲み込んだ。そしてその変わりに見様見真似のカーテシーをした。

クロードは冷たく言い放す。

「私は子供なんて欲しくなかったが、国王陛下の命令だ」

「あの。何て呼べばいいですか?」

「クロードだ」

「よろしくお願いします。クロードサマ」

にっこりと笑うリーシャリに、クロードは変なものでも飲み込んだような顔をした。

執事長は何処かホッとする。

二人はその日から、ぎくしゃくではあるものの、平穏に暮らした。それは物語ならば、めでだしめでだして終わるかのように。

だが、そうはならなかった。

ある日突然、クロードの呪いが解けたのだ。

周囲は喜び、二人も喜びを分かち合った。

だがリーシャリはふと思った。

自分は不用では、と。

呪いが解けたクロードならば、相応しい貴族令嬢が見つかるのではないか、と。

そう思うとリーシャリは不安になり、そして決意した。

出ていこう、と。

リーシャリは屋敷から抜け出し、遠くを目指した。目指した途中で、妊娠していることに気がついた。

運よく心優しい老夫婦に拾われて、家を借りることができた。

老夫婦はリーシャリを孫のように可愛がった。

老夫婦の家でリーシャリは生むこと決めて、老夫婦は助産師を探した。

「怖いよ。アマリリスさん」

大きくなったお腹を触りながら、老夫婦が探してきてくれた助産師に、リーシャリは弱音を吐く。

助産師は老夫婦とそう変わらない歳だが、現役で、しかも三日前に元気な赤ん坊を取り上げていた。

「大丈夫さ。心配することはありませんよ」

「お願いしますね。アマリリスさん」

長い時間をかけて、リーシャリは、クロードによく似た男の子を生んだ。

老夫婦は喜び、リーシャリは我が子を抱く。

「愛してる」

生まれてくる我が子を愛することを、リーシャリは決めていた。

我が子を抱きしめるリーシャリはまだ知らない。

痩せこけたクロードに見つかり、愛を叫ばれることを。

リーシャリはまだ、知らない。

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