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交わりの地タナトシェル〜最高のご馳走を求めて〜

 この街タナトシェルは三国の境界にあり数々の貿易品が集まる、交わりの地と呼ばれるに値する街です。


 どの国にも属していない自由地帯になっている為、力が正義な所がある少し物騒な街です。先程のようなゴロツキも多いのは仕方のないことなのです。


 分かってはいても、あんな事があると残念ながら非常に評価が低くなりちょっとテンション下がり気味です。


 ですので、香りと勘を頼りに美味しいごはん屋さんを見つけて気分を変えたいと思います。


 大通りを少し奥に入りますが路地裏までは行かない、まだ人通りのある道を歩いているとふんわりと甘くて香ばしい香りがします。


 キョロキョロと匂いの出どころを探すと小さなカウンター席だけのお食事屋さんがありました。


 狭い店内には六脚の椅子がありお昼を過ぎてしまった為かお客さんはいらっしゃいません。


 店内に入ると綺麗な赤毛を三角巾で覆っているかわいらしい女性がこちらに気がついて声をかけてくれます。


 「いらっしゃいませ、赤翼亭にようこそ。お好きなお席に座ってください」


 年の頃は私と同じか少し上くらいで、美人というよりは愛嬌がある感じで良く通る声が印象的です。


 「こちらメニューです。日替わりは焼豚肉団子の野菜あんかけとなります」


 渡されたメニューには日替わりのほかは鳥、豚、魚のプレート料理がメインで飲み物と追加のパンといくつかのサイドメニューが書いてあります。


 「すみません、この甘くて少し香ばしい匂いのお料理はどれになりますか?」


 私がにこやかに尋ねると、女性は少し驚いたように目を開き、クンクンと辺りを嗅いで納得したように頷いて答えてくれます。


 「この匂いに慣れてしまい一瞬気が付きませんでした。当店の野菜あんかけを火で炙った香りですので、日替わりメニューですね」


 ニコリと微笑んでおすすめしてくださるので日替わりメニューとエールを注文します。今日は、あんな事もあったのでお仕事無しで昼間からお酒を頂きましょう。


 『昼間のエールは、頑張った証』


 の聖句通り、私は頑張ったのです。飲む権利があるのですよ。


 木のジョッキに、なみなみと入った濃い金色のエールと軽く揚げたパスタが運ばれてきます。


 おぉ、いいエールですね。このフルーティーな薫りと濃い金色は、ここより南に位置するサーナ産の特徴です。


 肥沃な大地で採れる大量の麦を使った贅沢なエールです。貿易が盛んなこの街だからこそ、リーズナブルに楽しめます。


 他の場所ではかなりお高い為、一年ぶりに飲みます。厳つい見た目の割に繊細な感覚を持つ剣士の友人が『太陽の味』と称した力強くも温かさを感じる味わい。


 やっぱり美味しい…………


 急にホームシックになりましたね…………久しぶりに帰りましょうか? たったの二年しか過ごしていないけれど、粉々になった私の心を優しく包んでくれた彼らの待つあの場所に…………


 物思いにふけりながらかなり塩味が効いた揚げパスタをポリポリしてエールを飲みます。


 するとやって来ました、ワンプレートで葉野菜とパン、大きな肉団子三つにたっぷりの野菜餡がかかっている日替わりランチです。


 いい匂いです、堪りません。さっそく二つに切って肉団子を餡をたっぷりつけていただきます。


 んっ? なんでしょう、舌がピリピリするほど塩辛く、甘ったるいです。不味くはありません、単純に塩味と甘みが強いのです。


 他の香辛料やお酢、ハーブのバランスは良いので食べられはします。ですが、濃いのです。


 塩と砂糖だけ多く使ってしまう…………この症例を持つ病を私は知っています。


 私が女主人に声をかけようとすると、入口から三人の護衛らしき帯剣した男に囲まれた見るからに、駄目なボンボンが入ってきます。


 「おい、いい加減諦めて俺の物になれ。客も入らないんだ、今月の銀貨百二十枚なんて払えないだろう?」


 困り顔の女主人さん。


 これは、お節介アリスちゃんの出番のようですね。


 


 


 


 


 

 

 


 

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