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交わりの地タナトシェル〜偽の愛へ相応の罰を〜

 「おい、ね〜ちゃん。俺らに付き合えよ、楽しませてやるぜ。げーひゃっひゃっひゃ」


 路地裏に連れ込まれ数人の、身なりの汚い傭兵崩れに見える男達に囲まれています。


 武装はまぁまぁで、一人だけですが高価な機械式の弓を持っているのでそれなりに腕がいいのでしょう。


 しかし、品は皆無です。話しかけてきたリーダーらしい男の笑いに合わせて他の方々も下品な声を上げています。


 右手で軽くチョーカーを触り戦闘用の魔術回路を五つ展開しながら男達に問いかけます。


 「それがあなたたちが望む癒しですか? 偽りない愛をいただけるのであれば、お癒しいたしますよ」


 身体強化、防御、矢躱し、魔術反射、鋭敏知覚。どれも使い慣れた術式ですのでスムーズに体に馴染みます。


 「あぁ、たぁ〜っぷり愛してやるぜ」


 舌舐めずりを始める男達。確かめるべくもありませんが愛の神様は


 『万が一って、たまにあるんだぜ』


 という聖句を与えてくださっていますので、一応彼らが私に真の愛をお持ちなのか確かめましょう。


 右眼にかけているモノクルに魔力を通します。幼い頃から私の一部である片眼鏡は母から受け継いだ、魔を司る右目と呼応して魔力と人の感情を見抜く力をもたらします。


 激しさの赤と嘲りの青……………優しさやいたわりという愛に属する色は見えません。残念ながら彼の言う愛は偽りです。


 よろしい、偽りの愛には相応の罰が必要ですね。


 「さぁ、遊ぼうぜ」


 ずっと話しかけてきた男が私の胸に手を伸ばしてきます。


 その手を取り、男のバランスを崩しながら飛び上がり男の体を捻りながら倒しうつ伏せに石畳へ押し付けます。


 私が掴んでいた右腕は倒れた拍子にボキリと折れて、曲がってはいけない方にぶらりと垂れ下がります。


 男の背中を蹴りつけて、低い姿勢のまま咄嗟に弓を構えた男の方に駆け出します。


 手慣れているだけあって、絶叫を上げる男よりも早く戦闘態勢を取り矢を放ってきます。


 至近距離、本来なら必中の間合いでしょう。ですが、魔術は世の理を破る術です。


 矢躱しの魔術は矢を反らし、たまたま軌道上にいた他の男の肩口へと矢を誘います。


 新たな絶叫を耳にしながら、弓を持つ男の腹に右の正拳を叩き込みます。そのまま身体強化で増幅された力で男を持ち上げ天にかざす私。


 「ひぃ〜悪魔!」


 お仲間の矢が肩口に刺さってしまった男が座り込みながらも後ろに後退り叫びます。


 酷いですねぇ、もし私がか弱い女性なら貴方たちは何をするつもりだったのか分かっているんですかね? 右手に刺さる男をドチャリと石畳に捨ておきます。


 「『やられる覚悟のねぇ奴が、人を傷つけるんじゃねぇ』と、愛の神様は仰っていますよ」


 座り込んでいる方の前に屈み込んで、神の御言葉をお伝えします。


 その間に後ろから剣で切りかかって来た男は私の防御術によって剣を弾かれ、ご自分の顔を自傷してのた打ち回っています。


 そこら中、悲鳴と絶叫でいっぱいです。お一人逃げ出そうとしていたのでチョーカーを起動し浮遊の魔術を展開し、一気に彼の背中に抱きつきます。


 ブンと振り抜いて空中で仰け反りながらクルリと宙返り。ドゴンっと彼の頭が石畳に突き刺さります。


 『オーバーキルには気を付けろ』


 聖句に従い、チョーカーの回路を用いて防御したので怪我はありません。衝撃で目を回すくらいには痛かったようですが。


 「自己紹介がまだでしたね。私、通りすがりの神官です。路地裏と傭兵界隈では魔拳闘士のスーで通っています。偽の愛をかざす者には相応の罰を与える者です」


 チョーカーが薄く光り浄化の魔術が返り血を洗い流してくれます。


 「スー? あっ三ツ星で神出鬼没、癒しの殴り屋がお前だと…………」


 絶句している男。


 「二度と襲うな! 2度目はないですよ。では、ごきげんよう」


 倒れて呻いている男達を残し路地裏から出ます。近くの駐在所に、荒くれ者の通報をして去ります。


 『弱きものを狙う輩は、見つけたら容赦をするな』


 愛の神様は確か言っていたと思いますよ。

 


 

 








 


 


 

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