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森の街ウィレルへ〜ウィシュ茸の味わいを〜

 ウィレルの街に着いて二日目は午前中マーケットを周ります。朝ごはんは美味しい露店を探して、美味しくいただく予定です。


 傭兵や肉体労働系の方が多いからでしょう、私の大好きな甘辛い味の物が豊富でどれを食べていいかアリスちゃん迷ってしまいます。


 お腹と相談しながら、木の実の粉で作ったお餅の焼きお団子、大イノシシの甘辛漬け串、鳥さんの揚げ串等を食べました。


 木の実の粉は丁寧にアクを取らないとエグくてうぇッてなるのですが、流石は大通りで味自慢とのぼりを立てた露店です。


 焼き目が香ばしくて、味付けはお塩だけなのに中のホワホワがアツアツで大満足です。


 イノシシはじっくり下ごしらえしないと硬いのですが、タレに入っている酸味がある果物の効果らしいのですがホロホロとお口で崩れる柔らかさです。


 女将さんが試食で、漬け込んだお肉とそのまま焼いたお肉を食べさせてくれたのがお高くても買ってしまった要因ですね。商売上手!


 鳥さんの揚げ串は…………もうジューシーですよ、じゅわ~ってじゅわ~って最強ですね。


 定番の木の実ジュースでお口の中を爽やかにして朝ごはん終了です。

 

 ぱんぱんのお腹を休める為、木彫り細工の露店が集まる所を中心に見ていきます。私のチョーカーに付ける可愛いアクセサリーをいくつか選びます。


 私の黒い指輪が中央に組み込めまれたチョーカーは、愛の神様に全てを捧げた証です。黒き聖典を全て読み解いた記念として高名な職人に特別にお願いをして、私の大切な両親の形見を使って作っていただいた逸品です。


 私の両親は早くに亡くなったのですが旅の傭兵で蓄えもなく私は、黒い古びた指輪だけを形見に魔術学院の寮で育ちました。


 古びた指輪だとばかり思っていたのですが、黒き聖典を読み解き物の本質に触れられるようになった私はこの指輪の価値に気がついてしまったのです。


 指輪は黒鋼(クロハガネ)という大変貴重な金属でした。黒鋼は大変しなやかで魔力調和率に優れていてたくさんの魔力回路を半永久的に刻み付けることが可能です。


 愛の神様に身を捧げることで魔術の深淵を覗くことができた証として、いついかなる時も私を守っていただけるように作ったチョーカー。


 このチョーカーは、組み込まれた黒鋼の指輪のおかげで三十以上の魔術回路を組み込む事が出来ます。愛の神様によりいついかなる時も咄嗟に魔術を行使できる、私の力そのものなのです。


 それとチョーカーには職人さんの遊び心でアクセサリーを付ける金具が二つ付いています。


 私はそこに日替わりでかわいいアクセサリーを付け替えて楽しんでいます。


 お店の方に試着させていただきながら、鏡で確認して購入を決めていきます。


 木も様々あり、色や艶が異なり同じうさぎさんでも迷ってしまうくらいあり、私は雪のように白いうさぎさんと、濃茶のフクロウさんをお迎えしました。


 お腹もこなれてきたので、街の酒場に行き夕飯として鹿肉のミンチステーキをいただきました。


 これがまた味わい深い、恐らくイノシシの脂を使っているのでしょう。淡白になりやすい鹿肉に甘く脂が乗ることで、それはもう肉汁たっぷりでたまりませんでした。


 その後、周りのテーブルにお邪魔してお酒を軽く嗜みながら、傭兵ギルドに凄腕の治癒術師が来たらしいという噂と、愛の神官がある宿に滞在している噂を流します。こういうのって、日々の積み重ねなんです。


 そうして、一週間程経ちました。傭兵ギルドでいつもの治療のお仕事を終え、今日もウィシュ茸の入荷が無くがっくり肩を落として宿で悲しみに暮れていた時。不意に、扉がノックされました。


 「愛の神官様、夜分すみません。母を癒していただきたいのです」


 お若い男の方の声。とても、切実なお声です。すぐに身なりを整えて扉を開けます。


 黒髪短髪で切れ長の目、成人はしているでしょうがまだ若く幼さなく見えます。好みの顔立ちと、守りたくなるような雰囲気に涎が垂れそうになるのを我慢して、ゴクンと飲み込みます。


 「お話を伺います。中へどうぞ」


 男性を部屋に招きます。ベットに座るように促しながら後ろ手で防音の魔術をチョーカーの魔法回路で起動します。


 別に大きな意味などありませんよ。単なるルーティンワークです。


 ゆっくりと魅力的な男性のお隣に座ります。


 「お話を詳しく教えていただけますか? 」


 男性に合わせて真剣な表情を作って尋ねます。彼はゆっくりと、真剣に語ってくれました。


 彼の名前はレウス。父親を病気で早くに亡くし、母親と一緒に幼い時から父親が残してくれた家業を一生懸命に続けてきたそうです。しかし、半年ほど前に、母親が父親と同じ病『魔力形成薄弱症』を発症してしまい見る間にやつれていってしまったそうです。弱っていく母親を見て助けられない自分をふがいなく思っていると、涙ながらに教えてくれました。


 そして、治す方法を母親の看病をしながら必死に探し、愛の神官の噂を聞いて藁にもすがる勢いで扉を叩いたそうです。今では、ベットから起き上がれず寝たきりになっている母親の為に。


 症例として知っています。寝たきり状態は魔力形成薄弱症の末期症状………。魔力形成薄弱症というのは、人の活力を支えるエネルギーの一つに魔力がありますが、それを生み出す力が弱くなってしまうという病です。


 魔力形成薄弱症は、外部から魔力の補給を行うことが難しくなるという病です。原因は色々考えられますが、一番可能性が高いのは高濃度の魔力に触れ続ける事です。


 高濃度すぎる魔力は大きな負荷になり体の仕組みを壊すことがあるのです。恐らくお仕事環境の関係ではないでしょうか?  でしたらレウスも…………


 即座に魔力解析の魔術を起動してみると、魔力の乱れがあります。レウスにも癒しが必要です。彼のお仕事の事は後で対処法を考えましょう。


 さぁ、癒しの時間です。愛の神様の御力を世に知らしめる時です。それでは、いつもの確認をしましょう。


 「あなたの求める癒しの対価に、あなたは私を愛してくれますか? 偽りのない愛を」


 真剣な眼差しでレウスの返答を待ちます。


 「愛します。僕のようなものの愛で認めてくださるなら」


 了承を確認しました。愛の神様ご照覧ください。私たちの愛を。


 スッと彼に近づき抱きしめ、レウスの唇に私の唇を重ねます。突然の事にレウスはビクッと緊張します。


 唇を離して優しく笑顔で語りかけます。


 「愛の味はどんな味でした?」


 レウスはモジモジとしながら私の問いに一生懸命答えてくれます。


 「あっ、あのう。キスは初めてでびっくりしてしまってすみません。正直に言うとよく分からなかったです」


 顔を真っ赤にして、とても誠実に答えてくれるレウス。愛おしくなり、もう一度ゆっくりしましょう、と声をかけて優しくキスをしました。


 唇を離した時、恥ずかしそうに


 「神官様の唇、柔らかくて少し湿っていて甘い感じがしました」


 さっきよりも顔を赤くして精一杯感じたことを伝えてくれるレウス。この彼は本当に私に愛をくださろうとしている。


 しっかりと感じました。愛はここにあります。


 今こそ神の詩を奏でる時です。


 レウスとの距離が近づきます。距離が零になり彼と抱擁を交わします。


 もう一度キス。


 心が溶け合い、私たちの間に隔たりがなくなり愛の奔流が起こります。


 本当の愛が混じりい合う時、私は神より頂いた特別な力をこの世に顕現させることができます。


 『嬌声詠唱』


 私の声が響き、世の理を超える神の力が訪れます。


 そして、私たち二人は白い部屋に来ていました。部屋の真ん中には木の椅子があり愛の神様がお座りになられ、傍らに神の代弁者様が寄り添ってらっしゃいます。


 「ここは?」


 レウスの問いに私は祈りの場よ、と答えてレウスの手を握り神に祈りを捧げます。


 レウスもそれにならい祈りました。私たちの祈りは神に届き、世が神に跪き願いが叶います。


 「神官様、今のは?」


 抱擁を解きながら笑顔で答えます。


 「愛の神様ですよ」


 レウスは先ほどの祈りの場のことは断片的にしか覚えていないでしょう。それでいいのです。愛の神様の力は偉大ですべてを知ることなど人の身では叶わないのです。


 私ですら、完全にお姿を見ることはまだできません。いつか、ご尊顔を拝見させていただきたいです。そういつの日か…………


 その後、朝が来て私は彼にキスをしてレウスを見送ります。祈りは聞き届けられました。


 レウス一家はウィシュ茸を採る仕事を代々行っている家系でした。ウィシュ茸は森の奥、隠された場所にだけ生えます。自然界ではとても稀な魔力溜まりと呼ばれる所に。


 強大な魔力にさらされる危険なお仕事。でも、あなた達はもう大丈夫、神が守ってくださいます。


 私の愛するレウス。


 これであなたの一族は、もうあの病にかかる心配はありません。


 愛の神官アリスの名において祝福を授けます。


 フフッ、生ウィシュ茸の発酵漬け。


 「最高! まだ若いって感じが堪らない。また食べに来ますわ。」


 


 


 


 


 


 


 




 


 


 


 



 

 

 


 


 


 

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