恋人の潜在意識
彼の人格は、意外にも、順応が早く、表出するのに時を待たなかった。
彼はある程度、私の人格とも、交流があったのも手伝い、どのような感覚で中を見れば、人格の存在を知覚する事ができるか、どのように、外に出てもらうように、どんな手順を踏むかだけ聞いて、私の指示で眼を閉じ、意識を底の方へ潜らせて神経を集中させた。
途端、小さな子の話し方で彼の声が、若くなるのが分かった。
私は問いかける。
「貴方の名前は、何て言うのかな?浮かぶ文字は、ある?」
少し考えたように、俯き答えてくる。
「学ぶ?」
私は、誘導する。
「じゃあ、学くんと呼ぶね。いいかな。」
「うん。」
「中に、まだ何人いるか、教えてもらえるかな。ご挨拶したいんだ。」
「んー・・・何人か、わからないけど、居る。」
「交代して、その人たちに、出て来てもらうのを頼めるかな?」
「うん、いいよー・・・」
目を閉じ、俯いた彼の集中を、妨げないように、そっと息を潜めた。
ほどなくして、「はい、何でしょうか。」と、丁寧な敬語が返って来る。
「あなたは、借金、した子かな。」
「借金・・・はい、僕だけじゃ無いけど、何人か。」
「どんな理由で、お金を借りるに至ったのかな。それが聞きたい。」
「うーん・・・」
「思い出せないかな。ここ2ヶ月から、最近まで、借りた子達は、どこでお金を使ってたのかな。」
「ゲームの課金とか、あと、お菓子を買ったり・・・誰かが、借りたから、ここから借りれるって、カードや電子決済を教えてくれて。」
頭が痛くなる。まるで、無垢な子どもが、良し悪しも分からず、手を出したみたいに感じる。
「借金すると、どうなるか、わかる?」
「返済・・・、ですよね。」
「払えるの?」
「いえ・・・、払えません。」
「働ける?」
「多分、無理です。」
「返せないと分かってて、今だけ良くて。借りるのは、良いことかな?」
「いえ・・・。」
「迷惑がかかる行為なんだよね。それに、同居人が居る事は、理解している?」
「はい。」
「相談なしに、動かれると、身の安全は、保証できない。」
「すみません。」
反抗しないし、反応は、素直に思う。でも、きっと、何か金銭感覚が、壊れている様に思う。
「君が、次に紹介できる子を、起こしに行ってくれる?私は、これから全員と話す。」
ほどなくして、目の前の人格は、目を閉じた。
世界が白くなるように。




