最後の博打
家計簿をつけていて、収支を取っていた。勘定の合わない項目に、不審は依然、募っていた。彼氏が同棲前から、していた借金。あと二、三年で返し終わると言っていた頃から、4年くらいは、経っている。ガソリンとか、車検とかと言っていた、返済のみのカードの明細に手を伸ばす。ふと…、ある文字で、視線が止まった。
キャッシングご利用額?月々15000円?
「ただいまぁ」いつもの間延びした声が、玄関から聞こえる。
「ねぇ、この明細のキャッシングって何?こういう機能ないし、返済のみって言ってたよね、これ。」
丞が明細書を受け取るなり、膝から崩れ落ちた。一向に頭を上げてくれない。
「これ、どういう意味?何か借りてたの?」
観念したように、丞が口火を切った。「ごめん。お金が手元にないと不安で、借りてた…」
私の中で、ずっと疑問だった事が、色が合わさるルービックキューブみたいに、音を立て始めた。
「もしかして、この前、不正利用だと思って、キャリアに問い合わせた携帯合算払いの不審な13万、3万しか戻らなかったやつも、ゲームに使ってた?」
「多分。記憶にないものもあるけど。」
「ノートって名目もあったけど、まさか…。」
「競馬予想の有料記事だと思う。ごめん、ごめんなさい。」
「ちょっと待って。記憶にないものもあるって?どういう事。」
「自分でも、使った覚えが無いものがあったのは、本当なんだ。」
正直、この期に及んで嘘を吐くほどの内容ではない。
大本の借金自体、動かない証拠がある限り、彼が憶えていない額は、誤魔化しても微々たる額でしかない。
「私たちの記念日、言ってみて。」
え・・・、と言うなり、彼の言う日付は、正しかった。
「じゃあ、私たちが出会ったのは、何月何日?」
ふと言った彼の日付に、思わず耳を疑う。
何度も繰り返してきた、ケーキまで用意を毎年重ねた日付がおかしい。
かすってもいない。
「違う?」不安が宿る彼の瞳目掛けて、私は言った。
「貴方は誰?」




