第6巻 第3章 第2話 「蒼月トウカの正体、福田朋広の示唆」
作品の公開から数日後、蒼月トウカの部屋には、完成した「回帰引き継ぎ」が置かれていた。
ヒロインたちはそれぞれ、自分の思いを抱えながらも、彼のもとに集まっていた。
桐生さくらが少し戸惑いながら口を開く。
「ウチ……前から思ってたんやけど、トウカさんって、なんか普通の二十歳の青年とは違う雰囲気あるやん?」
ワシは軽く笑いながら答える。
「そ、そうか……まあ、ワシも書くことに集中しすぎてるから、ちょっと変わって見えるんかもしれんな」
紫苑が興味深そうに顔を傾ける。
「でも、あなたの書き方、言葉の選び方……まるで経験豊富な大人の感覚やったわ。二十歳ってだけでは、説明できひんわね」
ワシは一瞬、言葉に詰まる。
(正体はまだ内緒や……ここでばらすわけにはいかん)
「……そ、そやな。まあ、ワシはワシなりに頑張っとるってことで」
伏見美琴が小さな声で尋ねる。
「ワシ、トウカさんのこともっと知りたい……年齢のこととか、昔の話とか」
ワシは深呼吸してから、ほんの少しだけ匂わせるように言う。
「まあ、ワシも昔はいろいろ経験しとる……年齢だけじゃ、計り知れへんことがあるんや」
天音とほのかも目を見合わせ、意味を理解したような表情を浮かべる。
「……ひょっとして、ワシ、二十歳以上なんやろか」
「そうやな……でも、ワシはあくまで今の姿で、みんなと一緒におる」
男の娘ユイが茶化すように口を挟む。
「おお、なんか秘密ありそうやな。ワシ、興味津々やで!」
ワシは笑いながら肩をすくめる。
「せやな、秘密は少しずつ知っていってくれればええんや」
ヒロインたちは微笑みながらも、心のどこかでワシの正体に気づき始める。
それでも、今は「蒼月トウカ」という青年と過ごす日常が大事だと理解していた。
部屋には、完成した作品の香りと、ほんの少しの謎めいた空気が漂う。
それはまるで、ワシの過去や正体が、ゆっくりと解き明かされる序章のようだった。




