第1巻 第2章 第1話「小さな危機、ヒロインが助ける」
蒼月トウカはいつものように机に向かい、回帰引き継ぎ作品のアイデアを練っていた。しかし、今日の彼は少し不安げだった。思いついた場面がうまくまとまらず、原稿用紙の上に書きかけのメモが散乱している。
「うーん…どうやったらこの場面がもっと面白くなるやろ…」
「ウチ、手伝ったろか?」
桐生さくらがそっと席の横に来て、微笑みながら問いかける。彼女の柔らかい京都弁が、緊張でこわばったトウカの肩の力を抜いてくれた。
「う、うん…助かるわ」トウカはぎこちなく返し、さくらの手にペンを渡した。
「ここ、主人公がピンチに陥るところやろ?ほんなら、ヒロインがちょっとした機転で助けるってどう?」
「なるほど…そうすれば読者もドキドキするな」
さくらの提案を取り入れ、トウカは原稿に新しいセリフを書き加える。「おお、ええ感じや!」
「ウチ、ほめられると照れるわ…」さくらは顔を赤くして微笑む。トウカはそんな姿を見ると自然に笑みがこぼれ、ペンの手が軽くなる。
そのとき、編集の伏見美琴がチェックに来た。「今日は少し締切に間に合わへんかも、って顔してるけど、大丈夫?」
「うん、今ちょうど打開策が見えたところや」
トウカは自信なさげに言うと、伏見は優しく頷いた。「ほんなら、思い切って書いてみ。小さな成功が次につながるから」
その間にも、天音が横から声をかける。「ワシ、ここでちょっとコメディ混ぜるのええんちゃう?主人公が慌てるところとか」
「面白そうやな」トウカは原稿にそのアイデアを反映させる。男の娘のユーモアとヒロインの助力で、場面は想像以上に活き活きとしたものになった。
夕方、窓の外に沈む光を見ながら、トウカは胸の奥で感じた温かさに気づいた。「ヒロインたちが支えてくれる…だから書けるんやな」
桐生さくらはそっと手を重ね、「ウチ、いつでも味方やで」と囁いた。
今日も小さな危機があったが、それを乗り越えることで、トウカの物語はより生き生きとしていく。ヒロインたちとの絆が深まり、作品もまた、一歩前進するのだった。




