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第6巻 第1章 第3話 「感情の交錯と真実への布石」

作品公開から数日が経ち、蒼月トウカの新作『回帰の冒険譚 ―時を超える勇者たち―』は順調に話題を呼んでいた。

ランキングは安定して上位、レビューも好意的。だが、本人の胸中は複雑だった。


「……こんなに反応があるとは思わんかったな。」

ワシは机の前で原稿の山を整理しながら、遠くを見るように呟く。


そこへ桐生さくらが、顔を赤らめて近づいてきた。

「トウカはん、見たで! みんなウチらの作品、褒めてくれてるやんか!」

「ウチ、手伝っただけやで。」

「そやけど、トウカはんの文章、やっぱり特別やわ。」


その言葉に、トウカは少し照れ笑い。

「……そうか。ありがとう、さくら。」


だが、他のヒロインたちの視線も気になる。

桔梗は淡い笑みを浮かべながら、冷静に分析するような目でトウカを見る。

「順調ね。けれど、これで満足してはいけないわ。」

紫苑は少し距離を置きつつも、静かに口を開く。

「トウカ、貴方にはまだ見せていない面があるのではありませんか?」


その瞬間、天音がぴょんと跳ねる。

「えー! なんでそんなん言うのー! ウチらも知りたいわー!」

ほのかは恥ずかしそうに顔を伏せながらも、耳まで赤くなっている。


そして、ユイ(男の娘)が中性的な笑みで割って入った。

「ふふ、みんな焦ってるな。ウチ、どっちの味方か、まだ秘密やで?」

「……お前は毎回それやな。」

「気分次第やけど、今日は“観察モード”かな。」


場の空気は微妙に張り詰め、だが不思議と心地よい緊張感が漂う。

トウカは深呼吸し、覚悟を決めて口を開いた。

「……実は、少しだけ言うとやな。この作品の中には、ワシの経験も少し混ざっとるんや。」

「え?」

「ワシ、過去に……いろいろあってな。だから、こうして物語を書けるんや。」


ヒロインたちは息を呑む。

さくらの目が輝く。

「……ワシ、それでも応援するで!」

桔梗は静かに頷く。

「真実を受け入れた上での覚悟なら、尊敬するわ。」


紫苑は微笑みを浮かべつつ、少しだけ挑戦的に言う。

「ますます目が離せませんね、トウカ。」


ユイは両手を広げ、軽く肩をすくめる。

「ほらほら、秘密を匂わせるのはウチの得意技やろ?」

「……お前もか。」


その瞬間、部屋の空気はほんの少しだけ甘く、しかし確かに重くなった。

それぞれの感情が交錯する瞬間。

友情、恋愛、信頼、そして少しの嫉妬――

どれも次の展開への布石になっているのを、トウカは無意識に感じ取っていた。


「……さて、そろそろ次の章の執筆に入るか。」

ワシは原稿用紙に向かいながら、心の中で決意する。

「ヒロインたちとの関係も、この作品も、もっと深めるんや。」


さくらがそっと手を握る。

「ウチも、そばにおるで。」

桔梗、紫苑、天音、ほのか、そしてユイも、それぞれの距離で笑顔を見せる。


――物語は、現実と紙の上の世界を巻き込みながら、次の“回帰”を迎えようとしていた。

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