第1巻 第1章 第5話「小さな成功体験、主人公のモチベーション向上」
「やった…やっと形になったな」
蒼月トウカは、今日書き上げた数ページの原稿を前に、思わず小さくガッツポーズをした。回帰引き継ぎ作品の序盤の場面だが、ここまで試行錯誤を重ねてようやく自分のイメージ通りに描けたのだ。
「ウチ、見せてもらってええ?」桐生さくらが近づいてくる。彼女の柔らかい京都弁が、緊張した空気を和らげる。
「もちろんや。ウチの意見も聞きたい」トウカは少し照れくさそうに微笑む。
さくらは原稿を読み進め、時折小さく笑ったり頷いたりする。「うん、ここええやん。キャラクターの気持ちがちゃんと伝わるわ」
「ありがとな、ウチの一言で助かるわ」トウカは、ワシを混ぜた口調で返す。自分の文章に誰かが共感してくれること、それが今の彼にとって大きな励みだった。
編集の伏見美琴もやってきて、原稿に赤ペンで軽くコメントを書き入れる。「ここの会話のテンポ、もう少しリズムをつけた方が読みやすいわ」
「なるほど…やってみるわ」トウカは真剣にメモを取り、少しずつ改善策を頭の中で組み立てていく。
その時、男の娘の天音が小首を傾げて言った。「ワシ、このシーン、ちょっと遊び心入れたほうがええんちゃう?」
「ほう…どんな感じや?」トウカは興味津々に尋ねる。天音は男女両方の口調を駆使し、セリフを少し入れ替えてコミカルなニュアンスを加えた。その結果、場面は自然に笑いを生む温かい雰囲気に変わった。
九条つばめも傍で資料を広げ、舞台設定を確認する。「ここは洛北の町並みにすると雰囲気出ますえ。季節感も意識して」
「うん、細かいとこまで助かるわ」トウカは目を輝かせた。協力者たちのサポートで、作品の完成度がぐっと上がるのを実感する。
夕方、窓から差し込む柔らかな光の中、トウカは深呼吸をした。「やっぱり書くのは楽しいな…」
「ウチも、次読むん楽しみにしてるで」桐生さくらの笑顔に、トウカは心底嬉しさを覚えた。
小さな成功体験が、彼のモチベーションをさらに高める。失敗や迷いも多いが、今日のこの一歩は確かな進歩。
こうして、蒼月トウカの物語と彼自身の成長は、少しずつ、しかし着実に進んでいくのだった。




