第5巻 第1章 第2話「ヒロインたちとの協力、駆け引きのはじまり」
消えた原稿データ。
それはただの機械的なトラブルではなく、まるで“何か”が意図してページを白紙に戻したようだった。
「トウカくん……ほんまに大丈夫なん?」
心配そうな声で、桐生さくらが覗き込む。
トウカは微笑みを浮かべて、椅子の背にもたれた。
「大丈夫。――俺には、頼れる仲間がいるからな。」
その一言で、リビングの空気が少しだけ柔らかくなる。
ヒロインたちはそれぞれの得意分野を活かし、トウカの執筆再開を支えることになった。
伏見美琴は整理魔。消えたデータのバックアップを探すため、外付けドライブを開きながら言う。
「ウチが探してみるわ。多分、前の回帰データの中に断片が残ってるはずや。」
紫苑は冷静にコーヒーを淹れ、周囲に落ち着きを与える。
「焦ったら見落とす。トウカ、まずは思い出して。“消える直前の一文”を。」
トウカは目を閉じ、記憶をたぐる。
「“魂の継承とは、記憶の回帰に似ている”――確か、その文で終わってた。」
「やっぱり……」と九条つばめが唸る。
「その一文、まるで“回帰の扉”そのものを開く呪文やん。下手に触れたら、物語そのものが引き戻される可能性がある。」
「つまり、ウチらが書いた“世界”が、こっちに影響してるってことか?」
男の娘・ナオが目を丸くする。
「そうかもしれないな。」トウカはため息をついた。
「だが、それなら――俺がもう一度書き直して、繋げるしかない。」
「ほな、ウチらも書く側やな。」
天音が笑いながらノートを広げる。
「取材でも恋愛相談でも、なんでも協力するで!」
桔梗も静かに立ち上がり、筆を取った。
「ウチら七人が“桜魂”のモデルやったんや。せやったら、最後まで見届けなあかん。」
トウカはそんな仲間たちを見つめ、口元に笑みを浮かべる。
「――俺たちの物語は、まだ終わっちゃいない。」
窓の外には春の雨。
しかし、どこかで桜の花びらが舞ったような気がした。
それはまるで、次の物語を歓迎しているかのように――。




