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第1巻 第1章 第3話「初めての執筆、試行錯誤」

「さて、今日は本格的に書き始めるか…」

蒼月トウカはパソコンの前に座り、深く息をついた。まだ頭の中は混乱気味で、プロットも細部は決まっていない。それでも、「回帰引き継ぎ」というテーマだけはしっかりと決めていた。


「ウチ、最初の設定、手伝えるで!」桐生さくらが肩越しに覗き込む。彼女の柔らかい京都弁は、緊張をほぐすスパイスのようだ。

「ありがとう、でも…まずはワシの頭の中で整理させてくれ」トウカはワシを混ぜた一人称で答えた。まだ20歳の自分としての感覚と、どこかに残る59歳の落ち着きが微妙に入り交じる。


パソコンに向かってキーボードを叩き始めるが、最初の数行で躓いた。どうしてもセリフがぎこちなく、キャラクターの魅力が出ない。

「難しいな…」ため息をつくトウカの肩を、紫苑がそっと叩いた。「焦らんでもええよ。ゆっくり考えればええんや」舞鶴弁の柔らかい響きが、頭を落ち着かせる。


その間に、男の娘の天音が近づいてきて、冗談交じりに「ワシも書く手伝いするで」とウチと俺を交互に使いながら口調を変え、周囲を笑わせる。男性陣の一人、編集の伏見も思わず笑顔になった。「いや、君は混乱させる天才やな…」


「うーん…まずは登場人物を動かしてみようか」

トウカは試行錯誤の末、ヒロインたちの会話シーンを打ち始める。桐生さくらと桔梗のやり取り、紫苑の少し鋭い突っ込み、天音の器用な駆け引き…ページは少しずつ埋まっていく。


そして、初めて出来上がった短いシーンを読み上げると、ヒロインたちは頷きながら笑う。「ええ感じやで!」

「うん、これなら読者も楽しめるかも」トウカは心の中でつぶやいた。まだ未熟だが、ここから作品が少しずつ形になる感覚があった。


午後になり、協力者たちとの意見交換も交え、シーンの修正やセリフの追加を行った。小さな成功体験が、蒼月トウカのモチベーションをぐっと引き上げる。

「よし、今日はここまでにしようか」ワシと俺を交ぜた口調でつぶやき、パソコンを閉じる。机の上には、少し乱れたメモ用紙と、書きかけの原稿が残っていた。


「明日も頑張ろうな、みんな」

「ウチ、楽しみにしてるで!」桐生さくらが笑顔を見せる。

「ええ、ワシもや」トウカは少し照れながら頷いた。


こうして初めての本格的な執筆は、笑いと試行錯誤の中で幕を閉じた。だが、これが蒼月トウカの長く、時には過酷な創作の日々の始まりに過ぎないことを、まだ誰も知らなかった。

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