第2巻 第2章 第3話「執筆ペースが落ちるが、アイデア浮上」
蒼月トウカは椅子に深く腰かけ、画面の文字列を見つめる。
今日は何も書けない――そんな日が続いていた。
「うーん…どうしても行き詰まるな」
ワシは独り言をこぼし、ペンを置いた。
「ウチ、コーヒー淹れてきたで」
桐生さくらがそっと差し出す。柔らかい京都弁が耳に心地よい。
「ありがとな、ウチ」
少し微笑むだけで、気分が落ち着くのを蒼月トウカは感じた。
机の隣では伏見美琴が資料を整理している。
「こういう設定、どうですか?」
ウチは提案と共に小さなノートを差し出す。
「なるほど…そういう方向性もありやな」
ワシは頭をかきながらうなずく。停滞していた思考に少しずつ光が差し込む。
そのとき、リュウが突然画面を覗き込み、片目を細めて言った。
「俺、こういうキャラの心理描写が面白いと思うで」
男女両方の口調を混ぜながら指摘されると、男性陣の黒田も興味津々で意見を出す。
「たしかに、ここはもう少し感情の起伏を入れた方がええな」
ヒロインたちと男性陣、男の娘とのやり取りで、執筆のヒントが次々に浮かぶ。
小さな笑い、視点のずれ、予想外の意見――それが作品に深みを与える。
「よし、少し書いてみるか」
ワシは再びキーボードに手を伸ばす。
思考の滞りは日常の交流によって解消され、作品は徐々に形を取り始めた。
これもまた、回帰引き継ぎ作品の中で必要な「日常の力」だと蒼月トウカは実感する。




