表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第1部:AND  作者: hamyu
8/10

第7話:「ラング護衛隊、結成だね!」

 嬉しいな。今日は、「ラング護衛隊」結成記念日だ。

 でも、本当はこわい気持ちもある。キオラスやテオさん、ラナさんに危険が及ばないかな。

 狙われているのは僕だけなら、僕が対抗できる力をもっていれば良かったのに。そしたら、キオラスも、みんなも、僕に巻き込まれなくて済んだのかもしれない。

 僕も、力が欲しい。

 誰かに守られるばかりじゃなくて、ーー大事な人を、僕が守れる力を。


 ……今はまだ、星を読むことしかできないけど、ね。

いつかは、きっと。

 昨日の夕方、キオラスと再会できたテオは、ラングの叔父であるアストラモンド侯爵が暮らす「星読みの塔」に行った。これからのことを相談したかったのだが、アストラモンド侯爵は不在だった。そのため、街の宿屋でキオラスと二人で1泊してから、翌朝に話すことをラングと約束した。

 翌朝、テオはキオラスを連れて行こうとしたのに、泊まった宿に彼女は見つからなかった。テオは仕方なく、公爵家に向かい、ラングに事情を話す。快くラングは搜索に加わりたいと申し出てくれて、二人で街の中を探していた。すると、大変身したキオラスと薄紫色のワンピースにポニーテールをしたラナと再会した。

 テオは、ラナとは少しの間しか離れていただけなのに、ラナはきらきらしてきれいだったと思った。

 ラングは、迷子のキオラスをよくしてくれたから何かお礼をしたいと思い、ラナを星読みの塔に招待することにした。

 しかし、ラングは春の昼の日差しに当たりすぎたのか、鼻血を出してしまいテオの作ったスペシャルドリンク(不味い)を飲むことになった。

 ラングは鼻血を出したことを恥ずかしがってか、キオラスが手を貸そうかと言っても、首を振って断ったり、明後日の方向を見たりして、キオラスをチラッと見るだけで、挙動不審な動きをしていた。それを見たテオがまた薬を出そうとしていたが、ラナに強く止められた。


 アストラモンド侯爵は、キオラスの大変身を絶賛し、ラナに好きなだけ滞在することを許した。ラナも一緒に今後の話を聞くことになった。

「今後はテオとキオラス、そしてラナの三人にはラングを守ってほしい。昨日の襲撃の犯人も捕まっていない。ラングはしばらく誰かと必ずペアで動いた方がいいな」

「叔父様、でも僕、星の観察を……」

「ここで続けなさい。道具も揃っているよ」

「……はい。……ありがとうございます」

 アストラモンド侯爵は、ラングの身を案じて善意で勧めている。

「あ、私、賞金稼ぎをしているんで、一人で情報収集出来ます!」

「……オレも情報、集める。……ラナと一緒に」

 テオとラナの目線がつながる。

 テオは昨日の襲撃で、犯人の目を見ていた。


ーーあの目は、……オレの目の前にいる彼女の、紫色の瞳と、よく似ていた。

ーーラナが、犯人だったらどうしよう。

ーー……オレが一緒にいれば、ラナの潔白を証明できる?

 テオは、なぜか胸が、ちくんと痛んだ。


「……そうか。では、二人は情報収集を頼むよ」

「「はい」」

 テオの隣に座ってそわそわしていたキオラスが、身を乗り出してラングに笑顔で伝える。

「じゃあ、ラングは基本的にはキオと一緒に行動するんだね! 安心して、キオが守ってあげるからね!」

 キオラスの正面に座っていたラングは、まだ大変身したキオラスに慣れておらず、どぎまぎしてるようだった。キオラスは無邪気にこう続けた。

「ふふふ。ラング護衛隊、結成だね!」

「う、うん。……ありがとう」

「それでは、解散。……ラナ嬢は一人残ってもらえるかな。これからのことを話したい」

「……はい」

 ラナは小さく返事をした後、テオの方を見た。

 テオはいつも通り無表情だったが、じっとラナを見つめていた。そして、おもむろにラング、キオラスの後に続いて廊下に向かった。

(……テオに、“待ってる”って目で言われたのかしら)


 部屋にはラナとアストラモンド侯爵の2人になった。昼下がりの優しい春の日差しの中、部屋の空気はどこか凛としていた。

「……君には別の依頼をしていたはずだが、私の記憶違いかね」

「おじ様の記憶は、正しいです。すみません、私の判断ミスでした」

 ラナは背筋を正し、淡々と頭を下げた。

「私は君に、依頼をすでに任せているんだが、ーーその全てを遂行することは、可能だろうか」

「はい。全てやり遂げます。お任せあれ」

 侯爵は目を細め、ラナの真意を探っているようだった。ラナはいつも通りの笑顔を作って見せた。

 それから二人は、この屋敷での暮らし方について、簡単に打ち合わせをした。




 話が終わり、廊下に出ると、テオが壁にもたれて待っていた。

「……なんだって?」

(やっぱり。さっきの目配せは“待ってる”だったのね)

テオとの付き合いはまだ1週間程度なのに、言葉がなくても考えていることがわかって、ラナは笑顔になった。

「……テオ、心配して待っていてくれていたの?」

「……!」

 テオは照れて顔を背け、外を眺める。ラングとキオラスが中庭に出ていた。

 キオラスが「私についてきてね!」と言わんばかりに、先頭を歩き、ラングが後を追いかける姿が見えた。

「短い別れだったわね。またすぐに一緒に行動できるとは思ってなかったわ、テオ」

「……ラナ、オレ……」

 テオが何か言いかけた時、侯爵が扉を開けて廊下にやってきた。

「おぉ、どうした二人とも。私に何か用があるのかね」

「! あ、いえ、ラナを待っていました。行くぞ、ラナ」

 そう言うとテオはラナの手を握って歩き出した。



 屋敷の階段を降りながら、ラナは先を行くテオの手を見つめた。

「ねぇ、いつまで私の手を握っているつもり?」

「!」

テオは、無意識に握っていたので、ラナに指摘されて真っ赤になって手を離した。

「ふふ。……ね、このあとはどうするの」

「え、えっと……」

「ちょっと、何も考えていないの? ギルドに行って、情報収集をしましょうよ、ね」

「……うん」

 今度はラナが先頭に立ち、ポニーテールを左右に揺らしながらリズミカルに階段を降りていった。

「……ラナ、オレ……信じているから」

 テオはさっき言えなかった言葉を口にした。


 気が付くと、ちょうど、ラナが階段の下に着いたところだった。

「ちょっと、テオ! ぼーっとしてどうしちゃったの。早く行きましょうよ!」

 ラナは笑顔で振り返り、テオに手を振った。


 テオの言葉は、ラナには届かなかったように見えたが、実はラナには、ちゃんと聞こえていた。

 ラナはテオの心配を消したくて、わざと明るく振る舞った。


(やっぱり、あの時……なんとなくテオには分かっちゃったのかな。それでも、信じてくれるなんてーー。……これからどうしよう。ねぇ、……テオ)


 春の日差しの午後は柔らかく、街は穏やかだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ