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第15話「二人だけの秘密」

 あれから数日が経ち、満月は欠けはじめ、半月になっていた。

 ラングは明日、別れを迎えるみんなのことを考えて眠れずにいた。


「ごめんね。実は、私のパパとアストラモンドおじ様ってお友達なのよ。それで、ルシャングがパパを通しておじさまに雇われるなら、私も!って、くっついてきたの!」

 紅茶を優雅に飲みながら、ラナが話す。


「俺は、島が崩壊した6年前、海に投げ出されて、漂流していたところ、ラナの父親の商船に拾われたんだ。そこからずっとこのじゃじゃ馬娘のお守りをさせられてるんだ」

 ルシャングがにやりと笑ってみせる。


「え、じゃあ、ルシャングとラナはずっと一緒だったのか?」

 テオが珍しく感情を出して話す。


「ね、ね。と、いうことはぁ〜、ルシャングはみんなのお兄ちゃんになったんだね!」

 キオラスがお菓子を頬張りながら笑顔で満足そうに話す。


 アストラモンドは、がははと笑う。

「いやー、すまんすまん。どうしてもお前を助けたかったんだが、うまく行かなくてな。心配かけたな、ラング」

「本当に、言ってくださればよかったのに!」

「ラナが三重スパイになったと?」

「ちょっと、おじさま、やめてくださいよ!あれは流れで……」

 ラナが慌てて止めようとする。

「僕なんて、最後までラナさんは敵に寝返ったんだって一人で警戒していたんですよ!」

 ラングが口を尖らせ、笑いながら不満を口にする。

「ああ、三重なんて仕事、要領の良いラナだからできたことだ。さすがだったよ」

「ふふふ」

 キオラスが笑う。

「みんな、笑っている。よかった!」


「さて、これからの話をしようか」


 ラングはこのあと、アストラモンドの庇護下で後継者の勉強を始める。制度を変えるには、いろいろ学ぶことがある。


 クアーテルとその母カステルの処遇は、後日クアーテルとラングの父から言い渡される。

 ラングが心配していたので、重罪にならないように助言しようとアストラモンドは言ってくれていた。


「テオ、キオラス、お前たちとはこれで契約終了だ。短い期間だったが、世話になったな」

「え〜、キオ、まだまだできるよ!ね、テオ!」

「……そうだな。あ、そうだ、ラナ。ずっと入れっぱなしで、忘れてたんだけど、これ」

 テオはポシェットからディーダ島の呪われたエイアンの指輪を取り出す。劇薬が塗ってあった布は取り替え、水晶で浄化してあるが、まだ油断はできない。

「!テオ、これ、どこで見つけたんだ?」

 アストラモンドが目の色を変える。

「えっと、……ラナと以前、山賊の解体をした時に……。ごめんなさい。盗るつもりはなくて、完全に興味がなくて忘れてた」

「うん、あの時ドタバタしてたもんね」

 ラナが思い出したように指輪を布越しに受け取る。

「えー!何、テオ、ラナと結婚するのー!?」

「「はぁっ!なんで」」

 テオとラナは声を合わせてキオラスに詰める。

「……だって、テオ、ラナに指輪のプレゼントでしょ?」

「……待て待てキオラス。話をややこしくするな」

 また頭を抱えたテオに口を塞がれ、後ろに下げられるキオラス。

「……アストラモンド様」

「よし、次の任務が決まったな。四人で、このエイアンの指輪を調査してきてくれ」


 眠れないラングは庭園に出てきた。


「……いいなぁ〜」

「……何がいいの?」

「!キオラス」

「……今日は月の形が半分なんだね。……ラングも眠れないの?」

「……ああ」

 寝巻きのキオラスがひょこっと現れ、ラングの横を歩き始める。

 ラングは見慣れない姿のキオラスを見てなぜか分からないけれど、胸が騒がしかった。

「今度は、ディーダ島の秘密を探りに行くんだろう?気を付けて行けよ」

「うん!ラングは、お勉強なんだよね。……やっぱり、一緒に旅をしながら、勉強はできないの?」

 ラングは、心臓の音がうるさく、キオラスに届いているのではないかと不安になった。

「キオ、ラングともっと一緒に居たいなぁ」

 ラングの瞳から涙が溢れてきた。

「……キオラス!僕だって、みんなとまだ一緒に居たいよ!」

 ラングがキオラスの両手を掴む。二人は向き合っている。

「それなら、みんなに頼んでみる?一緒に……」

 

 泣きながら笑うラングの表情は、別れの笑顔だと分かった。

 キオラスはラングの言葉を待った。


「……でも、それじゃ、……ダメなんだ」

「……そっか。ラングがいたら、もっと楽しいと思ったんだけどね〜!……仕方ない、よね」

 二人の間に、春の冷たい風が吹き抜ける。キオラスがラングの手を離そうとする。

 ラングは一度、視線を落とした。

 逃げることもできた。

 でも、逃げたくなかった。


「キオラス」


 ラングは両手を掴み直し、その場で片膝をつく。

「……僕と、結婚してくれないか」

「ええ!?」

「ああ!今すぐじゃない!!……5年後、僕は成人する。僕はこれから勉強して、君を守れる力を付ける。危険かもしれないけれど、……その時、隣に、居てほしい……」

 ラングの顔は真っ赤になっている。

 半月の光でも、十分分かるほどに。

「……うん!分かった!5年後ね!キオは、ん〜その時、17才かな!テオは何て言うかな〜」

「……テオには、秘密にしてくれ。僕からちゃんと伝えたい」

「えぇ〜、じゃあ、ラナやルシャングには……」

「キオラス!……ラナもルシャングにも、叔父様にも秘密だ。僕と、二人だけの……」


 頬を赤らめ、目を輝かせたキオラスが答える。


「……分かったわ。二人だけの秘密ね!」


 半月が笑って二人を見下ろしていた。




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