プロローグ:島の崩壊と別れ
テオとキオラスを中心に、ルシャングを探す冒険の始まりの、始まりのお話。
「キオラスー! 返事をしろー!」
暗闇の中、オレは必死で妹の名前を呼びながら、何度もキオラスと遊んだ森を駆け抜けていた。
返事はない。島の北側にある火山が噴火して、溶岩が流れて森林が燃えているのが遠くに見える。島を抜ける南風で噴煙はこっちには来ていない。オレは逃げる動物たちと逆方向に、山の方へ進む。
きっと、キオラスは「ディー」と一緒だ。妹にしか見えない、不思議な友達。
ーーテオ、キオラスを守ってあげて。
これが、育ての親マーガレットの最期の言葉だった。さっき、兄ルシャングと二人で彼女を看取った。彼女の死によって、兄はこの島の守護者を受け継いだのを、オレは泣きながら見ることしかできなかった。守護者になった兄は島の中心に行って、封印の術を行っているはずだ。
だから、今、キオラスを探しに行けるのはオレしかいない。
オレがキオを守るんだ!
島は周期的に揺れを繰り返し、連動するように火山も幾度となく噴火している。まるで、島が怒っているように。
そのとき、ディーと出会っていた大岩の近くに、光が見えた。暗闇の中に浮かぶ光の雨の中に、キオラスがいた。
「キオラス! 無事か!?」
やっと見つけた。キオラスはゆっくり振り返り、オレを見た。
火山を背景に光の中にいるキオラスは、どこか、おかしい。
強い南風が吹き抜けた。その瞬間、キオラスの前髪が舞い上がり、表情が見えた。
ーーオレの知っているキオラスじゃない。
「……お前は、誰だ」
ここまでテオが8歳のお話でした。
キオラスは6歳。
ルシャングは10歳。
第2話から、6年後の14歳に成長したテオをお届けします。