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番人の葬儀屋  作者: あじのこ
第4章 波間の約束
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風のない日に現れる不気味な男

船とポトロが空飛ぶ船と呼ぶ船の中は息苦しいほど狭かった。大人一人用の操縦席にバッシュとポトロが無理やり入ったのだ。膝と膝がぶつかり、身動きが取れない。バッシュは窮屈さに耐えかねて低く舌打ちをした。


「こんなとこでじっとしてたら、先にオレが酸欠で死ぬぞ」


「静かにしてくださいよ、バッシュさん」


ポトロは小声で言いながらも、少し興奮した様子で続けた。ポトロは狭い操縦席を見回し、その狭苦しさも気にせず目を輝かせた。


「すごい…!この計器と配置、見てみてください!禁書の内容を完全に再現している…!」


手を伸ばして操作レバーやスイッチを触りそうになるのを、バッシュが急いで止めた。


「おい、触るなよ!」


だがポトロは、狭い空間に詰まった未知の仕組みに完全に心を奪われていた。


「バッシュさん!なんだかワクワクしませんか?」

「お前、どんな趣味してんだよ…」


船内は相変わらず窮屈だった。

狭い操縦席の中、膝をぶつけながらバッシュはポトロに向かって小声で毒づく。


「お前のせいで、この狭い場所がさらに狭く感じるんだが?」


バッシュが呆れたように言うと、ポトロがふと何かを思い出したように顔を上げた。


「バッシュさん、静かにしてくださいよ」


ポトロは軽く笑いながら、小声で返す。そしてふと思い出したように口を開いた。


「僕…あの男の人を見て思い出した話があるのですが…」

「またくだらねぇ話か?」

「そんなこと言わないでください。これは僕が子供の時に聞いた階段話ですけど…」


ポトロの声が少し低くなる。バッシュは眉をひそめながらも、しぶしぶ耳を傾けた。


「…風のない日に現れる不気味な男の話なんですよ」

「不気味な男?」


ポトロは少し身を乗り出して、囁き声で話し始めた。


「その男は、昼間はほとんど姿を見せないんです。でも、風がぴたりと止む夜になると、どこからともなく現れる。そして、大きな布に包まれた何かをゆっくり運んでいるんです」

「…布に包まれた何か?」

「ええ。すごく重そうなんですが、その男は一人で運んでいるんです。顔も、体も、全部布で覆われていて、誰も素顔を見たことがないって…」


バッシュは腕を組みながら鼻で笑った。


「なんだよそれ。ただの変わり者じゃねぇか」

「でも、それだけじゃないんです。その男が現れるときは、なぜか周囲が異様に静かになるって。動物の鳴き声も、風の音もしなくなるらしいんですよ」


バッシュの笑みが少しだけ引きつった。


「…静かになる?」

「ええ。そして運んでいる布の中身は、絶対に見てはいけないって言われてるんです。中を覗こうとした人は、次の日には姿を消しているから…」

「それも噂だろ」

「まあ、そうかもしれません。でも、その男が運んでいるものを見たっていう人が一人だけいるらしいんです」

「なんだよ、その中身」


ポトロは一瞬言葉を切り、周囲を警戒するように窓越しに外を見た。そして、低い声で続けた。


「…鳥の翼だったって」

「鳥の翼?」

「ええ。それも、地面には落ちていないような、異様に大きな翼だそうです。真っ白な羽が何枚も重なっていて、まるで…空を飛ぶためのものみたいだって」

「お前、それ本気で信じてんのか?」


ポトロは少し興奮した様子で身を乗り出し、続ける。


「でも、その男が風のない日にしか現れない理由、考えたことありますか?まるで、風が彼の邪魔をするみたいに…」

「風が邪魔…?」


バッシュは眉をひそめた。


「そんなの偶然だろ」

「そうでしょうかね?その男が動き始めると、必ず風が止むって話なんです。風が消えるからこそ、何かを試しているんじゃないかって…」

「試してる?」

「ええ。それが何かは分からないんですが、その布の中に隠されたものと関係があるんじゃないかって」


バッシュは溜息をつきながら、ポトロの顔を睨んだ。


「そんなことあるわけねぇだろ。ただの変人だ。それで終わりだ」

「でも、もし…」


ポトロは窓の外を見ながら呟く。


「もし、その男が布の中に隠しているのが、本当に…」

「やめろ」


バッシュはポトロの肩を軽く押した。


「くだらねぇ噂話に俺を巻き込むな」


だが、ポトロの真剣な表情を見ていると、つい黙り込んでしまう。彼の声には、どこか現実味を帯びた不気味さが含まれていた。


その時、外で微かな物音が聞こえた。布が地面を擦るような音。二人は同時に息を止めた。


「今の…なんだ?」


バッシュが問いかける。


「風…ですかね?」


ポトロが震える声で返す。


「今日は…大した風なんて吹いてねぇだろ」


ガタガタと不穏に揺れる窮屈な船内で、静寂が重くのしかかる。バッシュは小瓶を握りしめる手に少し力を込めた。布の中身なんてくだらない。そう頭では思いながらも、胸の奥で何かがわずかにざわついていた。

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