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番人の葬儀屋  作者: あじのこ
第4章 波間の約束
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海辺の不穏な出会い

バッシュは、蒸し暑い夏の風を感じながら、ポトロと共に歩き続けた。昼間の太陽は容赦なく照りつけ、波の音をかき消すほどの熱気が周囲を包み込んでいる。海風が少しだけ涼しさを運んではいるものの、それでも肌にまとわりつく湿気が不快だった。


「こんな暑い中外へ出るなんて、冗談だろ?」


バッシュが吐き出すように言った。

ポトロは額の汗をぬぐいながら、冷静な声で答えた。


「他に選択肢はありません。がんばりましょう!」


波の音に混じって、遠くから漁船の音が聞こえ、海面には陽光が反射してきらきらと輝いていた。しかしその美しさとは裏腹に、バッシュの心は重く沈んでいる。


「本当に船を使ってあの塔に近づくのか…」

「はい」


ポトロはうなずき、バッシュの顔を真剣に見つめた。


塔は海の中から突き出た黒い巨人のようにそびえ立っていた。波が打ち寄せるたび、その巨大な影が海面に揺れる。塔の壁は無機質で冷たく、遠くからでも圧倒的な威圧感を放っていた。


砂浜には古い岩が点々と転がり、波が岩に当たる音が静かな警告のように響く。塔の上には黒い旗がひらめき、風に揺れながらも、そこには生気を感じさせない不穏な空気が漂っていた。


遠くの入り口には鉄のフェンスが囲んでおり、警備兵が無表情で立っている。近づくことが許されないような重い沈黙がその周囲を包み、まるで塔そのものが人々を遠ざけるように感じさせた。


こちらから見るだけでも、その存在がどこか異質で、侵入することが許されない場所であることを直感的に感じさせた。


「でも、思ったよりも警備が厳重なようですね…」

「厳重なようですねぇ…って」


ポトロの口振りにバッシュは手で額の汗を拭きながら、少しだけうんざりした様子で答えた。


二人が歩く足音は、湿った砂浜に響き、暑さでゆっくりと重く感じられた。海の青さとは裏腹に、空気は淀み、バッシュはこのまま何時間も歩いている気がした。


「暑いな…」


バッシュが不満げに口を開くと、ポトロは少し微笑んで言った。


「暑いのは私たちだけではないですよ。海に生きるものにとっては、これが普通の暑さです」


バッシュは軽く肩をすくめ、深く息をつくと、進むべき方向を見据えた。その先に待っているのが何か、分かってはいるが、心の中でまだ葛藤が渦巻いている。だが、もう後戻りはできない。


バッシュとポトロは、海辺に立って空を見上げながら言葉を交わしていた。船を手に入れようと何度も交渉を試みたが、どこも相手にしてくれない。彼らがまだ子供だという理由だけで、相手にされるはずもなかったのだ。船人にけんもほろろに追い返されしまいには「憲兵を呼ぶぞ!」と、言われてしまった。


「これじゃあ、どんなに頑張っても無理だな。」


繋船柱に腰を下ろしたバッシュは肩をすくめ、ため息をついた。


「どうしよう…もう時間は残されていないのに…別の方法を探さないと」


焦り顔のポトロが答えたその時、海辺に何か不穏な気配を感じた。遠くからゆっくりと歩いてくる一人の青年の姿が見えたのだ。


青年は小さな車輪のついた大きな布で包まれた『なにか』を押していた。それは動くたびにギコギコと人を不安にさせる音を立てた。加えて左右に大きく広がっている。

布の下から覗くのは、形が不明瞭で、まるで粗雑に組み立てられた機械のようなものだった。金属と布が入り混じり、時折露出する部品の中には、用途がまったくわからない奇妙な形のものもあった。布の隙間から見えるそれは、ひどく不安定に感じられ、表面はしわくちゃに膨らんでいて、風に揺れるたびにそれが一層不安定に見えた。


その全体像ははっきりと見えないが何かしらの機械の部品が組み合わさり、なにかの目的のために動くことを意図していることは明らかだった。


青年が近づいてくると、バッシュはその顔に見覚えがあった。いや、覚えがないのだが、何か心に引っかかるものがあった。青年の目は虚ろで、まるでこの世のものではないような、どこか無垢な雰囲気を漂わせていた。


ーーーそれに、あれはなんなんだ?


バッシュは自分の違和感を探るようにじっと男を見つめた。

まるで歩き始めた子供のようにも見えるし、糸につった人形が歩いているように見える。

とにかく、不自然だった。

男が歩くたびに体の関節がギコギコと音でも鳴るように、まるで体が本来の機能を失っているかのようだった。


すれ違う瞬間に青年は一瞬だけバッシュを見つめたが、すぐに興味なく視線を戻した。


そのどんよりと曇った瞳にバッシュは背筋がゾッとした。


青年が通り過ぎる瞬間に風が靡いた。

大きな布を広げてその中身を見せた瞬間、バッシュとポトロは目を見張った。

そこには、無数の機械部品と古びた道具が散らばっており、まるで何かの実験装置のようだった。


「あいつ、何をしているんだ?」


バッシュは怪訝そうに尋ねた。ポトロは驚きのあまりメガネの奥の瞳をまんまるくさせていた。


「あ、あれは…!?」


バッシュさん、急いで後を追いかけましょう!!ポトロはバッシュの手を掴むと大急ぎで不気味な男の後を追いかけ始めた。

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