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番人の葬儀屋  作者: あじのこ
第8章 ノヴァリス・ビスタの雪
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後継者2

部屋に入ると、ヴァルはドアを静かに閉め、しばらくの間、何も言わずに立ち尽くしていた。バッシュはベッドに腰掛け、無関心そうに天井を見上げている。


ヴァルは深呼吸を一つしてから、慎重に言葉を選んだ。


「バッシュ、……君に話しておかなければならないことがある。」


その言葉に、バッシュはわずかに顔を向けたが、すぐにまた天井に視線を戻した。


「なんだよ?」


ヴァルは少し間をおいて、真剣な表情で言った。


「君が後継者に選ばれたことについて、少し説明しなければならない。」


バッシュはその言葉に目を細め、眉をひそめた。


「そもそも後継者って、なんだよ?」


ヴァルは一瞬黙った後、ゆっくりと口を開いた。


「葬儀屋は……神明によって選ばれるという。神明の意志で、時期が来ると代を引き継ぐ者が現れるという伝承があるんだ。」


バッシュはその言葉をじっと聞き、目を細めた。


「だから、俺がその『後継者』ってわけか?」


ヴァルは頷き、少し顔をしかめながら言った。


「そうだ。ただし、君がその役目を引き継ぐかどうかは、君の自由だ。強制されることはない。」


バッシュはしばらく黙っていた後、軽く肩をすくめて言った。


「ふーん……そんな話か。じゃあ、俺には関係ないな。」


ヴァルはその言葉を受け入れ、少しだけ安堵の表情を浮かべた。


「本来なら、俺が後継者を育てる立場にある。だけど、この仕事を無理に引き継がせるべきなのか、今でも迷ってるんだ。葬儀屋の務めは、ただの仕事じゃない。命を預かる、重い責任が伴う。君には、それを背負わせたくない。」


その言葉にバッシュは、梟の森の番人やケガレとの闘い、そしてエゾフの母親の暖かい血を思い出していたが、それを振り払うように冷たく笑った。


「安心しろ、ヴァル。オレは後継者なんて興味ない。俺の道は俺が決める。オレには……やらなきゃいけないことがあるんだ。」


ヴァルはその言葉を受け、しばらく黙っていた。部屋には静かな空気が流れ、二人の間に言葉が途切れた。

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