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番人の葬儀屋  作者: あじのこ
第7章 地を抱く脊梁
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開いた扉の先

7-11


バッシュは、狭い坑道の中で出口を探し続けていた。荷物の中で忘れていたランタンを取り出して、光がわずかに前方を照らし、壁と天井がどこまでも続くように感じられる。


バッシュは何度も立ち止まり、壁を叩いてみたり、耳を澄ませてみたりしたが、どこからも出口の兆しは感じられなかった。


「これ、ほんとに出口あるのか?」


バッシュは不安そうに呟き、足元を確認する。石がゴロゴロしていて、足を取られそうになる。彼はバランスを崩しながらも、なんとか転ばずに踏ん張る。「ああ、まるで迷路みたいだな…」


もう一度、壁を手で探りながら進んでいく。時折、壁に耳を当てて音を聞こうとするが、どこからも反響は返ってこない。思わず「もしかして、地下の迷宮にでも入ったんじゃないか?」と自嘲気味に笑ってしまう。


「出口、出口…どこだよ、出口!」


彼は頭をかきながら、ランタンを持つ手を振り回すようにして進んでいく。足元の岩を蹴飛ばし、何度も壁にぶつかりながらも、進んでは戻り、また進んでは戻りを繰り返す。


「この道が出口に繋がってるって、誰が言ったんだよ…」


また別の道を試してみることにしたバッシュは、今度はランタンを高く掲げ、前方をじっくりと見つめる。突然、何かに気づいたように足を止め、壁のひび割れをじっと見つめた。


「…あれ、もしかして?」


一瞬の希望を感じたが、壁に手をかけてみても、そこはただの岩のひび割れに過ぎなかった。バッシュは肩を落としてため息をつく。


「うーん、どこに行っても同じだな…」


それでも諦めずに足を進めるバッシュ。今度こそ出口が見つかることを信じて、再び前に進むしかなかった。


バッシュは、しばらくの間、無駄に足を踏み外しながらも進み続けた。そのとき、ふと目の前に何か異変を感じた。足元の岩が少しずつ傾斜を帯びてきていることに気づく。


「お、これは…?」


彼は慎重に足を進めながら、前方に広がる道を見つめる。しばらく進むと、ついにその先に階段のようなものが現れた。石の段差が規則的に並び、上へと続いている。


「これだ!やっと出口か?」


バッシュは急に元気を取り戻し、階段を駆け上がる。足音が洞窟内に響き渡るが、彼は気にせずに進んでいった。息が上がりながらも、心の中で出口が近いことを感じていた。


そして、階段を登りきったその先に、思わぬ光景が広がっていた。目の前に、古びたトロッコが停まっている。その周りには、木材や道具が散乱しており、まるで何かの搬出作業が行われていた跡のようだった。


「これ、もしかして…外に繋がる搬出口か?」


バッシュはトロッコの近くに立ち、しばらくその様子を観察する。トロッコのレールはどこかへ続いているようだが、その先は見えない。手を伸ばして、トロッコの取っ手に触れると、少し錆びた音が鳴った。


「うーん、動かすにはちょっと力がいるな…でも、線路を歩いていけば外に出られるかもしれない。」


バッシュは一息つき、トロッコの周りを調べながら、慎重に次の一手を考えた。


バッシュはトロッコのレールを目で追いながら、その先に目を凝らした。すると、ぼんやりとした薄暗がりの中に、鉄の扉がひっそりと立っているのが見えた。その扉には太い鎖が巻きつけられ、頑丈そうな錠前が取り付けられていた。


バッシュは少し肩をすくめ、ため息をつく。

だが、すぐに顔を上げ、ポケットから小さな道具を取り出した。それは、旅先で学んだ鍵開けの道具だった。


「さて、どうするかな…」


バッシュは慎重に鍵の錠前を見つめ、手元を動かし始める。指先で金属の感触を確かめながら、少しずつ道具を差し込んでいく。その動きは、まるで職人のように滑らかで、無駄がなかった。


「ふむ…この角度だな。」


数回の微調整を経て、バッシュはついに鍵が回る感触を手にした。カチリと音が鳴り、錠前が外れる。


「よし、これで開けられる!」


バッシュは勢いよく鎖を引き、扉の前に立つ。鎖が外れると、扉がゆっくりと開き始め、向こうの景色が見えた。


眼下を見下ろすと、そこには待ちくたびれたようにその場に座るニズルとブルート……そして棺が横たわっていた。

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