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Beggars can’t be choosers



 掌に濃縮したエネルギーをレーザーに変換し、ビームとして一直線に発射する。

 照射されたレーザーポインタの如き光が、甲冑を着た魔人を縦横無尽に両断していく。


 一人、哀れにも慌てふためいた魔人が盾を構えて防ごうと試みた。

 しかし、俺のレーザーはその薄っぺらい鉄の盾ごと焼き切り、魔人は二つに分かれる。


「うぉぉぉぉぉぉぉッ!!」


 ふと、後ろから雄叫びが上がった。

 振り返ると、両足が切断された魔人が矢をつがい、俺に撃とうとしていた。

 俺にとってはスローモーションに見えるほど稚拙な所作だったが、あえて反応を見せず放置する。

 放たれた矢は当然、自動防御に防がれて跳弾した。


「くそっ!何なんだよ、それは……!?」


「お母さんシールドだ」


「はっ!?」


 意味が分からないと顔を歪ませた魔人へ、今度はレーザー弾を撃つ。

 再びうじゃうじゃと湧いてきた魔人に向かって、次々に掌を向けて撃ちまくり、肉塊を量産した。


「……ふぅ…」


 戦闘が一時終了した事を確認し、俺は辺りを見回す。



 酷い有様だ。


 俺達を監視していた人類解放戦線の手下どもを殺して回り、帰ってきたらこの惨状だった。

 かなり遠くの方まで殺して回っていたとはいえ、一日も経たず町が廃墟になろうとしている。

 放っておいてもよかったが、流石に知り合いくらいは助けに行こうと乗り込んで、今に至る。


「しかし、さっきの俺の戦い方…スーツ着たら『鉄男』名乗れるな」


 と、そんな事を考えていると、天啓が降りた。


「これ、もしかして…レーザーを推進力に使えるんじゃ…」


 思いついたら即実行。

 両の掌を地面に向け、エネルギーをレーザーという形にまとめず、噴流にして燃焼させる。

 すると、


「お、おお!?」


 身体は浮き上がり、左右差で揺れながらも飛び上がる事が出来た。


「すげぇ!神秘なんていらなかったんや!」


 神秘ナシでも飛べるようになった。

 いや、これ神秘と合わせたら戦闘機並みの馬力で空を飛べるのでは?

 楽しくなってきたな。


「あ、あの!助けてくださり、誠にありがとうございます天人様!」


 新たに使えるようになったジェットで遊んでいると、今まさに俺が助けたポール達冒険者協会の者達が礼を言ってきた。


「やべ、見られてた……ま、まぁ気にすんなよ、ポール。それより、これで全員か?」


 現在俺がいるのは、燃え盛る冒険者協会の前だった。

 協会のスタッフや助けを求めてここにきた村民が集まっており、そんな非戦闘員まで襲おうとやってきた魔人を俺が撃退したところだ。


「わかりません。何分、突然の襲撃でしたから避難の確認もままならず…今はここにいるものだけで、村の外まで避難するつもりです」


「それがいい。ライア、彼らを外まで護衛してやってくれ」


「了解しました」


「ポール、避難の指示はお前に任せるぞ。ライアは好きに使っていい」


「おお!何とお礼を言ったらいいか……この御恩、末代まで忘れる事はありません」


 頭が地面までつきそうな程深々と、ポールはお辞儀をした。


「礼は後でいい」


 それを軽くあしらって、その場を離れようとする俺をライアが止める。


「002、どちらへ?」


「他に残された人がいないか見てくる」


「ですが、危険です」


「…ライア、俺は他人を見捨てる事に躊躇ない。殺す事だって、好きじゃないが必要なら躊躇わない。だがな、一度関わっちまったら目覚めは悪くなる。だろ?」


「…そうですね、確かに、あなたはそう言う人でした。あれだけ胡乱な扱いを受けた自衛団(カルメン・リーダー)すら見捨てられないような、優しい人です」


 何やら嬉しそうに、にっこり笑ってライアは掴んでいた俺の裾を離す。


「別に…そういう理由で助けたわけじゃないけど…」


 優しいなどと言われては心外だ。


「いいえ、あなたは優しいですよ。あなたは今まで結局一度だって、助けを求められて見捨てた事がない」


 なんだその、私はわかってますよアピールは。

 お前は俺の正妻か。

 それではまるで、俺がなんだかんだと文句を言いながら世話を焼く、ただの素直じゃない天邪鬼みたいじゃないか。


「ツンデレは今時流行らん」


「ふふっ、可愛い人ですね」


「はいはい。じゃあな」


 手を振って歩き出そうとしたその時、またも俺は呼び止められた。


「天人様!お待ちください!」


 だから、俺は天人じゃないんだけど。

 辟易しながら振り返ると、おれを呼んだのはティアの父親と教会のシスターだった。


「マルクスさん、だったっけ?あれ、ティアは?」


「それが、あの子がいないんです!孤児院の子は、ティア以外全員いるのに……!もしかしたら、礼拝堂にいたのかもしれません!」


「けどあそこは、村に火をつけた爆発の発生源って聞いたけど…」


「そうなんです!お願いします!あの子を、探してくれませんか!」


 二人とも、俺が引き受けなければ自分が探しに行くと言わんばかりの勢いだった。


「…わかった。最優先で探して見る」


「お願いしますっ!」


 ティアは、俺がリスクを背負いながらも助けた子供だ。

 その子に何かあっては俺の苦労が無駄になる。

 それは俺に直接手を出してきたも同然。


 もしそんな事になっていたら、ただじゃすまさんぞ魔人ども。






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