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カルメン村




 魔人の兵士を殲滅し、ティアの父親を助け出してから一週間。

 俺は現在、新たに森人の村に滞在していた。 


 結局あの後、ポールにお願いされて救助した人々の護衛を行い、安全で大きな村であるこのカルメン村まで付き添う事になった。

 カルメン村はティア達の住んでいた村、メニエド村というそうだが、あそこに比べると随分大きく、シナスタジア雨林奥地へ続く窓口的な村として人々の行き来が多い。

 その分、病院や森人冒険者協会など大きな施設が充実しており、被害にあった人たちの輸送先としてはベストらしい。


 俺とライアだけなら半日の道のりを四日かけて村まで歩き、滞在を始めて現在は三日の朝。

 早朝の慌ただしい通りを抜けて、俺はライアと共に森人冒険者協会へと赴いていた。


 西部劇さながらのスイングドアに体ごと体当たりして開け放ち、建物内に入る。


「大胆な入り方ですね、002」


「かっこいい?」


「いえ、ダサいです」


 冷静な言葉に俺は顔から感情が一瞬抜け落ちるが、すぐに平静なふりをして進もうとした。


「おお!これはこれは、天人様!おはようございます!」


 すると、俺とライアのスキンシップを邪魔して、ポールが話しかけてきた。


「ポールか。もう動いていいのか?」


「ええ、お陰様で、体力以外は全快ですよ」


 あの後、俺は救助した人々全員に治療を施した。

 だが、どうやら治療を施すと、本人の体力が大幅に削られるようで、ポールはカルメン村についてから今まで、検査入院という形で病床に寝ていたのだ。

 無論、傷は治っているので問題ないのだが、酷い倦怠感が抜けるまで時間がかかるらしい。

 まぁ、中には破傷風で死にかけていた者もいたのだ。治してやっただけありがたく思ってもらいたい。

 などと考えていたら、思っていた何倍も感謝されて困惑している二日間だった。


「元気ならよかった。で、こんな朝っぱらから協会に用か?」


「ええ、元々私は魔人冒険者協会からの頼みで動いていまして、そちらの報告を念のため。まぁ、報告できるような内容はほとんどありませんが」


「そうなのか?瘴国の兵士が村を襲撃して人攫いなんて、それこそ戦争もんだと思ってたが」


「そうですねぇ、それが立証できればそうなんでしょうが…残念ながら、天人様の仰っていた通り、彼らはこの作戦中瘴国から解雇されていた可能性が濃厚です。この状態で訴えても、尻尾を斬られるだけ。最悪、『事実無根の言いがかりをつけられた』なんて言って、堂々と戦争を仕掛けてくるかもしれません」


「なるほど」


「なので、恐らくこちらのスタンスとしては『瘴国から来て蛮族行為を働いていた野盗を、こちらで殲滅した』というような報告をして、牽制をするくらいに留まるかと」


「そっちがしている事に気付いているぞ、と…ふむ、難しいものなんだな、政治って」


「ははっ、御理解いただけて何よりです。天人様は、今日も依頼をお受けに?」


「まぁな。思ったより魔人が金持ってなかったからさ、金策に苦労中だ」


「すみません、お礼にお金を渡してしかるべきだというのに…」


「いや、いい。全財産焼かれちまった奴がほとんどだ。そいつらから金をせびろうなんて思ってない。事実確認が済んだら、冒険者協会が報酬を出しくれるんだろ?」


「ええ、ただ今回の件は公にはできないので、表向きにはこの村までの護衛、その依頼に対する報酬という形になると思います」


「何でもいいさ。金がもらえるなら」


「あぁ、それと、また魔人冒険者協会から話が来ていますよ。ぜひうちとも契約を、と」


「そのうちな」


「わかりました。森人冒険者協会も今はあなたの噂で持ちきりです。冒険者のネットワークは広いですから、すぐに様々な組織から話があると思いますよ」


「スカウトが盛ん何だなぁ。ま、せいぜい品定めするさ」


 ポールに手を振って、俺は協会の受付に向かった。

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