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not my business,but ①




「002、気を失っているようです」


 燃える村を迂回して進み、川沿いで晩を越そうと思っていると、俺の鋭い聴覚が動物の気配を察知した。

 覗いてみると、何とまだ小さな女の子が血だらけで倒れているではないか。

 助けを乞う姿はあまりに痛々しく、思わず思考停止でヘルプを承諾してしまった。

 なのでとりあえず、ライアに傷の具合を見てもらったのだが…


「助かりそうか?」


「このままでは、難しいですね。右肩の脱臼と肋骨の骨折は問題ありませんが、胸骨の粉砕骨折、その破片が気胸を引き起こしており、換気不全のリスクが高い状態です」


「凄いな、そんな事まで触診でわかるのか?」


「いえ、神秘を使って002のスキャンを模倣しました。情報の演算処理をウーシアシステムに肩代わりしてもらっているので、出来る事ですが」


「論理演算が必要なの?よくわからんな。で、助けられそう?」


「ええ、問題ありません。他者の治癒は少しプネウマの消費が激しいですが、幸いここは森人の領域。大気中のプネウマを使ったアルカナであれば、リスクも小さく済みますので」


「あー、ごめん。ちょっと何言ってるかわからない」


 匙を投げて、女の子の治療をするライアを見る。


「ですが002、そろそろあなたも自分の使っている力について、深く理解した方が良いかもしれませんよ?」


「ええー?ほんとにござるかぁ?」


「はい。そもそも、魔法と神秘の違いは理解して使っていますか?」


「ううん。全然わからん」


 はっきり言うと、ライアは若干呆れたような目をしていた。


「そんな事も理解せずに人型兵器を退けたのは称賛に値しますが…いいですか、002。魔力を使った現象を魔法、プネウマを使った現象を神秘と呼びます」


「はい」


 一日で二度ライアの説明を聞くのはきつい。

 せめて明日にしてほしかった、と思いながら心は川のせせらぎに傾注する。


「魔法はとても破壊的な力で、かつ直接的です。魔力を体内で生成できる人種は魔人だけで、基本的に魔法を扱えるのは魔人だけ、という事になります」


「そうだったんだ…」


 誰でも使えるものかと。


「同じくプネウマも天人にしか生成できません。魔法に比べて抽象的かつ概念的な力で、魔法よりも高次元の力です。その分、天人は繁殖能力が低く、ほぼ絶滅危惧種である彼女らは世界に九人しかいないと言われています」


 驚くほど初耳で、気づけば川のせせらぎを聞き逃していた。


「魔力とプネウマについても、詳しく言っておきましょう。魔力は非常に融点の低い液体で、魔人の体内の他大気中や一部の鉱石の中に含まれています。また、プネウマは鉱物の一種であり、天人の体内の他細粒砂として大気中にもわずかに含まれています」


「どっちも空気に含まれてるって事ね」


「ええ、体内でこれらのエネルギー源を生成できない人種も、空気中の成分を使って神秘や魔法を使う事があります。森人は空気中のプネウマを、獣人は魔力を扱いますが、どれも天人や魔人が使うものと比べると次元が低いです。そのため、別の呼び方をすることが多く、森人の使う神秘はアルカナ、獣人が使う魔法はペルソナと呼称されます」


「それも覚えなきゃだめ?」


「……いえ、まぁアルカナとペルソナに関してはその上位互換を扱える002が使う事もないでしょうから、覚えなくてもいいです」


「ほっ。よかった」


 小難しくて覚えられたもんじゃない。

 安堵に胸を撫でおろしていると、再び俺の聴覚に反応があった。


「誰だ?」


 それも、一人ではない。

 複数の、金属が軋む音。

 何となしに察しながら茂みの向こうを見ていると、やはり奥から甲冑を来た魔人が四人、現れた。

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