第三:弱者の居場所 part1
2067年4月20日。
そろそろこの学校にも溶け込めるようになった生徒が増えたこの頃、中学一年校舎の廊下をずかずかと歩く生徒がいた。
名前は斐川泰斗。 まるで猫の様にギラついた金色の瞳をさらにギラつかせ、それにふさわしく思わせるがごとく青緑色の邪魔にならない程度にバッサリと切っている。
先ほどから眉間に皺を寄せながら金色の眼光を研ぎ澄ませているという、近づいた人間は即刺すと言わんばかりのような表情をしているせいか、斐川とすれ違う生徒は、自然と彼から離れ、彼に道を作る。
しかし、彼とすれ違う生徒がそうしてしまう理由は、別に彼の表情にあるわけではなかった。
「「っ……!」」
ずっと我が道に真ん中を歩いていたせいか、反対側から来た生徒とぶつかってしまう。 随分と身長の高い生徒だった。 この校舎にいるのだから、に上級生ってことはなさそうだが、体格が良い。 身長の低い斐川と比べると20センチも差があった。
「ってぇなテメェ! どこ見てんだ!」
ものすごい剣幕でいきなり相手に胸倉をつかまれ、斐川の体が微妙に浮き、爪先立ちになる。
こんなデカい相手にこんな事されたら、普通の生徒なら怯んですぐに謝るだろうが、いかんせん斐川という人間は非常にプライドの高い人間だった。 当然の如く謝る、それどころか怯みもせず、むしろ睨み、言い返した。
「お前がぶつかってきたんだろうがっ! 早く離せ、このクズ!」
「てめぇ、この―――――っ!!!?」
斐川の言葉に逆行し、拳を振り上げた彼だったが、斐川に突き出す前に、その行動をやめてしまう。 その原因は――
「せ、『執行部』の腕章……!!?」
斐川の二の腕当りの左袖に括り付けられた、黒の太陽に白の三日月が刻まれている紋章が描かれた腕章に目が行ったからであった。
『執行部』。
数ある学園の委員会の中で、最も大きい『力』を持った、三つの委員会の一つであるそれは、学園の生徒の誰もが憧れる対象であると同時に、恐れられる対象でもあった。
理由はいくつかあるのだが、最大の理由は、その『力』が強すぎることにある。 それは、実力がという意味でもあるが、一番はそこではない。 問題は権力。
彼らには全校生徒の規律を守るため。 一般の生徒では許されない『とある事』が許されている。
『とある事』、それは――――
「解ったらとっとと離せ、クズ野郎!!」
斐川がそっと、しかし刺すように相手の腹部に手を添える。 その瞬間、カッ! と一瞬だけ斐川の掌が光が炸裂し、その衝撃に相手の生徒が2メートル飛んで仰向けに倒れた。
「!? ごっ――!!?」
蹲った少年の腹部から微妙な焦げ目が出来ている、明らかに普通の人間が出来る技じゃない。 じゃあなんだと言われれば、答えるまでもない。 魔法じゃない限りはこんなことは出来ない。 そう、『執行部』に許されていること。
それは、『校内での攻撃魔法の自由』である。
もちろんそれなりの制限はあるが、例えば校内の生徒の校則違反などの行為を止めるためなら、基本的に魔法の発動は許される。 先ほどから斐川とすれ違う生徒たちが彼を避ける理由はそこにあった。
「生徒への恐喝、暴力未遂。 まぁ、反省文4、5枚程度で許してやるから、後で適当な職員室に来いよ。 あ、連絡を入れておくから、行かなければ処罰が足されると思え」
自分が倒した相手を全く見ずにそう告げて、自分は再び我が道を歩く。
(それにしても、こんな形でチャンスが恵んでくるなんてな……)
先ほどから明らかなに不機嫌な表情をしている彼ではあるが、心の中は少々異なった意味で湧き上がっていた。
その理由は、およそ一時間前、昼休みの頃へと遡る。
またまたお久しぶりでございます!
少し早めの更新が出来たのですが、それでも遅いですねw
しかも、今回はちょっと短いです;
原因は次回にあるのですが、これが切る場所が見あたらず、妙に長くなってしまったのが原因なのです;
しかも新キャラも続々と出るので……た、楽しみにしてください!
さて、今回は
え~、まえの「呪をもらって魔法学園生活」の第三とはかなり異なります。
斐川設定がかなり違っていたり(一応キャラは変わってませんがw)、ストーリー展開もかなり違います(そのせいで次回がかなり長くなったのですが;)。
一応展開は自分の中で決まっています!中詰めってか、一部一部の表現のし型が思い当たらなかったりするのですよね……そこさえ何とかなれば……
では、今回はこの辺で!
皆様の、感想、評価、アドバイスなどを、心からお待ちしております!