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第一:幕開けにケルベロス!!? part4



「…………」


 それまでの光景を、誰もが見つめているしか出来なかった。 如月学園校長、白木葉(しらきよう)も、そうするしか出来なかった人間の一人だ。

 そしてたっぷり数秒掛けて、何名かが弾かれたようにハッとする。 それにも白木葉が含まれていた。


「あの、バカ……っ!」


 あの青紫色の髪の少年の行動を思い返して、悪態をつく。 あの少年、篠原葉月だったか。

 あの合成獣からこのホールの人間を守るためにという意味の行動なのかもしれないが、注意を自分に向けるというやりかたは、理由がどうこう関係なく愚か過ぎる。

 いやそれ以前に、入学したての子供に何が出来るというのだ。 魔術なんて使用できないし、出来たとしても簡易なものだ。 そんなの、あの合成獣を倒すどころか、足止めにもならないだろう。 まさか喧嘩に自信があるからという理由であのような行動に出たのではないだろうか。


「早速騒がせてくれちゃって……!」

「校長!」

 

 苛立って、といよりは笑いをこらえるような歯噛みする葉の横から、分厚い眼鏡をかけた若い女教師がやや怯えた様子で声をかけてくる。


「さっきの子は僕が何とかする。 君たちはこのホール内の生徒を落ち着かせて」

「は、はっ、はいっ!」


 この女教師、たしか今年からの新任だったと思う。 そのせいか、女教師の返事はやや裏返っていた。 しかし、それでもこの学園の教師を勤める(ことになった)エリート。 迅速に、的確に他の教師に指示を出して場の混乱を収め始める。

 葉はそれを長い間見ることはしなかった。 それは、自分には自分のやることがあると発言したこともあるが、もう一つ。 この学園の教師なら、このくらいのことは当然のように出来ると確信しているからでもあった。


「さ~て……」


 のんびりとした仕草で伸びをし、首を左右の順に傾けてポキリポキリと小気味良い音を鳴らす。 そうしながら、彼は考えてみる。


(あの合成獣……論文を作るためとかの実験用とかじゃなくて、護衛とか強襲とかに使う戦闘用として作られていた……。 一体誰があんなのを作ったんだか……いやまぁ、作ってもいいけど、キメラっていろいろ危険だから、うちでは記録とってるはずだけど……あんなのうちで作られた記録はないし、僕自身も作った記憶もないし……となると自然的に、学園の外か、または誰かが内密に作って、放ったってことになるけど……いや、今はそれよりもあの子達を追うのが先だね)


 とりあえず、まだそう遠くへ行ってないはずだ。 少なくとも、地上には出ていないだろう。


(じゃあ、こうした方が良いね)


 グッ……と一瞬だけ脚に体重を掛けて、次の瞬間、ドン!! というロケットスタートというのを絵に描いたようなスピード、しかもたった一歩でこのホールを出る。

 その時に起きた風圧が後ろの生徒たちを驚かせたが、今はどうでもいい。 今は篠原葉月だ。 しかし、こちらはすぐに片がつく。 場所はもう解っている。

 葉はホールを出た瞬間、すぐさま左方向へと一歩進む。 一歩といってもさっきと同じ方法でだ。 たった一歩で20メートルは跳んでいる。 十字路に入った。 次は右にまた一歩、ほぼ同じ距離を跳ぶ。 そして


「いた!」


 左方向、およそ70メートル先に、あの合成獣の尻尾が見えた。 あそこは、地上―正確には第四職員校舎へと続く階段があったはず。

 地下道は田んぼの田の字を20メートル間隔にいくつも繋げたような構造になっていて、広さも長さも均一だ。 しかし、階段は違う。 通路が4メートル程度あるのに対し、地上へ続く階段はまばらであり、しかも職員校舎への階段は人間二人が並んで歩ける程度の幅しかない。 そう、合成獣にとって、その幅は狭すぎるのだ。

 おそらくあの篠原葉月は階段の途中にいて、合成獣はそこを通れずに、呻りながら小さな隙間にあるエサを取ろうとする犬のように腕を伸ばしているのだろう。


(へぇ……やっぱり頭良いね、あの子……)


 心の中でそう感心しつつ、もう一度一歩だけ跳ぶ。 今までよりも大きく、およそ70メートルを一瞬で。 そして合成獣と葉月の付近で足が地面についたとき、なにかが聞こえた。 これは……


(え……うそ、詠唱……?)

「大地よ怒れ。 姿は龍頭。 数は一。 対象を食らえ……」


 それはまるで、眠れない子を寝付かせる優しくて静かな子守唄の様だった。 しかしその『唄』が終わる瞬間。 葉月に襲い掛かろうとしていた合成獣が地面から出現した何かに捕まった。 というよりも、『噛まれた』、または『喰われた』と表現したほうが正しい。

 合成獣を喰らったそれは、まるで巨大な龍の頭だった。 恐らくコンクリで出来ているそれが、天井を向きながら合成獣の体を咥えている。 その光景は一つの絵のようにも見えた。 噛まれた合成獣の鮮血が飛び散り、床や壁や天井や葉の服や肌を汚す。


「……………………」


 目の前の光景に葉は驚きを隠せず、唖然とするしかなかった。

 その原因は簡単。 今葉月が発動させた魔術に対してだ。 さらに言えば、今日、ついさっき魔法名を貰ったばかりである葉月が今の魔術を使えたという矛盾に対してだ。

 簡単な魔術だったら、さっき本を見たから、ぶっつけ本番でやってみたといえば、一応の説明はつく。 しかし、上級魔法は別だ。 中等部では中級魔法が最後。 高等部の半ばでやっと教わるものだ。 しかも、習得もかなり難しいのだ。 それに今のは、


(……最上級の『遠隔型魔法』…………? ……そんなの、LEVEL7やLEVEL8の術式なのに…………)


 魔法使いにはレベルという物がある。 しかし、レベルとはあくまで良い言い方。 嫌な言い方をすれば地位だ。 最大LEVEL10まであり、数が多ければ多いほど、『地位』が高い。

 LEVEL1(ハンブル)LEVEL2(スライト)LEVEL3(コモン)LEVEL4(ゴースト)LEVEL5(スピリット)LEVEL6(エリート)、ここまでが生徒レベルだ。 実際、LEVEL6(エリート)に到達する生徒は稀で、基本的にはLEVEL4(ゴースト)止まりが多い。 逆にLEVEL1(ハンブル)止まりという生徒も珍しくはない。 

 そのまた逆に、LEVEL6を限界とせず、そのまま突き進んで成長したのが教師レベルだ。 LEVEL7(ドラグーン)LEVEL8(エンゼル)。 これは本当に稀で、天才の中でも一部としか言えないほどのレべルであり、人間の限界点と言われている。

 では、残りの二つは何だと言われたら簡単だ。 『人間ではありえないレベル』と考えれば、9割強正解だ。 LEVEL9(レジェンド)LEVEL10(ゴッドノウズ)

 葉月はこの二つにもっとも近いLEVEL7やLEVEL8並の力を発揮した。 入学したての生徒どころか、生徒である時点で、今の魔術を発動するのは非常に難しい。

 だからこそ葉は気付いた。 『力を使いすぎた今の葉月に意識が無い』と。 それがわかったと同時に、葉月がぐらりと横に倒れた。


「おっと!」


 しかし、彼の体が床につく前に一瞬で移動し、葉は葉月の体を支えた。 彼のほうが体は小さいが、彼はまったく重さを感じていないような表情で彼の体を支えられている。 

 葉はそのまま、気絶している葉月の腹部に手をやった。


(……一応無事だね……。 疲れただけか………………ッ!)


 一瞬だけホッとして、しかしすぐに一つの気配に気付く。 その方向を振り向いた時、少し強いが速い足音がここから遠ざかっていく。

 もしかしたらこの合成獣を作った本人かと思い、体を強張らせたが、すぐさまそれを解く。 その可能性は無いと判断したのだ。 今少々離れていたにしても、彼の魔力を察知する能力は、そこら辺の教師ですら上回る。

 今感じた魔力はLEVEL1(ハンブル)。 つまり、考えるまでも無く生徒、それも入学生だ。 おそらく、あの騒ぎの中、この篠原葉月のことが気になって来たのだろう。


(まぁ……たった一人の生徒に見られても問題は無いよね……)


 合成獣の死体があるのが問題だが、自分もいるのだ。 きっと、自分が仕留めたのだと思ってくれるだろう。 それに、そんなことよりも、この少年だ。


(体内、及び体外に以上は無かった……彼の魔力も、普通の生徒よりは強いけど、それでもLEVEL3(コモン)ギリギリ。 ……だとしたら、『覚醒種(かくせいしゅ)』かな……? だけど今のは少し違うような……)


 さっきまでの事態をそう推理してみる。 すると自然に顔の筋肉が緩み、口の両端が吊り上った。


(ふふ……さっそく、騒がせてくれたね『TEMPESTER』…………。 それにしても…………)


 葉は横たわっている合成獣を見据える。 既に死んでいる。 当然といえば当然だが、事態が事態だ。 どう考えたって目の前の光景の矛盾は取り消せない。


(それに、この合成獣……論文を作るためとかの実験用じゃなくて、護衛とか強襲に使う戦闘用として作られていた…………)


 合成獣の周りには素材であったコンクリートの塊が散らばっている。 葉月によって作り出された龍頭の形を保つための魔力が尽きたのだろう。 そしてゆっくりと葉月を見据える。 すると、ゆっくりと葉の口の両端が吊り上り、その愛らしい顔に似合わない妖艶な笑みが出来上がった。

 何かを企んでいる様な笑みだが、よく見ると全然違う。 彼の笑みは『何かを企んでいる誰かの行動が楽しみだ』という笑みだ。 何が始まるのかが解らない今、こちらも何をするのかが決められない。 だからこそ面白い。


(ふふっ………。 長生きすると面白いものが見つかる。 忙しくなりそうだ)


 葉は獅子よりも強い声を出して笑う。 だが強いと言っても、声の大きさそのものは半径一メートル前後にまで近づかないと聞えないほど小さい。

 しかしそれは、そのくらい近づいてしまえば、心臓の弱いものなら一瞬で気絶してしまいそうな悪魔のような笑みだった。



え~、今回も随分と長い時間を使ってしまい。本当に申し訳ございません。


やはり最初の最後ということで、後のことも考えた結果……にしても遅すぎますね、本当に申し訳ございません!


こんなに間がたっていながらも、読んでくださっている人がいるというのが嬉しいと同時に本当に自分が情けないです;


次の更新は早めです!今度は嘘ではありません!はい!



えっと、では、今回の変更点ですが。

まぁ、色々違いますねw


あれ、金髪の少年が浅葱色の少年に変更したことは……前回言ったかw


えっとそうですね、単純に言っちゃえば、葉月が始めて魔法を出した場所が変わりましたw

前回はホールの中でしたが、今回は人での少ない場所になりましたねw

だって、あんなたくさん人の目がある場所じゃごまかしきれんだろうにwまぁ、今回もある程度噂が立つんじゃね?程度にはしましたがw


もうひとつは、LEVEL10の名前が変わりました!前回はゼウスだったのですが、固有名詞を使うのはどうかと思ったので、『神のみぞ知る』という名前になりましたw


多分こんなところかな?

あぁ、あと、最後のほうに出てきた。生徒。アレは……誰でしょうねwHAHA☆


では、今回はこの辺で。

皆様の感想、評価、アドバイスを心からお待ちしております!

久澄望でした!失礼します!

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