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第一:幕開けにケルベロス!!? part3


(……なんだ? 景色が変わった?)


 急な異常事態に、混乱しかけ、周りに誰かいないかと、辺りを見回しながらとりあえず愛海の名前を呼んでみるが、返事は無い。 この闇の世界には、自分以外誰もいないのだろうか。 葉月は辺りを見回すが、やはり誰もいない。 さらに言えば、何も無い。 ただただ永遠と続いている暗闇の世界。

 そして、たった今気付いた。 体が浮いている。 いや、浮いているというよりも、感覚としては水の中にいる感じに近い。


(あの子供……。 ほんとに何者なんだ?)


 あの子供、どれだけ譲歩したとしても、歳は10もいかないだろう。 なのにこの魔法。 そもそも魔法は飲酒や喫煙などと似たように、12歳になるまで使用は禁じられているはずだ。 まぁ、そもそも魔法名がないと使えないのだが。 しかし、あの子供は使用できた。 つまり、魔法名があるということになる。 この矛盾は一体……。

 そこまで考えるとのとほぼ同時に、葉月の目の前に光が出現し、その中からさっきのパジャマ姿の子供。 もとい、校長『白木葉』が、少し不機嫌そうに頬を膨らませたまま現れた。


「子供とは失礼なんじゃない? 僕はこう見えても66歳だよ!」

(なっ!?)


 ありえない返答が帰ってきて葉月は驚愕した。 この校長の歳のことでじゃない。 『何も言っていないはずなのに返答された』事について驚いたのだ。


「あんた……何をした? ここは何処だ!?」


 葉は葉月なりの心からの訴えを聞くと、心底満足した様ないやらしい笑みを浮かべる。 それすらもどこか愛らしく感じるが、非常にむしゃくしゃした。


「知りたい? はは♪ いいよ、教えてあげる。 君は……1-C組、出席番号14番、篠原葉月君だよね?」


 この質問に、葉月は言葉にして返す必要は無いと思ったので、軽く首を縦に振った。 その様子を見て校長は満足そうにさらに笑む。


「この闇の中は僕が生徒一人一人と話すために作った『心理鏡』っていう『思想空間』だよ。 つまり僕の思ったとおりになる世界だね。 ちなみに、『生徒は皆ここに居る』よ」


 そんな馬鹿な、と思い、葉月は周りを見回してみる。 しかし先ほどと結果は同じ。 誰も居ない。 やはりこの二人以外には、誰もいない。


「下手な嘘付くな。 他の生徒をどこにやったんだよ! ……まさか、逆に僕だけを連れて来たのか?」 

「あっはは♪ そんな怖い顔しないでよ~♪ そうだな~……説明するなら、大きなホテルの中に一人一人が別々の部屋に僕と一緒に泊まっていると考えればいい。 同じところでも『部屋』は存在するからね」


 葉が楽しそうな、明るい口調でそう説明する。 そこで葉月はすぐに気付いた。


「……てことはじゃあ、アンタまさか、聖徳太子よろしく、『300人近くいる生徒と同時に話している』のか?」

「おぉ! よく理解したね! 察しが良い……。その通り、僕はきみ以外の286人と話している。 他にも気付き始めた子が何人かいるけど、一番は君だったよ」


 校長がまた随分と楽しそうな顔をする。 葉月はそろそろ一発殴っても良い頃だろうかと思ったが、何とか押しとどめた。


「さて、そろそろ……君の魔法名だけど……」


 葉は、そう言いかけて葉月の額にいきなり、だけど優しく自分の額を付けた。 その速度はスローモーションのように遅かったが、葉月にどうさせることも、どう考えさせることもさせなかった。 彼の額の熱が葉月の額に伝わる。 まるで親が子供の熱を測るみたいだ。


「君の魔法名は…………うん、これがいい」


 その瞬間、何かが葉月の頭の中を刺激した。 何かが流れ込んでくる。 それは名前。 魔法名だ。

 最初に、『T』。 その次に『E』。 『M』、『P』、『E』、『S』、『T』、『E』、『R』。 その一文字一文字を頭の中でくっつけてみる。


(『TEMPESTER』…………騒がせる者………?)

「そう、君の魔法名、『TEMPESTER』。 君はきっと何かを起す。 だから、この名前を送るん―――っ!!?」


 いきなり葉が笑顔から驚きの表情を浮かべたと思ったら、彼の体が消え失せ、同時に視界の闇も消え、目の前が大きなホールの中に戻った。 そして、そこは異常な光景だった。

 辺りを見ていると、生徒達が悲鳴を上げて、席から立って逃げたり、その場にうずくまって怯えている姿が見える。 


(いったい、何が起こっている……?)


 それぞれの慌て方はもろもろだが、彼らの目線は同じものへと向いていた。 葉月はそんな彼らの目線の先を見る。



 そこに居るのは『ありえないが、ありえる生物』。



 犬の様に見えるが、絶対にそれは無い。 頭は三つあり、体は立たなくても大人以上の大きさはある。 犬ではないとしたら、もう答えは一つしかない。 合成獣(キメラ

 複数の生物を一つに纏めた結果、絶大的な力を持つようになったという、正式名称、『魔力構成式新型人工生物』。 しかも、必要以上に魔力を練りこんで構成されたらしく、通常(おてほん)の物と比べ、凄まじい力を持っているようだ。

 今の葉月にはそれが解る。 何故そんなことが解るのかというと、魔法名は個人個人の魔力を察知するためのレーダーにもなるからだ。 目には見えないが、肌で感じられる魔力が、魔力で構成された合成獣の強さを表している。

 教師達があの合成獣を捕獲、しかし、生徒には当たらないようにと出来るだけ威力の低い魔法を放っているが、うろたえている生徒達のせいで上手く放てず、放てたとしても、合成獣には当たらず、まったく役に立たない。 それは校長の葉ですら同じだった。 この状況下では、誰であろうがこうなってしまうのは当然だろう。

 だったら誰があの合成獣(キメラ)を止める? 魔力は当然、力も人間より遥かに強い。 そんな相手に、勝てる確率はあるか? この場の全員を守る手段はあるか? 答えは、


(あるね)


 こんなにも騒々しい中、そういう答えが出せるほど葉月は冷静でいられた。 自身の中で何かが弾け、身体の熱が一瞬にして失せ、すべての感情が無と化した。

 怖いとか、恐ろしいとか、反対に楽しいとか、面白いなんて今の葉月の心には無い。 微塵もだ。 ただ、ただ近づくだけ。 時計の長針が短針を追う様に、無心のまま一定のリズムで目標へ向かって歩く。

 そんな葉月を誰も止めない。 止めようともしない。 止められない。 止めたくない。 止めてはならない。

 生徒達も教師達も葉も気づいている。 葉月の力に。 葉月の魔力に。 葉月がまたさらにもう一歩踏み出す。 その行動だけでホール全体の空気が凍った。

 そんな絶対零度の空気を断ち切るように合成獣が人間ではメガホンを使っても出せないほど大きく吼えた。 三つの口から出る咆哮が葉月の髪を揺らす。 しかし、その程度でこの寒冷された空気が元に戻ることは無い。

 揺らされる髪下から覗く赤い目(ブラッドアイ)が合成獣の姿を写した。 瞬間。


「何処を見ている?」


 何時、どう移動したのか、葉月の姿は合成獣の目の前ではなく真後ろ、つまりこのホールの出口にあった。


「こっちだ、木偶」


 獣はその巨体振りを思わせないような俊敏さで後ろへ振り向くと、その少年が、口調は冷静に、しかし完全なる挑発を、合成獣にした。

 合成獣の知能はそこらへんの動物よりも高いが、さすがに言語を理解するような脳は持ち合わせていない。 しかし、今の葉月の言動を挑発と受け止めたのか、グルル……。 と三つの頭のそれぞれの口から低い声を呻らせている。 


「さぁ、来い」


 葉月がロングコートを翻して走り出し、ホールの出口を抜ける。 それを、まるで逃げる脱兎を追いかける獣王が如く、合成獣も、ドン! という凄まじいスタートダッシュをして追いかけていった。


こんばんわ~久澄望です!


今回は少しだけ、早く出来ましたかね?そう思えてもらえたら幸いですw


今回の変更点ですが、葉の年齢ですね。前回より10歳ほど歳を上げました。これもちょっとした物語変更が理由ですw


もう一つは、まぁ、葉月の行動ですね。前から思っていたことですが、この場で戦闘したばあい、少々の地の事情が色々と……になってしまうので、変更いたしましたw


今回はこんなところです。 さて、一応次で1話は終わらせる予定なのですが、なんか追加しそうで自分でもちょっと不明ですw

まぁ、頑張りますw


では、今回はこの辺で。

皆様の、感想、評価、アドバイスをお待ちしております!

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