第三:弱者の居場所 part2
とある校舎の一室。 その部屋は『執行部』専用の、彼らに与えられた『部室』である。
通常の教室よりも広いが、置いてあるのはその部屋のど真ん中にロの字になるよう配置された複数の机と、周りに置かれたほぼ同数の椅子。 あとは黒板、本棚、適当に置かれた感満載の観葉植物だけだ。
現在机の周りの椅子には4人の生徒が座っていて、各々が、自分の席の目の前に置かれた書類の山に目を通し、確認し、了承の印を押している。 内容は主に備品の要請とかだが、殆どは問題のあるものではないと解っているので、皆スムーズのこなしている。
それは、今年入学したばかりの斐川もそうであった。 彼も一応この書類に問題がないことを事前に教えてもらっているため。 いちいち確認するもなしに黙々と書類一枚一枚に判子を押している。
「そーいや久代先輩、聞きました? あの噂」
沈黙の空気の中、いきなりそう切り出したのは、斐川から見て左側の、黒板の前に位置する席に座っている鳶色の髪と目のを持つ生徒だった。 名前は安形静一。 中等部三年生。
うるさい人間ではないのだが、黙っていることが苦手な性格らしく、作業中に話を切り出すことが多い。 いまの切り出し方も、この沈黙の空気に耐え切れず思わず漏らしたという感じがあった。
「む? なんだ、噂とは?」
安形に話を振られて、男のような言葉遣いで聞き返した女生徒は、久代天音。 高等部一年生。
最近では見かけることが少なくなった黒色の髪をしていて、それをポニーテールにしている。 キリッと釣りあがった大きめの目も黒色をしており、すらっとした体格もさることながら、今では完璧に死語だが、大和撫子という言葉がぴったりと当てはまる印象を持つ。
聞き返された安形は、そのままハンコを押す作業をしながら続ける。
「この前の、新一年生の入学式の話ですよ。 暴走したキメラを、入学したて、それも魔法名をもらったばかりの生徒が仕留めたって話です」
安形のその話を聞いて「あぁ!」と判子を持ったままの拳で掌を打つ久代。 すぐにやってしまっとた気付いて慌ててハンカチで熱心に手を拭き始める。
この女先輩、しっかりした性格をしているのだが、妙に抜けていることが多い。 実はさっきから何回も左手ごと書類に判子をしており、左手はインクまみれだ。
「なにやってんすか……」
「なんでもないぞ。 で、その一年がどうしたんだ?」
呆れたようにため息混じらせながら言う安形に、拭き終わったハンカチを何事もなかったかのようにポケットにしまって必死に面作ろうとしながら返す彼女の行為に、斐川は内心で苦笑いした。 しかし、安形はそんなのはどうでも言いようにそのまま続ける。
「ありえないと思いませんか? 聞いたところ、その一年は入学時からLEVEL3っていう類まれなるタイプだったみたいですけど、それにしたって合成獣を倒せる実力があるとは思えないし……」
「ふむ……つまり、何かあると思うわけか?」
「ええ、普通に考えてありえませんからね。 まぁ合成獣がどういうものだったかってのにもよりますけど……奈鳥会長はどう思います?」
安形が話を振った相手は、向かいの席(斐川から見て右側の席)に座っている、長い深緑の髪をした長身の少年だった。
後ろの髪を適当な感じに結っていて、黒縁の眼鏡をかけている。 大きくもないが、小さくもないやや切れ長の目は、青みを帯びた灰色をしているのだが……いまその目は不機嫌そうに瞑られ、彼のこめかみはヒクヒクと動いている。
彼の名前は、赤峰奈鳥。 我らが執行部の会長である。 人柄もよく、事を計画的に、迅速に行える人間のため、生徒教師問わず人望も厚い……のだが、そんな彼にも一つの『アレ』が……
「……てめぇ、何度言ったら解んだ…………」
「あ、ヤバ……」
これから爆発しますと言わんばかりの押し殺した眼鏡の少年の声に安形がたじろぐ。 久代も危険を感じたのか、コソコソとその場から離れる。
斐川もそれが解ってその場を立ち去りたいのだが、いかんせん、斐川の席は窓側であり、逃げるならここから怪盗の如く窓からダイブしなければならない。 久代のほうにも行きたいがそれには赤峰か安形の席を通らなければならなくなる。
そして、赤峰の怒りも待ってはくれなかった。 椅子から立った彼の右手には現在、ソフトボールくらいの大きさの炎が。
「俺の事を名前で呼ぶんじゃねええええええええええええええええええええええ!!!!」
「あぶってうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」
メジャーリーガーもビビるんじゃないかというような速さで投げられたそれは、ギリギリのところで安形に避けられるものの、壁に当ると同時に爆発を起こし、彼をドアをぶち破る勢いで廊下へと放り出した。
斐川も巻き込んで。
「どぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおげごっ!!!!」
窓のほうに吹っ飛ばなかったのが幸いか、斐川は床を転がるだけで済んだ。 本棚に頭を打ったが。
「相も変わらずか、赤峰会長」
と、またまた何事もなかったかのように部室に再入場する久代。 普段はドジなくせに抜け目ない人間である。
赤峰は怒りが収まりきっていないのか、少々息を荒げながら答える。
「やかましい! まったく……全員が全員とは言わんが、俺を名前で呼ぶなと何度言ったら……ん? どうした斐川? そんなとこで思いっきり股を広げながらさかさまになって」
「アンタのせいなんですけど!!? 止めてくれます俺がそんなオープンな変態なんじゃないかって言う発言!!!」
ここまで言ってやっと気付いたのか、赤峰は「おぉ、そうか。 スマン」とあまり反省はしてないような謝罪を斐川にした。
もういちいち言うのも面倒なので、斐川は「もういいです」と、起き上がって、服についた埃を払いながら席に座りなおす。 同時に、髪は爆発、服はズタボロになった安形が部室に入ってくる。
「んで、あの一年生のことだったか?」
安形のことはどうでも良いのか、先ほどふられた話題を切り出す赤峰。 逆に安形のほうも、あまり気にしてないのか、そのまま着席し、「あぁ、はい」と、普通に返した。 ここに入った時から毎度思っていたが、ここの人間はあまりにも適応力が高すぎだと思う。
「まぁ、とにかくいろいろ矛盾が多くてですね……」
「ふむ……まぁ俺も少しは聞いている。 確かに、珍しいLEVEL3とはいえ、いきなり合成獣を倒せるほどの魔法が仕えるわけはない。 非常に気になるところだが……おい、お前はどう思う?」
赤峰は、斐川でもなく、久代でもなく、安形でもない、この場にいるとある一人に話を振った。
位置的には、久代の右隣、赤嶺からは最も近い距離の席に座って………………いや、突っ伏して寝ている男子生徒だった。
「………………」
「…………おい起きろ、神坂……」
寝ているその生徒に、赤峰はまた大爆発3秒前といわんばかりの怒りを押し殺した声でいう。 その声のどの部分に反応したかはわからないが、寝ていたその生徒はゆっくりと身を起こした。
彼の名は神坂明日真。 高等部一年生。 目が殆ど隠れるほど長い藍色の前髪が印象的な愛嬌のある少年で、一応、この執行部の副会長である。
「…………ふぇ? あ、起きてますよぉ。 あれですよねぃ? 第二繁華街地区のナックのポテトが明日から半額にな」
「オイテメコラボケ全然聞いてねぇじゃねぇか。 顔の下半分炭にすんぞテメェ」
「……冗談ですよぉ。 あれですよねぃ? 最近第三ターミナル前に建ったタツタの」
「神坂先輩、聞いてなかったなら素直に言ってください。 会長の怒りがオーバーどころかインフィニットしそうです」
目がもうヤクザどころかなにかの中毒患者のようになった赤峰を見た斐川が恐る恐る言う。 神坂はそんな斐川と赤峰を見比べてからフニャリと笑う。
「冗談だって~、斐川君、会長。 あれですよねぃ。 ……篠原葉月君のことですよねぃ?」
今までまだ寝続けているんじゃないかというくらいに細めていた目を少しずつ開けながら、話題の内容を言い当てる。 どうやら、本当に起きていたようだ。
この神坂明日真という人間。 普段かなりマイペースで、いつもヘラヘラしていて、すぐに人を食ったような態度をとる。 だが、悪意というものが全く見えないというかなんというか、彼に何をされても、「まぁ、神坂だからなぁ~」なんて勝手に終わらせ、許してしまいそうになる。
それは、先ほどまでマジギレしそうになっていた赤峰も実は例外ではなく、神坂がちゃんと話題を聞いていたことを知るとすぐに怒りが収まったようで、「ふんっ」と、乱暴な鼻息一つで済ましてしまった。
「あぁそうだ。 ったく……なんで話題一つ降るだけでこんなにもストレスを持たなきゃいけないんだよ」
「や~、すいませんねぃ」
「もういい。 で、もう一度聞くが……お前はどう思う? 篠原葉月について」
そうですねぃ。 と、考えていますと言わんばかりに下唇を軽くつまみ、そして数秒立てて結論を述べる。
「信憑性は怪しいですが、優秀な人材なら執行部に入れるのが得策じゃないですかねぃ?」
「ッ!!?」
軽く放たれたその言葉に、斐川の体が電気ショックでも受けたかのようにビクッと震えた。 誰も斐川のその様子には気付かなかったようで、赤峰はふむ……と言って自分でも気付いてもうないうちに彼に更なる追い討ちを仕掛ける。
「そうだな。 俺もそう思ってはいた。 そうだ。 斐川は……おっ!!?」
赤峰が斐川にも尋ねようとしたとき、斐川はガタッ! と勢いよく席を立ち、廊下の方へと駆け出した。 安形が「おい!」と制したが、まるで見えていないように、そのまま扉を勢いよく開け、そのまま廊下へと飛び出していってしまった。
斐川の行為に、久代は怪訝な顔をする。
「どうしたのだ……?」
「解りませんけど……俺、連れ戻しに行って来ます」
「いい。 止めておけ」
安形が樋川を追おうと席を立とうとするのを、赤峰が静かな声でそれを制した。 「なんでですか」と、納得いかない表情をする安形に、彼はまた静かな声で言う。
「いい機会だ。 今期の一年の力を見てみようじゃないか」
はい!と言うことで、またまたお久しぶりです!
第三のpart2ということで、書き足す前のやつには全くなかったものをつぎ込んだ話です!
そのせいで妙に長くなり、いつも以上に時間が掛かりました;
今回の内容について。
まず新キャラに触れましょう!
斐川に関しては、今は触れないでおきましょうw前のを読んだかたがたはある程度知ってるかもしれませんがw
え~ます、赤峰会長から行きましょう!
この赤峰会長、したの名前がDQNで、かなり苦労されている方ですw
前々から、DQNな名前は挑戦してみたくってwえ?皆そうだろ?あ、すいませーん。ちょっとスナイパーなかたいらっしゃいますか~?
ちなみに、赤峰です。時々赤嶺になっていたら、ちょっとご報告お願いしたいです;
次に、安形。
典型的な普通の男子も書いてみたくて彼を出したのですが……彼も彼なりに変ですねw適応力が高すぎてwもはや普通じゃないw
次に久代。
あまり女の子成分が少ないこの作品には貴重な女の子キャラですね!(問題発言w
クールでマイペースなのに、抜けたところが多い。逆もしかりと言うのを考えて書いてみたのですが、如何だったでしょうか?;
まぁ、今回は長いとは言え、結局はまだあまり表現し切れてないところも多いので、なんとも言いがたいものですがw
最後に、神坂。
多分、彼が一番キャラが濃いのかもw
最もマイペースで、掴みどころがない。もしかしたら、彼がこの作品のラスボス!?
なのかなぁ~……(オイ
さてwいつも以上にここも長くなってしまいました。本当にスイマセン;
そして、いつも読んでくださっている読者様!本当にいつもありがとうございます!
自分が知らないところで読んでくださる方々がいるって言うのを実感するのって、本当に嬉しいものですね!
では、今回はこの辺で!
皆様の、感想、評価、アドバイスを心からお待ちしております!