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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第84話

 ほんとうに、ほんとうに色々あった…とても長い夜だった。

 ボク達は一旦、時の神殿へと戻ったんだけれど…

 かなり神殿の方も被害が大きかったけど、時の神殿の従者(クロノ)さん達が最低限の修復をしてくれたので、みんなが休めるくらいのスペースはあった。

 午前中…ボク達はそれぞれの部屋で休み、午後になってようやく、全員が神殿の礼拝堂に集まる。

「…つまり、ミナっちはある程度…状況を知っていたのですね」

 セイガさんが呆れ半分でミナっちをみてる。

「うふふ‥どうにもベルクツェーンさんとメイちゃんとの主張が違っていたから~聞いてみたのよね~」

 ミナっちがボクの方を見ながら申し訳なさそうに説明してくれる。

 詳しく聞いたところ、ベルクとミナっちは古くからの付き合いで、ベルクがエルディアに戻るために以前からエルディアを探していたそうだ。

 今回ボク達を呼んだのはミナっちの判断だが、ベルクにも話をしていたのでアクシデントが起きた時のために大佐に依頼をしていたんだという。

 時を操る神なのだから…こうなってしまうのは予想していたのかもしれない。

「……そういうコトは事前にちゃんと言わないと……何処かの店主さんみたいになっちゃいますよ?」

 言外に(嫌われますよ?)というゆーちゃんの思いがこもっていた。

 店主というのは上野下野さんのことだろう…人を悪く言うことが殆どないゆーちゃんにしては珍しい物言いだけど、それはきっと茶目っ気というか…それだけ店主さんに心を許しているんだとボクは思った。

 それにしても…笑顔の消えたゆーちゃんは…とても怖い。

「ごめんなさい~」 

 ミナっちが素直に謝ってる。

「それとね、ベルクツェーンさんが気にしていたエルディアの事情については本当にあまり知らないの、ごめんなさいね~」

 元々は、ベルクがエルディアに戻る方法をミナっちに尋ねたんだ。

 ミナっちはこのワールドで活躍して、学園が認める七強程ともなれば特権というか学園の膨大なデータベースを活用できる。

 そうしたらエルディアに関しても手掛かりが得られるかもしれないし、ある程度場所が分かればミナっちの能力で特定することも可能だと聞いたのだ。

 だからベルクはあんなに地位や名声にこだわっていたのか…ボクもそれを聞いて胸の詰まりが落ちた気分になった。

「祟り神…というのもさっきはじめて聞いたわ」

「祟り神というのは人々に危害を加える神様の総称だよ…ベルクはずっと祟り神からボク達を守ってきてくれたんだ」

 そうだ…過去のエルディアでも見たけれど、ベルクは他の神と協力して何度も祟り神たちと戦ってきたんだ。

「最後にベルクの中から現れた影も…祟り神だったのだろうか?」

 セイガさんが疑問を口にする。

「わかんない…けれどアレは祟り神の本体ではないと思う…ボクは直接祟り神を見たことはないからあくまでカン…だけどね」

 それでも、ボクのカンは当たっている…そう思えた。

「ひとまず、これ以上はここで考えても仕方ないだろうな…ベルクの帰還を待つか、エルディアの場所を特定するか…その後に調べればいい話だ」

 大佐さんがすこし狭そうにしながらまとめてくれる。

 セイガさんを死ぬほど苦しめていると聞いた時はちょっと恨んだりしたけれど…実際話してみると、すごくいいヒト…竜人さんだ。

「そうですね~ それでは私はがんばってエルディアについて調べてみますね」

「俺達も…また過去に行った方がいいのですか?」

 セイガさんの問いに

「いいえ、データはある程度揃いましたので、あとは私だけでも大丈夫ですわ…うふふ♪」

 ミナっちがどこか楽しそうに振り返る。

 なんだろう…ちょっとだけ心配…なんだけど…だいじょうぶだよね?

「ふぁぁぁ、それじゃひとまず今日は解散にしましょうぜ…午前中寝たとはいえあちこちにダメージが残ってますから」

 ハリュウだ、確かにすごく眠そう…ただ、その意見にはボクも賛成だ。

 …ちゃんと考えたいこともあるし……

 何かあったらまた連絡するという話になり、その後ボク達はそれぞれ自由行動になった。

 ボクは、ゆーちゃんや皆に挨拶して、自分の部屋へと戻った。


「ねえ…マキさん?」

『お呼びですか?』

 部屋に戻って少しのんびりと、窓から遠くの山を見ていたんだけど…

 やはりマキさんには相談しておこうと思った。

「ボクはこれから…どうしたらいいと思う?」

『どう…とは今後の活動方針についてですね』

 流石マキさん、ボクが考えていることはお見通しだ。

「うん…セイガさんやみんなのお陰で、ベルクとのことは一応…解決した…よね」

『そうですな…真相は未だ不明ですが、ベルク殿が狂ってご両親らを殺害したわけではない事、それに皆が生き返る可能性がある事…もしそうならばとても喜ばしい話ですな』

 マキさんは自分のことのように、嬉しそうに浮遊している。

「うん…でも今のボクには何も出来ない…それどころか…このままセイガさん達に頼っていたら…迷惑を掛けちゃう気がするんだ」

 そう…それが一番の悩み……

『セイガ殿をはじめ、みな迷惑だなんて思わないでしょう』

「うん、みんな優しいから…そんな風には思わないって…分かってる」

 けれど…それじゃあイヤなんだ。

 ボクは…セイガさんにこれ以上…迷惑を掛けたくない。

「怖いんだ…ボクのせいで…誰かが……セイガさんが悲しむようなこと…そんなのボクには耐えられないよっ」

 一緒に居たのは少しの時間だけども分かる、セイガさんにはきっとこれからも大きな出来事が舞い込んでくるだろう。

 ヤミちゃんとホムラちゃん、ベルク…大佐さん…とても強大なものたちは皆セイガさんに惹き付けられている。

 それなのに、ボクの事情ばかりを押し付けるなんて…イヤだ。

 そしてボクは…そんな時、とても無力だ。

『少し離れて…みるのも良いかもしれませんな…勿論エルディアの件で進展があった時にはまた助力頂く可能性がありますが…』

「うん」

『ベルク殿が無事に回復すれば…あの方だけでも問題無いかも知れません』

「うん…そうだね」

『どうでしょう? 一度月山亭に帰ってみては如何ですか?』

 月山亭というのはボクが一時期お世話になった親父さんと女将さんがふたりで営んでいる食堂だ。

「そうだね…ふたりにも直接報告…したいな」

『時が来れば…メイ殿の心も癒されると…某は思いますよ』

「……うん」

 マキさんは優しい、ボクが欲しかった言葉をくれる。

 ボクがそう思っていた時、不意にドアがノックされた。

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