表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
77/88

第76話

 月のない空に、流れ星がひとつ…

 理由は知らないが、新月の夜は他のリージョン…遠くの惑星や星たちもいつもより光を見せないので…とても暗い。

「セイガ達……大丈夫…だよね?」

 そんな夜空を見上げながら、ユメカが願いを込め囁いた。

 禁域が発生してから1時間ほど、夜はまだ冷えるが、ユメカもハリュウもこの場所から離れられないでいる。

「勿論だ、セイガ達が簡単に負ける筈がねえ」

 ハリュウはいつも通り、のつもりでいたが…駄目だった。

(また…大事な時にオレは何もできないのかよっ!)

 ユメカがいなければおそらく大声で叫んでいただろう…今はユメカに心配を掛けまいとガマンしているのが精一杯だった。

「何かあったら俺が教えてやるから…ふたりは休んだ方がいいぞ?」

 禁域の中心を見据えるように見上げる大佐がいつもの調子で話す。

「イヤです 私はここでずっと待っているコトも…きっとセイガ達の力になるって…信じてますから!」

 涙が落ちないように、堪えながらユメカが宣言する。

 ハリュウも同様なのだろう、無言で闇空を見ていた。

「めーちゃん…あんな…どうして神様はあんなにヒドいコトをするんですかっ?」

 八つ当たりだってわかっている、でもユメカは聞かずにはいられなかった。

「そうですね…」

 ユメカの視線の先、時紡ぐ聖名は優しく…でも少し寂しそうな表情

「神は残酷です…何故なら……真の意味では人を救うことが出来ないのですから」

「それってどういう意味ですか?」

 神は人を救ってはくれないのか?

 そんな疑問がユメカの頭を支配する。

「そういう意味ではないですよ? 私が言いたいのは…その人を救えるのはおそらくその人自身だけだということです、それ以外の存在は力になったり寄り添うことは出来ても…救うことはできないのですよ」

 ユメカの心を読んだような…そんなミナっちの言葉だった。

「神などと偉ぶってみても…なまじ多くの人々を知っている分…神も自分の無力を嘆くのかもしれません…あ、これは私の感想ですけどね」

 神を恨んで死ぬ人々をきっとずっと見てきたのだろう。

「ちなみに、無理矢理記憶や性格を変えて問題を解決する方法も神にはありますが、それは流石に救うなんて感覚ではないですよね」

 指を立てながらお茶目にミナっちがウインクする。

「ははは」

 つられてユメカも笑ってしまった。

「まあ、ベルクには奴なりの考えとか信条があるのだろうな…」

「あの(かた)…不器用ですからねぇ」

 同じ七強だからか、大佐もミナっちもかなりベルクのことを知っているようだった。

「さっさと決着つけて…全部解決しましょうよ」

 挑むように、ハリュウが右手を突き上げる。

「セイガならやってくれる俺もそう信じているよ」

 大佐がそう言うと、少しだけ期待が持てる…ユメカはそんな気がした。

「それじゃあ…やっぱり私達もここで待って…祈るしかないですよね」

「流石ユメカさん、オレも…焦らずに待つとしますか」

 振り上げた拳をハリュウが収める、そんな仕草を見て、残りの3人は軽く笑った。

(セイガ…めーちゃん…早く、無事に帰ってきてね)

 4人は、それぞれの想いを乗せ、ただ祈る。

 長い夜はまだ…続くようだった。 


  

 怖い

 セイガの心に再び恐怖の足枷が巻き付いた。

 ベルクは…殺そうと思えば簡単に、マキさんを消し去ったように自分を殺すだろう……

 この禁域で、死んだら…誰かが生き返らせてくれるのだろうか?

 セイガの迷いは、そのまま体にも出ていた。

【もうひとり 邪魔者がいましたね】

 ベルクがこちらを向く、びくりと体が震えてしまう。

「ベルク!」

 メイだ、ごしごしと目を袖で拭ってから、ベルクへと弓矢を向ける。

「ボクはもう泣かない! いつまでも泣いてたら…ユウノ姉もマキさんも…きっと悲しむもん」

 まだ、力は備わってはいないけれど…メイのその心は…とても強かった。

【人の子よ 待っていてください すぐに邪魔者は排除しますからね】

 やはり、ベルクはメイと戦う気が無いようだった。

 寧ろセイガとマキさんを、メイを(たぶら)かした悪だと思っている節が見て取れる。

 セイガは感じていた。

 今のベルクは…どこかこれまでのベルクとは違う…

「ベルク…なんかおかしいよ?何があったんだよぅ!」

 メイも違和感に気付いたのか、悲しそうに叫ぶ。

【***は変わりませんよ 変わってしまったのは人の子の方です】

 何処か曇った目で、ベルクはハッキリと言った。

「メイは変わってなんかいない…俺は」

【煩い 黙りなさい邪魔者 殺しますよ】

 悪意を持った瞳でベルクがセイガを睨む、それだけでセイガは苦しくなった。

 一歩前へ…進まなければ!

「俺は…」

 その時、セイガの脳裏にユメカの声が響いた気がした。

「…ゆーちゃん?」

 ユメカも聞こえたのか、ビックリしている。

【馬鹿な 外部から禁域に声が届く筈はありません】

 確かにそうだろう、実際のところ何を言っているのかも分からなかった。

 ユメカにもそんな力は無いだろう…

 けれども

「絶対にユメカの祈りだった!」

「うん、ゆーちゃんなら絶対心配してるはずだもん!」

 今ならば。踏み出せる。

 セイガは再び盾剣を構えると、ベルクへと斬りかかった。

【無駄です 雪崩(ラヴィーネ)

 ベルクを中心に円状に雪崩が発生する。

 これではメイも巻き込まれてしまう、セイガが動く前にベルクも自分の失態に気付いたのか急いでメイのいる方向だけ流れを止める。

 だが、それが隙となった。

「いけぇ! ヴァニシング・ストライク!!」 

 雪崩を飛び越えたセイガが上空から一気に赤い流星となってベルクを突き刺した。

 衝突してからも勢いを止めず、黒き重力の流れも強め、地面…禁域の白雲を破壊するほどの勢いで突進を続けた。

「おおおおおおおお!」

 光を出していない、ベルクには効いている!

(リヒト)!】

 ベルクが渾身の光を込め、拳を大きく振りかぶる。

 その刹那

発槍(はっそう)!」

 カウンターでセイガの眼前に赤い大きなエネルギーの槍が出現して、光ごとベルクを貫いた。

 この技は極壁、究羅と同じ達人のもので究羅で貯めたエネルギー全てを槍に変え、どんなものでも貫くことができる。

 セイガはこの一瞬を狙っていたのだ。

 ベルクが大きく後方へと押し出される、しかし貫かれたはずの腹部は治癒されており、血の跡すら残っていない。

 絶対の防御に無限の再生力…ベルクを倒すことは果たして可能なのだろうか?

【無駄です 禁域で***に勝利できる者は いません】

 ベルクの接近、そして光拳による乱打。

 タイミングを合わせるのは不可能だと判断したセイガは極壁を連続展開する。

「セイガさん!」

 メイの御業、天雷破天がベルクに直撃するが、今回はベルクも冷静に右手を振り上げ防ぐ。

 その間にもベルクの光は止まず、セイガの力がどんどん削られていく。

 究羅で貯めていた分は先程の発槍で使い切ってしまったので、今はセイガ自身の力で極壁を維持しなければいけないのだ。

「うおおおお!」

 このままだと…体力が尽きる。

 セイガは極壁を解除する…

 みしり、ベルクの拳がセイガの顔面にまともに入り、セイガは10mほど体を捻らせながら飛ばされてしまった。

【自ら防御を捨てるとは 愚かですね】

 しかし、ベルクはその時気付いた、自分の脇腹に盾剣による斬撃の跡が残っているということを…

【まさか】

「…ああ、お陰で間合いも取れたし、お前の力を吸い取ることができたよ」

 セイガが笑いながら立ち上がる。

 あの斬撃は攻撃では無い、ベルクの体に盾剣…つまり究羅を浴びせることによりベルク自身の力を吸収したのだ。

 ダメージ覚悟で猛攻を防ぎつつ、極壁を張るためのエネルギーも確保

 痛みと恐怖さえ構わなければ、寧ろセイガの方に利のある攻防だった。

 これも大佐との特別訓練で得た、セイガの戦法…

「俺は…この程度では……死にはしない!」

 口の中に溜まっていた血を吐き捨てながら再びセイガが盾剣を構える。

 とんでもない消耗戦ではあり、絶望的な状況ではあるが…

 戦いはまだまだ長くなりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ