表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
76/88

第75話

ベルクの光を宿した拳が繰り出される。

 攻防一体の絶対的な一撃…セイガはそれをShield(シールド) Sword(スォード)で防ごうとする。

 この剣はその名前の通り、攻撃を防ぐための盾のように構えて使うことができる一部円形で広い形状をしている。

 持ち手も柄の下だけではなく刃のない方の剣身にも取り付けてあり、取り回しも盾に近いのである。

 しかし、物理的な防御では光は防げない。

「極壁!」

 セイガが叫ぶと同時に盾剣が白く輝く!

 同時にセイガの前方に白い防護壁が現れた。

【馬鹿な】

 ガキンと金属同士がぶつかるような大きな破裂音が響く、勢いでやや後ずさったが、セイガはなんとかベルクの拳を防いでいた。

「セイガさん!」

『何と! これが修行の成果ですな!』

 セイガは後ろに飛び去り、一気に間合いを開ける。

(どうにか…防げたか)

 極壁はセイガの全身を守る絶対系の壁だが、消耗がとても大きく長い時間は使用できない。

 タイミングを合わせて、一瞬だけ使う方向でいかないといけない。

 まずは、自分も絶対系の技が…光に対処できる技があることをベルクに認識させなければならない、それはクリアした。

「メイ! ベルクが隙を見せそうになったら援護を頼む!」

「うん!わかったよ」

『承知しました』

 離れた場所のメイとマキさんが攻撃の準備を始める。

 どうやら現状、ベルクはメイを攻撃しそうにないから…これは上手く行くはずだ。

【小賢しいですね】

 ベルクが右手を大きく振り上げる。

「セイガさん気を付けて! 大きいのが来るよ!」

 メイの言う通りだろう、セイガはいつでも動けるようにステップを踏む。

【切り刻まれなさい 突風(ヴィントシュトース)

 ベルクを中心に生まれた青く鋭い風がセイガを突き刺さんと一度に押し寄せてくる…広範囲なため躱すのは難しい…ならば

究羅(きゅうら)!」

 セイガが唱えると、盾剣の前方からセイガを守るように青い網状のものが現れ

『何と!ベルク殿の力を吸収しておりますぞ』

 ベルクの突風は網に絡め捕られるように消失した。

「そうなの?スゴイやセイガさん♪」

 絶対系の光を防ぐ極壁と、それ以外の攻撃を吸収して極壁のエネルギー源にできる究羅、このふたつを使い分けてベルクの猛攻を防ぐ…それがセイガの考えたベルクへの対策だった。

 立て続けに攻撃が防がれ、ベルクは悔しそうだ…しかしセイガは知っていた。

 ベルクはエルディアで何度も敵と戦い、打ち破ってきた歴戦の勇士だ。

 この程度ではまだ届かない。

【ふむ】

 ベルクがつまらなそうな声を上げる。

 その直後、セイガのすぐ手前にベルクが現れ、強烈な光のアッパーを繰り出した。

「極壁!」

 ベルクは攻撃も速い、それには前に充分苦しめられたので、どうにかギリギリで極壁を出せたが、勢いは殺せず、セイガは大空へと舞い上がった。

「セイガさん!」

崩落(ツザンメンブルッフ)

「…!」

 セイガの頭上に大きさ10m程の巨石が出現、そのまま勢いよく落ちてきた。

「究羅!!」

 セイガは巨石にぶつかる寸前でそれを包む、急激に小さくなっていく岩だがセイガも落下を防げない。

雪崩(ラヴィーネ)

 セイガを飲み込む広大な雪の波が地上では待っていた。

 しかし

【まさか】

 白い光の矢、メイのSchießen(シィースン)がベルクの脇腹を貫いていた。

 上空に飛ばされた時に、セイガは合図を送っていた…だからメイはセイガを信じて全力で攻撃したのだ。

 完全にセイガの方に気が回っていたため、ベルクはそんなメイの行動に気付いてなかった。

『セイガ殿~!』

 マキさんが風を巻き上げてセイガのいると思われる場所を除雪する。

 そこには、究羅で身を守ってダメージは軽微なセイガが体を丸めていた。

「ありがとう…助かったよ」

『良かったです~それに見てくだされ、メイ殿がベルク殿に文字通り一矢報いりましたぞ♪』

 メイも信じられなかった、まさか自分の攻撃がベルクに届くなんて…ずっと願っていながらもどこか遠くのもののように感じていたのだ。

「あはは…ボク……やったんだ」

 そんなメイにベルクは…

【どうやら 邪魔をするならば消さねばならないようですね】

 メイへと向かって歩き出した。

「まずい!」

 ベルクはメイを攻撃しない、そう考えていたセイガだったが…それが破られてしまえば…大変なことになる。

 高速剣で一気に移動してベルクを捉える。

 ここは…

(リヒト)

「極壁!」

 攻撃に転じたかったが、やはり光の拳が来たのでセイガは極壁で防ぐので手一杯だった。

 弾かれるセイガ、メイへと距離を詰めるベルク…

「あ…あ……」

 メイも逃げたかったが、自分へと向かうベルクの気迫に動くこともできなかった。

【終わりです】

 セイガやハリュウならともかく、メイでは光の拳をまともに喰らえば…それで終わりだろう。

 メイは、最後まで諦めない…それだけはやめないつもりだった。

 もう、後悔はしない…そう、決めたから…

『メイ殿~!』

 その時、マキさんが氷を纏い回転しながらベルクへと突っ込んできた。

 マキさんの得意技、爆巻氷円撃である。

 しかし、それこそベルクの狙いだった。

【捕まえましたよ 邪魔者の付喪神】

 ベルクは回転するマキさんをあっさりと捕まえると…

【砕け散りなさい 光】

 両手でボキりとマキさんを破壊する、しかも光を込めていたので破裂するように巻物は粉々になってしまった。

 最初から、ベルクはマキさんから消すつもりでメイへと近付いたのだった。

「マキ…さん…嘘でしょ?」

 へなへなと座り込むメイ

「いつもみたいに……実はひょっこり生きていましたとか…そういうのでしょ? ねえ!マキさん!!」

『メイ…殿…』

「マキさんっ…やっぱり!」

 しかし、巻物の姿は無い…

『すいません…某はここ…までのようです…』

「やだ、変なこと言わないでよ」

 セイガがようやくメイの下へと辿り着く、ベルクも流石にここで追い打ちはしなかった。 

『今まで…ありがとう…ございました…』

「やだやだ!聞きたくないよ!」

『某はもう…力になれませんが…どうか……』

 マキさんの声も次第に聞こえなくなってきた…

「マキ…さん…」

『御武運を…』

 それを最後に、禁域からマキさんの気配が消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ