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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第72話

 とても暗い…まるで目を瞑っているような光景。

 セイガ達は時の神殿に戻っていた。

 セイガが額窓を開いてみると、日付が変わったばかりのようだ…つまり16時間ほどは経過しているのだろう。

「おかえりなさいませ~♪」

 真っ暗だった空間が徐々に白く輝いていき、門から出てきたセイガ達を出迎えるようにミナっちが手を振っている。

 そう背後には幾つもの黒い光体、従者(クロノ)が付き従っている。

「ただいま~…ってもう真夜中かよ」

 ハリュウも時間に気付いたのかいたく驚いている。

「あんなに時間がたったのに、おなかも空いてないし眠くも疲れてもいないのって不思議だね~」

 おなかを擦りながらメイ、

「ふふ、でもなんだろ…変な疲労感というか…寝ようと思えばすぐ眠れると思う」

 ユメカの言う通りだった、セイガとしては無理矢理回復したあとの…あの感覚に似ている気がした。

「今日はこれで終わり…ですか?」

「そうですね~ 明日続きをするかはまた皆さんの体調を見てからになりますが、お陰でだいぶエルディアの時間軸が分かってきました~うふふふ~」

 ミナっちはそう言うが、食事も睡眠も必要としていない今の状況はキツネにつままれたような…

「それじゃあ、ひとまず解散して休むか」

 大きな欠伸をしつつ、ハリュウが提案する、過去の世界では一番暇そうにしていたが‥その間も眠かったのかもしれない。

「そだね、それじゃあ…また明日 ふふ♪」

 ユメカが一番に手を振り神殿をあとにする、それから皆一緒に神殿を出ていくが…メイの手を引く者がいた。

「ユウノ姉?」

 ユウノは、何か思い詰めたような、硬い表情だった。

「メイ…聞いて欲しいの……」

 ユウノは神殿と神殿の間、木々が茂る庭園にメイを連れていく。

「…うん、なに?」

 月明かりのない…今宵は新月…メイもようやく目が闇に慣れつつあるが、それでもユウノの表情は見えない。

「私ね…これからセイガさんに告白…しようと思うの」

「告白って…あの告白?……ええっ!?」

 衝撃だった、ユウノの想いは気付いてはいたが、こんな急に言われるなんて思わなかったのだ。

「私…過去に行って分かったの、やっぱりセイガさんを愛していると…この熱く焦がれる想いは今すぐ伝えないといけないと!」

 確かに、ユウノの言葉には熱がこもっていた。

 でも、何か妙だとメイは感じた。

「でも…どうして今なの?明日も過去のエルディアに行くだろうし、もっといい時間があると」

「今夜じゃないとダメなの!」

 昏い…熱に浮かされたような言葉だった。

「ユウノ姉?」

「ごめんなさい…今…告白しないと…きっと後悔すると思うの」

 ようやくメイの目も周りを見えるようになっていた。

 ユウノの瞳が揺れている…何か思い詰めた表情、それはメイを驚かせてしまったことを悟ると…少しだけ柔らかくなった。

「怖がらせてごめんね……メイにはちゃんと言いたかったの…私…これからセイガさんに自分の気持ちを伝えます」

 ユウノの決意は固いのだろう、メイは

「…わかったよ…うまく…いくといいね」

 そう思ってはいるけれど、嘘をついているような気分だった。

「ありがとう…それでは…メイはゆっくり休んでね」

 そう気遣うユウノは、いつものユウノに戻ったように…メイには見えた。

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