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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第5話

「ホラ、前にレイミアさんのライブに行った後、ワールドもひとつじゃないって、帰ったらその説明をするって言ったでしょ?」

 ユメカはそう言うと窓辺に立ってある方を指さす。

 そこには月のような青い球体のひとつが遙か遠くに見えた。

「このワールドはね、私達が立っている『ここ』だけに人がいるわけじゃなくてね…全部で七つ、人の住む星があるの、アレもそう☆」

 セイガも遠くの星をみつめる、あそこにも…人が住んでいる?

「それぞれの星をリージョンと呼んでいて、ここは第4リージョンに当たるのです、この学園の名前、『4ー17地区』の『4』は第4リージョン、『17』はその17か所目という意味です」

 学園長が補足してくれる。

「『学園』もひとつじゃないのですね」

「『学園』という組織はこの第4リージョンが中心ですが、他のリージョンにもネットワークがあります、更にこの第4リージョンだけでも20か所に学園と学園長が存在します。だからわたくしが全『学園』の代表…ではないのです」

「ま、そういうわけだからせめて全リージョンと『学園』全てで調整が決まるまではこちらの提案に乗って欲しいって訳だ」

 大佐が声を上げる、その巨体から発せられる声は全員を震わせた。

「端的に言えば、セイガを矢面に立たせることによってユメカさんの存在を守るっていう算段…じゃな」

「どういうことですか?」

 ルーシアは首をかしげながら上野下野に聞く。

 上野下野の目の前に金色に光る幅50cmほどの板状のものが浮かんだ。

 これは『額窓(ステータス)』、ワールドにいるほぼ全ての者がもつ情報端末である。

 色や大きさは設定で変えることが可能なので、そこに個性が現れる。

「額窓に表示されるものは公開範囲がある程度存在するが基本的に全ての額窓で共有が可能なんじゃ、だからちょっと調べればスターブレイカー事件も、『スターブレイカー』聖河・ラムルの名前もある程度分かるんじゃよ」

 その通り、上野下野の額窓には両者の公式情報が明記されていた。

「…本来スターブレイカー事件の方はまだ学園の重要権限保持者にしか閲覧できない筈なのですが…」

 学園長が今日初めてだろう、驚いた表情をする。

「ほっほっほっ、蛇の道は蛇というてな…そして、そもそもセイガの情報の方は簡単なセキュリティしか掛かってないからこのリージョンの多くの人間が既に称号のことを知ってる筈じゃ」

「え?そうなんですか?」

 セイガには初耳だった。

「この前の事件、事情を知らない人はそりゃみんな気になるじゃろ、そうするとまずは額窓で調べるわなぁ…学園が秘匿してるんで事件の全容は分からないが、聖河・ラムルなる人間がおそらく関係者だというのは称号から分かっちまうんじゃ」

「それでスターブレイカー事件という名前が先に噂から広まってしまったの、もう少し早く対応できれば良かったのだけれど…」

 学園長が眼鏡を直しながら嘆息する、キナさんが横から

「セイガさんはあんまりその辺の情報とかは見ない方がイイと思う」

 と助言した。

「知らない人からのメッセージは全てシャットしてるから自分で見ない限りは大丈夫だったんだよね」

 実は、そうなることが予想できたユメカが前もってセイガの額窓を外部からの脅威から守っていたのだ。

 とはいえ、称号については残念ながら完全に秘匿することは出来ない。

 まさか自分の知らない所で自分の名前と称号が話題になっていたとは…

 セイガは驚くばかりだった。

「だからの、それを逆手にとってスターブレイカー事件もセイガが中心のこちらに都合のいい情報を流そうって話なんじゃよ、これなら当分ユメカさんに危害が及ぶ可能性は低いからのぅ」

「なるほどです」

 ルーシアも納得したところで、学園長が話を進める。

「このリージョンでの対策はそんなところですね。ところが他のリージョンの情報は流石に簡単には調べられないの…そのため現在ここを除く全てのリージョンから今回の事件についての問い合わせが学園に殺到しています。それらの公表のために聖河さん…改めてお願いします、あなたの情報を開示してよいでしょうか?」

 セイガの心は決まっていた。

「はい、それでユメカの身が守れるのなら…構いません」

「ありがとう…当分は色々面倒もあるでしょうけど、学園としても出来るだけカバーします」

「それで最初の話に戻るわけだな」

 エンデルクだ。

「真実は学園内及び他リージョンとの協議、調整が終わるまで明かすわけには行かない…だから我等には口止めが必要」

「言い方…」

 テヌートがツッコむ。

「どうせただ『頼む』なんて簡単な話ではないのだろう?」

「ええそうね…強制力のある方法を取らせて貰います」

 ふと、学園長の瞳が曇った。

「構わないさ、我も同じ立場ならそうする」

「ええと…それって?」

 不安そうなユメカ

「ある方にそれは頼んでおります」

 その時、それを待っていたかのように学園長室のドアが開いた。

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