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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第51話

 テレポートパス、これはデズモスで開発された高度で特殊なテレポートの為のデバイスである。

 額窓に組み込むことによって、かなり汎用的な利用が可能だ。

 昼食のあと、セイガ達はそれぞれのテレポートパスを使ってデズモスの地下基地(ホーム)へと到着した。

「お~~、久しぶりの我が家って感じだぜ♪」

 両手を広げ、伸びをしながらハリュウが振り返る。

 まだ、使用回数が少ないセイガとユメカにとってはまだ不思議な感覚があった。

 前回は建屋の外、滑走路に出現していたが、今回はどこかの部屋の中…

「ここはオレの部屋、あんまりジロジロと見ないでくれよ?」

 簡素な造りの4m四方ほどの部屋、棚には飛行機の模型や古い本、工具などが並んでいる。

 天井の壁にはなんというかセクシーな姿の女性のポスターが張ってあったが、そこはセイガもユメカも触れないようにした。

 そして待っていたかのようにドアが鳴る。

「入りますよ」

 そこには術次長のサラが制服姿で立っていた。

「主役、破竜・Z・K・エクレール…帰還しました!」

 姿勢を正してハリュウが報告する、が

「報告が遅い! 本来18時間前が帰還予定時刻ですよ」

 サラの視線が痛い。

「スイマセン!セイガの奴がひとり寝は淋しいというので一緒にいてやりました」

「ぷふっ!」

 ユメカが吹き出す、しかしサラには通用しなかった。

「言い訳は許しません、時間もありませんので先ず、セイガさんと主役は大佐の下へ、ユメカさんはあたしと例の調査の為、救護室へ行きます…ほら急いで」

『はい、術次長!』

 つい、3人とも敬礼し…そのまま急ぐサラの勢いのまま、部屋を出た。


 ユメカと別れ、セイガとハリュウが次に来たのは大佐のいる場所、地下基地の特別訓練室だった。

 部屋といっても、目の前の大佐が悠々と立ち振舞えるくらいの広さを誇っている。

 四方の壁と床、天井は灰色の何かの物質で構成されており、一見すると非常に無機質な印象だが、この部屋に入ってから、セイガはずっと温かい光を浴びているような雰囲気を感じていた。

「よう、遅かったじゃないか」

「主役、破竜・Z・K・エクレール、只今帰還しました!」

 ハリュウは敬礼し

「遅れてすいません、大佐、今日からよろしくお願いします!」

 セイガが頭を下げた。

「はははっ、まあ俺の方は細かくは時間を決めてなかったから気にするな、その様子だと術次長にこってり絞られたな」

 大佐は豪快に笑うとどすんと床に腰を下ろした。

「まずは訓練…といってもいいが、状況も知りたいのでな、アルランカで何があったかそれぞれ教えてくれ」

『はい!』

 セイガとハリュウはアルランカでの一連の出来事、特に大レースでの自分たちの作戦や…それでも遠く及ばなかったベルクの強さ等を話した。

「なるほどな、セイガ…ベルクと一対一で戦った時…どう思った?」

 大佐の問いに、セイガは数秒考える。

「…神、というものに挑むのは初めてでした、その存在感はヤミホムラとも大佐とも違って…驚きました、今思えば絶対系の力も感じていたのかも知れません」

 ただ強いのとは違う、異質で隔絶した存在…それがベルクの印象だ。

「怖かったか?」

「…いえ、とても強い、今の自分には届かないかもとは思いましたが、不思議と怖くは無かったです」

 ハッキリと告げる、横のハリュウは少し驚いた風だった。

主役(ハリュウ)はどう感じた?」

「大佐…オレは正直怖かった…あと悔しかった……どんなに策を弄しても結局勝てなかった…あの時、諦めてはいなかったけれど、どこか冷静に分析している自分がいました」

 思い出したのだろう、ハリュウは俯いて拳を強く結んだ。

「それじゃあ改めて聞く、お前達はまだベルクと戦うつもりか?」

 それはふたりの覚悟を量る為の確認だった。

「…はい」

「……やりなおすって決めたんすよ」

 ふたりの目は本気だ。

「お前達の気持ちは分かった…だがそのせいでお前たち自身を含めて誰かが犠牲になるかもしれない……それでもいいんだな?」  

 厳しい言葉、自己責任とはそういうことだ。

 そう大佐の眼が告げていた。

「誰かを犠牲にするのも、自分が死ぬのも望んでいません…けど」

 セイガの言葉にはまだ迷いがあった。

「けど?」

「……俺は全力で戦うだけです」

 沈黙、ハリュウも同じように思っているのだろう、声を上げることは無かった。

「あ~、説教臭いのは性分なのでな、折角だから今からお前達に『あの時』の話でもしてやろうか」

『あの時?』

 大佐が天を仰ぐ。

『俺がこの星の裏側まで行った時の話を……な』

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