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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第50話

 3人は学園の近くにある、港町ファルネーゼの大衆食堂オリゾンテでお昼にすることにした。

 学園内でテレポートパスを使うと、ちょっとした問題になるからなのと、単純にオリゾンテでマスターの料理が食べたかったからというのがその理由だ。

「セイガも、車の運転がだいぶ上手になったね♪…ふふ」

 オリゾンテまではセイガの運転だった。

 大レースのために買った青い軍用車3台、うち1台は大破してしまったが、残りはレストアして、セイガとメイがそれぞれ所有していたりする。

「それなら良かった、俺は自力で走るのも好きだけれど…車だと道中も話とかがしやすいのは利点だと思ったよ」

「こいつは本当に要領がいいというか、覚えるのが早いよな」

 照れるセイガの肩をハリュウが軽く叩く、3人はオリゾンテの2階、海の見える部屋にいた…今日も晴れて潮風が心身を癒す。

「うふふ、そうだよね…自転車も見ただけで乗り熟していたし…なんだか懐かしいなぁ」

 以前、この港町から自転車にふたりで乗って帰ったのをユメカは思い出す。

 まだ2か月も経ってないけれど、色々なことがあったし関係も変化した。

「おまたせしました♪ スパゲティのセットです」

 タイミングよくウェイトレスが現れ、セイガの前に料理を運ぶ、ミートソースのスパゲティととろけるチーズをかけたポテト、それからサラダが並べられる。

「ここはパスタも絶品だからね♪」

「ありがとうございます、マスターもきっと喜びますよ」

 ウェイトレスは自分が褒められたかの如く喜ぶ。

 続いてウェイターがユメカの頼んだラザニアとハリュウの頼んだ大きなピザを運んでくる。

「以上となります、それではごゆっくりお食事の時間をお楽しみください」

 給仕ふたりが綺麗に並び去って行く。

「それでは…」

『いただきます♪』

 …

「ああ、このすぱげてーも、凄く美味しいなぁ」

 丁度良い甘さで仕上げた挽肉のソースがパスタを包み込み、噛むたびに口の中で幸せが溢れる。

「ラザニアもモチモチ濃厚で…最高☆」

 ユメカもうっとりしながらもぐもぐと食べ続ける。

 因みにハリュウは凄い勢いでピザを平らげていった。

 …

「これだったら…めーちゃんたちも誘えば良かったかなぁ」

 食事を終え、まったりとした雰囲気の中、ユメカが独り言ちた。

 確かに、美味しいものを心ゆくまで食べれば、きっと幸せな気分になれるだろう。

「それだったら、今度メイとユウノさんの歓迎会を兼ねてここでみんなで集まったらいいのではないかな?」

 セイガは、とてもいい案だと口にしてから改めて思った。

「イイね♪ 折角だからみんなも呼んで賑やかにしたいね、うふふっ♪」

「おや、なんだか面白そうな話が聞こえるじゃあないか♪」

 いつの間にか、ドアの前に白い調理服を着こんだ、闊達そうな女性が立っている。

 日焼けした顔が好奇心旺盛そうな瞳を際立たせる、スタイルは抜群なのにどこか少女のようなあどけなさも残すこの女性こそがオリゾンテのマスター、リチアだ。

「えへへ、リチアさん、ご無沙汰してます~」

「ホントそうだよ、アタイを残して大レースとか神に挑むとかまた相変わらず無茶してたんだってね…レイチェルから聞いたよ?」

「あ、…はは、話すのが遅れてすいません」

 アルランカ行きは急な話だったので、リチアには話していなかった。

 そもそも多忙な人なので、あまり気を遣わせたくなかったのもあるが…少々失礼だったとセイガは反省する。

「逐一報告しろとは言わないけどさ、随分水臭いじゃあないか」

「ちなみに、後で話を聞いたマスターは一日ふてくされてましたよ」

 ドアがちらりと開いて、ウェイトレスがぽろりとこぼす。

 そしてすぐさまドアは閉じられた。

「コラっ!オルタナ…お前なぁ」

 照れ笑いをしながらリチアがドアを睨む、どうやら盗み聞きされていたようだ。

「ははは、面白いお店ですね…ところでリチアさんは独身ですか?」

 キラキラした目をリチアに向けるハリュウ、相変わらずである。

「アンタはどう思う?」

 瞳を向ける

「リチアさん程の美人を放っておく男はいない…けれども貴女は誰のものにもならない…きっとそんな人だ」

 ハリュウも真っすぐに見つめ返す。

「はん、気障すぎるから減点だね、まあ特定の相手がいないのは事実さ」

「やったぁ♪」

「もう…なにが『やったぁ』なんだか……」

 ユメカは呆れ顔だが、そんな遣り取りを興味深くセイガは見ていた。

「それはさておき、うちでパーティーをやりたいってかい? それなら大歓迎だよ…噂の神に挑むっていう姉妹にも会いたいからさ♪」

「助かります」

 一同を代表してセイガが頭を下げる。

 それから各自の予定を聞いて、歓迎会の話を詰めていき、数日後にパーティーは開催される運びとなった。

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