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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第40話

 ゴールまで残り10数kmあたり、アルザスとグラシオンは激しい戦闘をなおも続けていた。

 結局クレストは距離を稼ぐ作戦に出たのだ、ゴールが近付けば他の参加者も増えて、状況が混乱する…それをクレストは狙っていた。

『さあ!どうやらまずは第2位の紋章、クレスト選手がゴールに辿り着きそうだ』

『アルザスも相変わらず喰らいついておるの♪人の身で騎装兵機と真っ向勝負などクレストの世界では考えられなかったじゃろうな』

『そうですね、高機動ゴーレム戦で魅せた華麗な攻撃もアルザス選手の前ではどうにも発揮しきれず不満といったところでしょう!』

 そんな中、ランスからのビームがアルザス目掛けて放たれる。

 アルザスはそれをものともせずにグラシオンへと辿り着く。

 その豪快な戦闘風景に会場も大いに盛り上がる。

「あの体長差ではグラシオンの方も狙うのが難しいのかも知れないですね」

 レイチェルが興味深そうにモニターに映るその光景を眺めている。

「そうじゃのう、あとクレストも対騎装兵機戦ならあの若さでもかなりの経験を積んでそうじゃが、アルザスはもっと多彩な相手と様々な戦闘を経験しておる…その差も大きいじゃろうな」

 ふむふむとエアー髭掻きをしながら店主が解説する。

「ふふっ…なんだか大会の解説の女の人と口調も似てるから面白いね♪」

 ユメカがくすくすと笑いながら、実況席と横のふたりを見比べている。

「むぅ、爺言葉と言えば儂じゃよ、新参には負けんわい」

『むぅ、何か今…我の勘が騒いだんじゃが?』

『おっとぉ!陛下の特技、第六感が来ましたか? どうやらまた何処かで波乱が起きるかもですね、乞うご期待です!』

「あらま…うふふっ」

 ユメカはこの先の展開なのか、単に店主の負け惜しみだったのか…この不思議な流れに胸がときめいたのだった。



「さあ…勝負を始めようぜ…口火を切るのは……オレだ!」

 ハリュウとメイは最初に決めていたポイント、アルテの町の北北東に位置する古戦場へと辿り着いていた。

 ここならば、ベルクから身を隠すのにも有効だし、他の参加者も少なく、被害を抑えることが可能だし、メイの話だとベルクは不浄なものを嫌う傾向があるそうで、呪いにも近い気を持つこの地は作戦にうってつけだった。

 ハリュウは先程の変身した姿のまま、砲身を遙か遠くのベルクへと向ける。

「山だろうと…撃ち崩す!」

 刹那、エネルギー弾が豪快な音を上げ、ベルクへと放たれる。

【…邪魔です】

 10km以上離れた不意の攻撃だったにも関わらず、ベルクは両手を顔の前に置き、防御姿勢のまま走り続ける。

 エネルギー弾は見事にベルクの腕に命中するが、ダメージは殆ど無さそうだった。

「これで終わりだと思うなよ?」

 続けて両肩のアーマーから大量のミサイルが発射される、それはベルクとその周囲に着弾して、その行動を乱す。

【…五月蠅い…ですね】

 その言葉と同時にベルクが発光する、ベルクを狙っていた次のエネルギー弾はそれによって防がれてしまった。

「はん!まだまだ…行くぜ!」

 その宣言通り、ハリュウの攻撃は途切れることなく続く。

『凄いぞハリュウ選手!先程の超長距離狙撃も見事でしたが、今度はゴット選手に対して集中砲火だぁ…ゴット選手の速度も流石に衰えが見えます』

『うむ、これは文字通り足止めじゃのう、本人への攻撃と同時に進行方向にもダメージを与える…正直、治世者としては道路が破壊されるのは嬉しくないが効果は見ての通りじゃ』

 ハリュウの攻撃によってアルテの町へと向かう道は大いに崩れている。

『おおっと!誘いに乗ったかぁ? ゴット選手が古戦場へと向きを変えたぞ!』

「よし! あとはここで迎え撃つだけだ…メイ坊、準備はいいなっ?」

「…う、うん」

 双眼鏡を持つ手が震える。

 やや歯切れが悪い返事…メイは正直…迷いがあった。

「どうした、返事が小さいぞ? いよいよ決戦なんだから…覚悟を決めろよ」

「うん…でもボクやマキさんの力じゃ…ベルクには全然通用しなかったもん…ボクたちがいたって絶対……」

 専用のスコープから、視線は遠くベルクを狙いながら…

「それ以上は言うな」

 ハリュウが静かにメイを制止した。

「でもでも」

「勝負に絶対なんて無い、オレもセイガも…ただ全力を出すだけだ、それが分かってるんなら、諦めないで自分を信じろ!」

「ハリュウ…」

「とまあ、セイガならそんな風に言うんじゃねえかな?アイツも今…全力でこっちに向かっている筈だからよ」

 双眼鏡を外し、メイが手を合わせる。

『メイ殿…某も覚悟を決めましたぞ』

「そうだね、マキさん…ボクも…絶対逃げちゃダメだよね」

 その瞳の先にはきっと…希望が映っていた。


 メイの視線と、ベルクとを結ぶ線のさらに先、セイガが青い軍用車を必死で運転している。

 これは予備のもので、実は全く同じ車種を購入していたのだ。

 スピードという面では高速剣での移動の方が速いのだが、今は少しでも体力を温存しておきたい、アクセル全開、すこしのミスも危険となる…

 セイガは耐えていた…

 速く、早く、そしてうまく行くよう…ここからが勝負だった。

 罠へと…導くために。

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