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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第31話

『まずは街道を進む先頭集団!一番参加者が多い激戦区だがトップは…クレスト選手、それとほぼ同じ速度で数十名が続いています、クレスト選手はグラシオンという人型兵器に乗ってますが陛下はどう思います?』

『うむ…筆おろしをしてあげたいのう』

『陛下~!』

 前半戦は実況がそのまま全参加者にも届いている。グラシオンが一瞬ぐらついたように見えたのは気のせいだろうか。

『冗談じゃ、騎装兵機と言ったかの、詳しくは知らんがああいう汎用的な乗り物はこの大レースではかなり有利じゃな』

『まともな解説ありがとうございます、北部の森を目指した方は動きがあまり見えませんね、一方真っすぐ西、砂漠を目指す集団のトップは…やはり神!ゴット選手、その後ろを数名、ああ、魔法斧士鬼無里選手の姿も見えますね』

 セイガ達もルートとしては砂漠なのだが、とんでもない速度で走るベルクや低空を矢のように高速で飛ぶキナさんには追いつけない状況だった。

 それでもスタート時の混乱をハリュウの運転でうまく躱していて、けして悪くはない位置にはつけている。

『速度的にはまだフォートレスモノリスのターゲットにはなってないようです…そんな中、スタート地点が飛行場だった面々が一気に来ました!』

 スタート地点は基本的に正門なのだが、一部滑走路が無いと飛べない飛行機などは空港からスタートしたのだ。

『大空にたくさんの飛行機が並んでおります!』

『いい景色じゃのう』

「まあ、あれは雑魚だけどな」

「そうなの?」

 ハリュウが運転しながらケチをつけていた。

 その間にもまた一台、参加者を抜いていく…

「滑走路からしか飛べないような飛行機じゃ速くても色々と自由が利かないから」

「フォートレスモノリスの餌食になる」

 セイガが断言する。

 確かに、上空を見ると飛行機群に向けて板状の脅威が迫っていた。

『さあ!今年はこれを抜ける猛者は現れるのでしょうか!』

 しかし健闘虚しくほぼ全ての飛行機が破壊され回収されていった。

「ほえー」

「本当に空で勝負したいのならオレのウイングみたいに何処からでも離着陸出来てここぞという時に一気に行けるやつじゃあないとな」

「さあ!そろそろ砂漠だぞ」

 ようやくセイガ達が辿り着いたウトト砂漠…そこは大乱戦になっていた。 

 

 セイガ達が辿り着く少し前、ウトト砂漠では…

「あら、面白そうな子たちじゃない」

 空飛ぶ絨毯に乗るはニムエとその従者ウゾウとムゾウ、その眼前には砂で形作られた体長1m程の蝙蝠状のモンスター、サンドバットが砂煙を纏いながら大量に蠢いている。

 これもまた障害のひとつなのだろう。

「さあ、あーしのモノになりなさい!」

 ニムエが両手を広げると同時にそれぞれの指から光の糸が沢山生まれ、サンドバットたちに降り注いだ。

 ニムエの『使』の力は強いモンスターの場合、ある程度弱らせないと使役が出来ないがサンドバット位なら問答無用で利用できるのだ。

 しかもサンドバットは砂を媒介に増殖が可能だった。

 大レース運営としては増えすぎると障害としては過酷なのである程度増えすぎないよう事前に制御していたのだが…

 ニムエはそれを無視して増殖をさせ続けた。

 結果、砂漠にはとんでもない量のサンドバットが発生したのだ。

「ほほほほほ~!コウモリたち、あーし以外の参加者を全て攻撃しなさい!」

 先頭のベルクに向け、雲霞の如く大きく広がったサンドバットが襲い掛かる。

 ベルクはスピードを緩めず、手を軽く前へ出す。

 それに合わせて眩い白い光が生まれ、眼前の蝙蝠たちは一瞬で消え去った。

「うひゃー、さすが強いね…うちも頑張らないと」

 少し後ろを飛ぶキナさんにも当然サンドバットが集ってくるので、キナさんは捕まらないよう体の周囲をエネルギーの膜で覆った…


『おおっと!ウトト砂漠は大・混・乱だー!砂漠に着いた多くの参加者がサンドバットの波に襲われています!』

『おやおや、ここまで増える予定は無かったんだがねぇ?』

『どうやら上空にいるニムエ選手が操っているようですね、他にも飛べる参加者は空に避難していますねぇ』

『いくら一匹が弱くてもこの数じゃ労力ばかりじゃろうしね…でもゴットはとっては問題無さそうさね』

『先頭のゴット選手、スピードを保ったままです!あの光の攻撃、軽く放っているようですがかなりの威力なのでしょう!』

「どうしよう…」

 セイガ達の軍用車は足止めをくう形になってしまう。

「はっ!」

 セイガが剣撃で次々に薙ぎ払うが、それ以上にサンドバットがぶつかってくるのでなかなかスピードが出せないでいた。 

『こうなったらニムエ殿を止める方が得策かも知れませぬ』

「あ!そうだねマキさん♪」

 メイが弓を上空へと定める。

「おいおい、大丈夫かよ…オレが代ろうか?」

「ボクに任せてよっ…今度こそニムエさんを止めてみせるんだから」

 メイがきりきりと矢を引き絞る、鏃には赤い光が集中する。

 裂帛の気合を込めて…


「いくよ…Explosion(エクスプロジィオーン)!!」


 矢が放たれた!

 それは一直線にニムエに向かうが、ニムエに当たる直前、亀の甲羅のような壁が現れた。

「まあ、あーしを狙うなんて野暮なことを…って…え?」

 余裕の表情のニムエだったが、異変に気付いて目を丸くする、亀の壁がみるみる赤く変色し始めて…ニムエ達と空飛ぶ絨毯を巻き込む形で爆発したのだ。

「なああああ!?」

 乗り物を失い、四散しながら落下するニムエ、そこへ運悪く鎧砂魚が待ち構えていた。

 砂漠の他のモンスター達もこの異変で怒り狂っていたのだ。

「あーーーーれーーーー!」

 ニムエの集中が解けたためにサンドバットの無限増殖が終わり、少しずつ砂漠は状況を取り戻した。

「えっへん♪ボクだって前とは違うんだからね」

 ようやく道が出来てセイガ達も猛追に入る。

『メイ選手の活躍で砂漠の混乱は収まりそうです!素晴らしい』

「うふふっ、めーちゃんスゴ~~い!カッコいい!!」

 ユメカとユウノが手を合わせながら興奮する、メイン会場の大画面にメイの姿がはっきり映ったのだ。

「メイ、ありがとう…助かったよ」

 セイガも素直に賞賛した。

「ふふふっ♪ニムエさんとは前に一度戦ったことがあったから思いつけたんだ」

「まあ、そこそこ上手だったな」

「むぅ、ハリュウはもうちょっと褒めてくれてもいいんじゃない?」

 遅れた分を取り戻すべくハリュウはアクセルを踏み続ける。

「オレだったらもっと上手くやれたからなぁ…及第点ってとこだ」

「ホントに?ハリュウは口ばっかりだから信用できないよ」

 ガタガタと揺られながら青い軍用車が走る。

 ハリュウは口笛を軽く吹いて、その場を逃げるように進んだ。

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