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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第21話

 それから20分後…

「セイガって自分のサイン持ってるんだな」

「ああ…書類にサインをする必要が結構あったんだ…」

 ようやく参加書類を提出した3人はアルランカ市街の商業区へと移動していた。

 工芸品などの土産物から、飲食店、近代的な武器屋や車の販売店まで古今東西、様々な店がずらりと立ち並んでいる。

「それって前の世界の話か?」

「そうだな…そういう意味ではサインを書いていて初めて思い出したよ」

 セイガの前の世界での記憶はまだ朧げな部分が多い。

 自分が何を仕事としていたのか、どのタイミングでワールドに再誕したのか、そういったことがまるまる抜けているのだ。

「そうなのかー、ボク達とはだいぶ違うんだね」

 メイが不思議そうにセイガを見る。

「メイ達は5人で再誕したんだよね…多分それが大きいんだろうな」

「うん、ボクも最初はわかんないことばかりだったけど…父さんや母さん、ユウノ姉と話しているうちに前の世界、エルディアのことは殆ど思い出したよ♪」

 自分の年齢、暮らしていた場所、その年代…普段の生活や家族や友達との思い出までメイは思い出したという…ただ、ワールドに来る前の最後の記憶だけは、ハッキリとしていないそうだ。

「確か…ベルクが何処かに行かなきゃいけなくて…そのお見送りをしたところまでは覚えてるんだけど…」

「ま、それだけ覚えているだけでも、いい方だけどな」

 そう言って、ハリュウが先頭を歩く。

「…ハリュウも再誕した人なの?」

「……まあ、そうだな。只あまり前の世界の事情は覚えていない」

 セイガは、そんなハリュウの表情を見て、少し違和感を感じた。

「それはさておき、まずは装備を整えないとだな」

「ああ、移動手段があった方がいい」

 ふたりはその点で意見が一致していたが

「ええ~?その前にごはんを食べようよ、ボクお腹空いたよぅ」

 メイは反対した。

「装備は待ってくれるけれど、お腹は待ってくれないもん。空腹だと判断力も鈍るってどこかの本に書いてたよ?」

「腹が減っては戦はできぬ…ともいうしね」

「そう、それ!だからねっ…行こう♪」

 セイガの腕を取りメイが気になった店へと歩き出す。

「おいおい…しょうがねぇなぁ」

 

 3人が入ったのは、路上にまでテーブルを出していて、沢山のお客が騒ぎながら食事をしている活気溢れるラーメン屋だった。

 どうにかテーブルのひとつを確保すると店員にそれぞれ注文をして料理を待つ。

「ボクもこっちに来てから知ったんだけどラーメンって美味しいよね♪」

 メイがワクワクしている、こうしてみると年相応の無邪気な少女だ。

「らーめん……ああ、学食で確か食べたことあるかも」

 丼に熱いスープと麺、焼き豚がのったものをセイガは思い返している。

「デズモスの地下基地(ホーム)でもコック長が拘りのラーメンを作ってくれるぜ」

「ええ?それは食べてみたいかも」

「そいつは無理だな、ホームは関係者以外立ち入り禁止だ」

 とはいえ、許可が出ればセイガやユメカみたいに入ることは可能なのだが、あえてハリュウはそれを黙っておいた。

「そうなのかー、残念」

「それにしても、この街はかなり色々な文化が融合しているようだな」

 手持無沙汰だったセイガは街並みを見ていたのだが…基本は白い石壁の質素な建物が多いのだが、このラーメン屋のような古いながらも文化の違うもの、そもそも時代が違うだろうハイテクな店や乗り物など…さらに街歩く人々も多種多様で混沌とした雰囲気を街全体から感じたのだ。

「ここは商業…交易や観光で栄えた都市だからなどんな文化のものでさえ、それが良ければ受け入れる…そういう体質なんだろうよ」

「ボクが見てきた町は、同じ文化の人達が集まって出来たものが多かったから、こういうごちゃまぜなのもなんだか楽しくていいなぁ」

 ハリュウとメイとセイガ、それぞれ生まれも育ちも大きく違うけれど、一緒にいて違和感の無いようなこの風味は…セイガも好きになれそうだった。

 そうこうしていると料理が運ばれてきた。

 3人とも一番人気のラーメン大盛にして、さらに春巻きと餃子もつけている。

「ん!……この上にのってるお肉美味しい~、絶対麺とスープにも合う~♪」

 セイガはメイが自分たちと同じ大盛で大丈夫かちょっと心配だったが、すごい勢いでメイはラーメンを食べている。

「セイガさんも、早く食べないともったいないよ?…ああ、この春巻きもパリパリで凄くおいしいよ~」

 そんなメイを見て安心したセイガも、黙々と麺を啜る。

 因みにハリュウはビールもジョッキで注文していてガツガツ食べながらビールで流し込むようにしている。

「ビールうまぁ♪ あ、おねえちゃん小籠包も追加ね」

 いたくご機嫌そうだ。

 …

「ふぅ~~~~、美味しいものをお腹いっぱい食べるのって本当に幸せだね♪ごちそうさまでした!」

 結局メイが一番早く食事を終える。

 セイガはゆっくりとよく噛んで食べる癖があるので食事はあまり早くないのだ。

 ハリュウの方はビールを追加で頼む始末なので言うまでもなく…

「こんな時にお酒飲んじゃって大丈夫なの?ハリュウ」

「ジョッキ二杯程度じゃ問題ないさ、そもそも装備が必要なのはオレじゃなくてお前達だからな…ふぅ♪」

 やや紅潮した表情のハリュウ…これはあまり当てにならないかも知れない。

 セイガはそう思いながら最後に残していた肉を頬張った。

 

 食後に3人は来たのはとある建物…ここは倉庫のように大きな空間だった。

 中には沢山の鉄製のコンテナが並び積み上げられている。

「よ~♪こいつらにいいのを見繕ってくれよ」

 奥から現れたツナギ姿の女性店員にハリュウが気安く話し掛ける。

「ハリュウってこの人と知り合いなの?」

「んにゃ…違うぜ」

 メイの呆れ顔も気にせずハリュウが続ける。

「小型の軍用車が欲しいんだがおススメはあるかい?」

「いらっしゃいませ、ここには軍用車だけでも沢山のタイプが御座いますよ…どんな風にご利用…大レース用ですか?」

 どうやら察してくれたのか店員がこちらの動きを見た。

「そうだな…運転が簡単で頑丈でそこそこスピードの出る奴がいいな」

「なるほど…カラーは?」

「色?それは特に気にしないが」

「青! ボクは青色がいいなっ」

 メイだった、軍用車についてはよく分かって無さそうだが、何か閃いたのか青色を大きく主張した。

「あおぉ?何か目立ちそうじゃね?」

「え~?…いいじゃん別に」

「俺も…青でいいと思う」

「ホラね♪」

「それでは、これなどいかがでしょう?」

 店員が目配せすると、周囲のコンテナが浮遊を始め、そのうち一つがセイガ達の目の前に運ばれてきた。

 どすんと地に着くと共に、コンテナが開封され

「わぁぁ♪」

 そこには青く綺麗に塗られた新品の軍用車、小型にしてはタイヤは大きく、取り外し可能な幌が付いている、なかなかの品だ。

「どうです?これなら森だろうと河だろうと山だろうと砂漠だろうと問題なく進んで行けますよ?」

 まさに大レース向きの車だ。

「それは凄いな…しかも恰好もいい」

「デズモスの装備には劣るけれど悪くは無いか」

「うん、ボクは絶対これがいい!」

 即決で3人は軍用車を購入した。

 そして…

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