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【第2節】その果てを知らず   作者: 中樹 冬弥
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第18話

 ウイングが空を駆ける。

 何度見ても、空を飛ぶというその光景は美しい。

「うわぁ~雲の上を飛んでるよ~」

『正に天上の景色ですな』

 メイとマキさん、それにセイガは窓からの風景に魅了されている。

 広大な空の風景も素晴らしいが、遠く小さくなった地上の様子を見るだけでも飽きない。

 さらにウイングと同じような飛行機や、この高度にまで達する翼持つ生き物もたまに見えたりして、興奮を後押しする。

「ねえねえ…セイガさんはあんな大きな龍とか見たことあった?」

 丁度、少し横を並ぶように長い蛇のような体躯の青い龍が飛んでいる。

 最初は襲ってくるのではと不安になったが、どうやらそうではないらしい。

「いや、こんなのは初めてだ…凄いなぁ」

『正に昇り龍の如し姿ですな』

 ハリュウは今回はキャビンには降りず操縦に専念している。

 昼間はセイガ達の思った以上に多くのものが空の旅をしている様だった。

 もしかしたらこの龍も大レースに参加するのでは?

 そんな風にも思えた。

 それから30分ほどしただろうか、天井のスピーカーからハリュウの声がした。

『そろそろ着陸許可が出るからアルランカの空港に入るぜ』

 セイガとメイは前方を確認する、すると遠くに広がる黄色い砂漠の縁に大きな城塞で囲まれた都市が見えた。

 セイガがさらに見ると、民家であろう沢山の建物は白い石か土で造られ、中心の宮殿らしき大きな建築物から放射状に広がっている。

 伝統的な建物が多そうだが、南部には空港と思われる長い道状の構造物があった。

 ウイング以外にも空港を使うのだろう、離着陸するものが行き交う。

「ボクはこんな街、見たコトないや…どんな人達がいるんだろう」

『異文化との交流…胸躍りますな』

 旅慣れていそうなふたりでもまだ知らない、それがアルランカだった。


 アルランカ、交易と観光により発展した都市国家である。

 約400年前に建国王、アルランカ一世により作られたこの都市には様々な人間が集まり、なおも開発が進められている。

 そんな中、観光の一番の目玉が、年に一度行われる。

 莫大な富と名声を得られるイベント、「大レース」なのであった。



 セイガ達はまず、大レースの受付をするべく、宮殿近くの施設へと向かった。

 ここでは一日に二回、午前と午後に集団受付がある。

 その午前の部に間に合うよう、3人は早めに出発したのだ。

 施設の前に来ると、参加者なのか…かなりの人々がいて混雑していた。

「…ベルクは…いないか…」

 その気配なら近くに居ればすぐに分かる…メイは残念そうに呟いた。

「受付だけでも何日もあるからな、ここで会うのは期待しない方がいいぜ」

「結構な参加人数…になりそうだな」

 毎年1000人以上の参加者と、数十万人の観戦者が集う…本当に大きな大会なのだ。

「まあ、大多数は記念参加とかお零れ狙いだろうから…本当に怖いのは数十人…そう考えれば楽だろう?」

 確かに、目の前の人々…その多くは『真価』はあるだろうけれど…彼等にそこまでの脅威は感じられなかった。

 とはいえ、どこに何があるか…

 例えば今横切ったお団子頭のチャイナ服の少女が実はスゴイ実力者なのかもしれない…ヤミ達のような例もあるから油断はしないでおこうとセイガは思った。

「…あれ?セイガさんじゃないかい?」

 見知った声がする、セイガが振り返るとそこには2mを超える大きな姿、褐色の肌に白い角を生やした女性…

 鬼無里 瑠璃ことキナさんが立っていた。

「キナさん?どうしてここに?」

「そりゃあ勿論大レースに参加するためだよ♪セイガさんとそこのおふたりも参加する気かな?」

 そのままメイとハリュウに挨拶をする。

「ま、これでもうちは結構名の知れた存在だからね、こういう有名な大会には大体参加してるのさ」

 言われてみると確かにそうだ。ユメカも恐らく忘れていたのだろうが、キナさんは学園内でもかなり有名人だった。

「それに知ってる相手と言ったらうちだけじゃ無いようだよ?」

 その気配…

 セイガとメイが揃ってその方向を捉えた。

「アルザスさん!」

 そこには剣聖、アルザスの姿…キナさんと同じく頭一つ大きいので良く目立つ。

 背中に大剣を背負い、殺気にも近い気迫を放つその出で立ちは周囲の人間からも脅威に映ったであろう。

「…お前は?……メイ、か」

 アルザスにとっては意外だった。

 まさかここで、昔とある村で少しだけ話をした少女、メイに会えるとは思ってなかったから。

「やっぱりアルザスさんだ♪おひさしぶり~」

『アルザス殿、ご無沙汰しております』

 マキさんも出てきて挨拶をする。

 セイガからすると、まさか彼等が顔見知りとは思いもよらなかった。

「人間関係はわけわからんが、コイツが只者じゃないのだけは知ってるぜ」

 ハリュウが身構えるように、立ち位置を変える。

『おしらせします!午前中の参加受付が開始されました、参加者の皆様は施設内の講堂までご移動ください!』

 突然、大きな拡張音声が場に響く。

 それにあわせて、どやどやと周囲の人たちが動き始めた。

「それじゃあ…俺達も行こう」

 セイガの声で一旦休戦…そんな雰囲気のまま一行は施設へと入った。

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