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短編 お勧め順

僕の婚約者は地味で不器用、それが格好の餌食

作者: 紀伊章
掲載日:2023/05/16


 僕には子供の頃からの婚約者がいる。

 政略的な婚約だった。

 遠方が理由で会ってもいなくても、特に何とも思っていなかった。

 

 学園で初めて出会った時、ゾクッとした。


 伏し目がちな自信の無さそうな態度。

 制服なのに何故か野暮ったい格好。


 隠れているが、磨けば光る整った顔立ち。


 泣かせてやりたい。


 もっと自信を失った卑屈な表情が見たい。


 そうして僕の人形になれば良い。


 でも僕自身が傷つけるのは美学に反する。


 学園の女子生徒を使う。


「せっかくだから、皆でやってみよう。

 どうしても嫌な人は断ってくれて構わないよ」

 彼女が苦手な事を提案する。

「君もやらないか?」


「申し訳ありませんが、お断りします」

 断られる事もある。


 でも、

「何、あの態度。

 あんな地味女に態々こっちから誘ってあげてるのに」


 思い通りに動いてくれる女子生徒。


 今だけじゃなく折に触れて、態々聞こえるように彼女に言ってきてくれる。


「皆でやってみよう。

 嫌な人は断ってくれて構わないよ」

 

「君もやらないか?」

 

 また同じ状況を作る。

 

「私は不器用ですから、皆様にご迷惑をおかけしてしまうでしょう」


 今度は婉曲に断ってきた。


 出来上がりを見ると、彼女が手掛けた所だけ、明らかに出来が悪い。


「……誰しも不得意な事はありますわよ、大丈夫ですわ」

「大丈夫。そんなに目立たないって」


 唇を引き結び、俯く彼女。

 そう、それが見たかった。


 教室を出ていく彼女。


「何、勝手に被害者、気取ってるの?

 嫌なら、嫌って言えばいいだけでしょう」 


 きっと彼女にも聞こえているだろう。


 思い通りに動いてくれる女子生徒。

 そう、そうやって彼女を追い詰めて。


 嫌だと断れば、生意気、協調性に問題があると言われ。

 無理して受け入れれば、被害者気取り呼ばわり。


 彼女を八方塞がりな状況に追い込んでる事に、この子達は気が付かないのかな。

 

 僕には好都合。


 なのに。


「婚約解消?」


「大丈夫よ。

 爵位は貴方のものだわ」


 そういう事じゃないんだ。



~~~


 あれから、彼女を捕まえる事は出来なかった。


 ごくわずかな優秀者が配属される国立研究機関に、実力を認められて配属される事になった彼女。


 遠くから眺める事しか出来なくなった。

 何より耐え難かったのは、彼女が生き生きとしている事だった。

 君は卑屈な目をしている時が美しいのに。


 貴族という身分のために、彼女ではない人と結婚しなくてはならなかった。

 学園で僕の思い通りになっていた女子生徒。

 考えが浅はかで、自分が自己中心的な事も気付かない、つまらない女。

 ただ、爵位が釣り合っていた。

 娘が生まれたが、何故か離縁を切り出された。

 しかも、もう娘とは関わってくれるなと言う。

 別の女性と結婚するもすぐに出ていかれた。


 母も亡くなり、ずっと一人きりだ。


 学園では、あんなに何もかも思い通りだったのに、卒業してからは、何も上手くいかない。

 

 領地経営も、僕が手を出すと上手くいかないから、全て執事任せにしている。

 時折呆れたような目でこちらを見る執事。


 引退を勧められた。


 元婚約者で従妹の彼女の子供が継げば問題ないと言う。


 彼女は、研究者として名を揚げながら、やはり研究者として知られた男と結婚し、子供にも恵まれていた。


 何故だ。


 君は僕より劣った者ではなかったのか。

 僕より劣っているからこその美しさではなかったのか。


 久しぶりに会った彼女は、歳こそ重ねているものの、美しく自信に満ち溢れていた。


 居た堪れなくて、引継ぎもそこそこに、長年親しんだはずの邸を後にする。


 何処をどう歩いたのか、気づけば場末の酒場で飲んだくれていた。

 店を後にし、フラフラ歩く。

 突然、後頭部に衝撃を受けた。


「馬鹿!やり過ぎだ!」

「やべえ!」

「逃げるぞ!」


 こんな所で、僕は終わるのか。

 学園で思い通りだった僕は優秀ではなかったのか。

 僕の人生は一体何だったんだ……

 

 


読んで下さってありがとうございます。

無関係な気分悪くなった方、ごめんなさい。


前作「私の婚約者は明るくて人気者、でも彼の提案が私を傷つけるhttps://ncode.syosetu.com/n5465if/」に

>「なに、勝手に被害者ヅラしているの?

>自分は嫌なら、嫌って言えばいいだけじゃん」

>集団のリーダーは、あくまで、『自分がやりたい事をやるため』に、リーダーやってんだよ

>少数派の察してちゃんを思いやるために、めんどくさいリーダーを引き受けているんじゃないよ

という感想がありまして(もう消しました)

この話を書くことにしてしまいました。

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