龍王の娘、対面する(1)
初めての散歩を堪能した翌日、フィラルシェーラこと俺はというと…
ベッドの中で一人で立っちできるもん!の練習中であった。
いやしかし…前はごく普通に立てて逆になんで立てないんだろうって思っていたが…
全国の赤ちゃんたちよ、謝ろう。
この場を借りて、深く頭を下げて謝ろう。
すっげえ難しいね!これ!
掴まり立ちとは言え、バランス取れないし、足プルップルしてるからね?
ただ立っているだけなのにすっごく疲れる!頭が重てぇ!
「あうぅ…」ペタン
ああ、1分も立っていられないわ…これ以上は無理。
でも、これも運動だよな。
成長したらなんて事ない事でも赤ちゃんにとっては重要な事だって何かの本で読んだし。
「フィーシャ様、大変よく頑張りました。初めてお一人でお立ちになれましたね。」
側で見守っていたセレンがパチパチと拍手を送ってくれる。
もっと練習すればもう少し長く立ってられるかなぁ…よし、頑張ろう!
「いつか、ご自分の足でお歩きになる日が楽しみですわ。」
その時はセレンとリオラと俺の3人でお散歩しようぜ?
そうだ、ドラグノスも誘ってやらないとな。
って、きっとまだ俺の言葉は理解してもらえないけど。
コツコツ…コツコツ…
「うぅ?」
なんだ?何か窓を叩いてる音が聞こえるけど…鳥か…?
そう言えば、こっちの世界の鳥ってどんななんだろう。
窓の方を見てみるとガラスの窓をコツコツ叩いている何かと目が合った。
へぇ、この世界の鳥には手があるのかぁ。
お、よく見れば翼もあるなぁ。しっかし鳥とは思えないイカつい翼してんなぁ。
…って、明らかに鳥じゃねぇ!!人じゃん!飛んでるし!
「えぇんっ、えぇんっ。」
セレンっ、セレンっ、何かすげぇのが窓の外にいるっ!!
「まぁ、フィーシャ様?今、私の名前を呼んでくださったのですか?あぁ、なんて光栄な事でしょう。はっ、陛下よりも先に名を呼んでいただいて罰が下らないかしら…」
おーい、セレンさんやーい。
名前の事とか今はどうでもいいから。
外!窓の外を見てくれよ!何かいるんだよ!あれ!
「あぁ!!うぅ!!」
ぐいぐいと服のすそを引っ張って何とか窓の外に目を向けさせる。
「どうされたのです?フィーシャ様…あら。」
セレンがようやく窓を向いたかと思うと何も躊躇わず…ガチャ。
え?開けた!?おいおいおい、大丈夫なのか?
そいつは窓が開くとふわりと中に降り立った。
「また道に迷ったのですか?今月に入ってからもう10回目ですよ?」
「へへ、ごめんごめん。覚えようと思ってるんだけどね…ところで、セレンさんが抱っこしてるその子は誰?見かけない子だけど。セレンさんの子?」
「こら、失礼ですよ?こちらはドラグノス陛下のご息女、フェラルシェーラ様にあらせられます。ご挨拶をなさい、アードナルド。」
アードナルドと呼ばれた少年は驚いた様にすぐ頭を下げた。
「龍王陛下のご息女…って事は、王女様!?大変失礼致しました!!」
何だ、よく見れば結構可愛いじゃん。
俺は、そんなアードナルドに触れてみたくなって手を伸ばした。
しかし、セレンに止められてしまった。
「いけません。フィーシャ様はまだ鱗が未発達なのですから今の柔肌のままで龍化した者に触れては怪我をされてしまいます。陛下が初めてお触れになった時、鱗で痛がっておられたでしょう?」
「あ、そっか。まだ王女様は赤ちゃんだもんな。俺、龍化したままだったのすっかり忘れてた。」
そういってアードナルドは光に包まれたかと思えば、背中の翼が無くなり手も人間の手の様に鱗が無くなった。
見た目中学生1年生くらいのスポーツ小僧って感じだな…バスケ、いやサッカー部のエースって感じだ。元インキャの俺からしたら正反対の性格してそう。
「改めまして、俺はアードナルド。白龍騎士団に所属している騎士見習い。どうぞお見知り置きを、王女様!」
ま…眩しい!!リオラとは別の意味で眩しい!!
前世で出会っていたならきっとお前は運動神経抜群のモテ男だったことだろう!!
「それよりアードナルド。貴方、今は訓練の時間ではないのですか?」
「そうだ!大変なんだ、訓練場で…」
「何かあったのですか?」
アードナルドは、ここに来るまでに起こった事をゆっくりを話し始めた。