龍王の娘としての1日(4)
散歩を切り上げて部屋に戻ってから、俺は中庭出会った女性ヴィヴィラの事を考えていた。
それというのも、ヴィヴィラが呟いた言葉が引っかかるのだ。
ヴィヴィラのあの反応…気になる…
『そう…この子が…彼女の…』
まるでお母さんこと、何か知ってるみたいだったな…
まさか…これは少女漫画などにある“修羅場”というイベント的なあれが発生する可能性があるのではないかっ!?
仮に…仮にだ、俺の親父であるドラグノスとまだ顔を知らない母親の関係を良く思わない第三者があの手この手を使って龍王の妻、つまり王妃の座を狙っている…ということなのではないか!?
その第三者がヴィヴィラだという事なのではないか!!?
それはつまりドラグノスと王妃の間に生まれた俺の事も邪魔になって排除されるかもしれないなんて事態になってしまうのではないか!!!?
ピヨピヨピヨ…
って…そんなわけないか。
仮にそんなことがあったとしても、ドラグノスはお母さんのことを結構大事にしてるみたいだし…
それに、ドラグノスみたいな小心者が女癖が悪いなんて…ないない。
悪い噂はあくまで噂ってだけだろ?まだ確証も無いのに疑うのは良くないね。
前世の俺は濡れ衣着せられ放題、まさに濡れ衣のバーゲンセールでしたよ…
だから!俺は絶対に「疑わしきは罰せよ」方針は断固反対だ!
何事もまずは証拠集めからってね。
まぁ、何にせよこの世界にはまだまだ俺が知らないことが溢れているだけだ。
よっしゃ!!どんどんこの世界のことを学んでやろうじゃねえか!!
そのためには…まず成長しないとなっ。
フィラルシェーラは赤子らしい小さな手をグッと握った。
そういえば、ドラグノスは今頃何してんだろう。
2度目の面会をして以来、会ってないな。
セレンの話では、俺が寝てる時に時々顔を見に来てるって言ってたけど…
王様だもんな、いろいろやらなきゃいけない事があるんだろう。
いくら娘が生まれたからといって仕事を放り出して良い理由にはならない。
でも、顔を見に来てくれてるのは少し嬉しい。気にかけてくれてるって感じるから。
そんなフィラルシェーラを見つめながらセレンはリオラに問いかけた。
「そういえば、今日は城の方が慌ただしい様でした。何かあったのでしょうか。」
「私も詳しくは存じ上げないのですが…何でも隣国の“狼王国”から使者が来られているとか。あまり良い雰囲気ではなかったようです。」
「そうですか…何事もなければよいのですが…」
セレンは窓の外を憂う様な瞳で見つめた。
空は相変わらずの晴天。何も変わらない1日が過ぎていく。